統計数理研究所の物理乱数発生装置が情報処理学会「情報処理技術遺産」に認定〜同時に計算機展示室が「分散コンピュータ博物館」に認定〜

ISM2016-03
2016年3月吉日

大学共同利用機関法人 情報・システム研究機構 統計数理研究所(所在地:東京都立川市、所長:樋口知之、統数研)は、これまで統数研が開発してきた歴代の物理乱数発生装置を一般社団法人 情報処理学会「情報処理技術遺産」(*1)に申請し、「物理乱数発生装置群」として認定されました。同時に物理乱数発生装置群を展示する「統計数理研究所 計算機展示室」が、情報処理学会「分散コンピュータ博物館」(*2)として認定され、今後、一般にも公開されます。

社会調査のサンプリングや統計モデルのシミュレーションにはランダム(規則性のない)な乱数列が欠かせません。現代の計算機では理論上、不確定な状態を持つことが不可能なため、計算式で確定的に生成された擬似乱数列を扱うことが一般的ですが、統数研では長年、自然現象を利用した疑似的でない真のランダムな数列を取り出す装置を開発してきました(*3)。1950年代には放射性物質から発せられる放射線を利用した「物理乱数発生器」を導入しました。第二世代以降は半導体(ツェナーダイオード)が発するノイズ(熱雑音)を利用した方式の装置を複数の企業や研究者と共同で開発し、より小型で高速に乱数を生成できるようになりました(*4)。現在でも、統数研が保有するスーパーコンピューターシステムには世界最高速度の生成スピードを持つ最新の物理乱数発生装置がシステムに組み込まれています。今回、1950年ごろから2010年までに導入してきた9台の装置が「物理乱数発生装置群」として、「情報処理遺産」に認定されました。

初の国産商用計算機(*5)の1号機が1956年9月に当時の文部省統計数理研究所へ納入されて以来、統数研は国内の計算機産業の黎明期から統計学の研究のために計算機を活用し、可能な限りこれらの機器の保存に努めてきました。今では170点を超える機器がスーパーコンピューターが稼働する計算機室に隣接する区域に展示され、統計科学からみた計算機の過去、現在を見渡すことができます。
今回、物理乱数発生器装置群と同時に、1950年代から半世紀以上にわたる国内の数理科学系の研究所における情報機器の活用を伝える貴重な品々を収蔵しているとして、この「統計数理研究所 計算機展示室」が「分散コンピュータ博物館」として認定されました。

物理乱数発生装置群

物理乱数発生装置群

計算機展示室

計算機展示室

情報処理学会の第78回大会での認定式の模様 田村副所長(左)

情報処理学会第78回大会での認定式の模様 田村副所長(左)

情報処理学会のプレスリリース

(*1) 情報処理学会 コンピュータ博物館 情報処理技術遺産
(*2) 情報処理学会 コンピュータ博物館 分散コンピュータ博物館
(*3) 統数研ニュースNo108 研究室訪問 田村義保 「パーフェクトな乱数創造を目指す物理乱数発生装置の研究」
(*4) (株)日立製作所、(株)東芝、東京エレクトロンデバイス(株)との共同開発
(*5) 情報処理学会コンピュータ博物館 リレー式計算機 FACOM 128A,128B

登録商標
本研究所が所有する、計算機を構成する各製品、会社名は各社の商標または登録商標です。

<本件に関するお問い合わせ先>
大学共同利用機関法人 情報・システム研究機構 統計数理研究所
運営企画本部 広報室 担当:今門、URAステーション 担当:本多、北村
TEL:050-5533-8580 E-mail:ask-ura@ism.ac.jp
〒190-8562 東京都立川市緑町10-3