天文学と統計学の融合による、統計計算宇宙物理学の創出 -「手のひらから広がる100億光年先の触れる宇宙」を目指す、CRESTプロジェクト始動 -

ISM2014-05

2014年10月吉日

国立大学法人 東京大学 国際高等研究所カブリ数物連携宇宙研究機構
大学共同利用機関法人 情報・システム研究機構 統計数理研究所 
国立大学法人 筑波大学 計算科学研究センター
日本電信電話株式会社

 国立大学法人 東京大学国際高等研究所カブリ数物連携宇宙研究機構(Kavli IPMU、所在地:千葉県柏市、機構長:村山斉)、大学共同利用機関法人 情報・システム研究機構 統計数理研究所(ISM、所在地:東京都立川市、所長:樋口知之)、国立大学法人 筑波大学(筑波大、所在地:茨城県つくば市、学長:永田恭介) と日本電信電話株式会社 コミュニケーション科学基礎研究所(NTT CS研、所在地:京都府相楽郡、所長:前田英作)は、今後5年間をかけて地上大型望遠鏡「すばる」で取得される25兆ピクセルにおよぶ膨大な画像データを、最新の機械学習と統計数理、さらに、大規模コンピューターシミュレーションを駆使して解析し、目には見えない宇宙のダークマター分布を3次元で明らかにします。この解析の過程において、大規模化する宇宙探査によるビッグデータと情報統計学を融合させた新領域「統計計算宇宙物理学」という学問の創出を行う一方、さらに、万人がオンデマンドで宇宙を探索できる次世代アプリケーション技術を開発することに挑みます。
 
 Kavli IPMUでは、ハワイ、マウナケア山頂のすばる望遠鏡に新しく搭載した超広視野カメラHyper Suprime-Camから得られる300夜分、25兆ピクセルのビッグデータを用いて、宇宙の運命を決めるといわれるアインシュタイン方程式の解を導き、宇宙の未来を予測する研究を進めています。超高画質の観測データからは様々な情報が得られますが、画像に隠れたダークコンテンツ(注1)を効率的に抽出することが必須とされています。今まで、目視に頼ることが多かった本分野に、NTT CS研の画像処理技術を用い、さらに、ISMとNTT CS研の機械学習(注2)とベイズ統計(注3)の手法を利用することで、新天体発見や宇宙の未知の現象の探索に迫ります。また、分散ストレージとデータベース技術を保有する筑波大学との協働により、可視化した天体カタログデータベース(注4)を、広く一般に公開します。世界各国の天文ファンが100億光年先の宇宙をスマートフォンなどを用い、手のひらから、また、家庭のテレビでも楽しむことができる環境の構築を目指します。
 
 「統計計算宇宙物理学の創出」は、WPIプログラム(注5)の拠点の一つであるKavli IPMUの将来計画において提案する、新しい分野融合のテーマとして最も重要な位置を占める研究課題であり、さらに、基礎研究成果を利用して応用分野にも一歩を踏みだす、Kavli IPMUとして初めての試みです。これには、ISM、筑波大学、NTT CS研で培われた研究成果や知見をベースに、協力して実施することが不可欠です。本件は、独立行政法人 科学技術振興機構(JST)の戦略的創造研究推進事業(CREST)、田中譲研究総括(北海道大学 大学院情報科学研究科特任教授)の研究領域:「科学的発見・社会的課題解決に向けた各分野のビッグデータ利活用推進のための次世代アプリケーション技術の創出・高度化」の平成26年度新規採択課題「広域撮像探査観測のビッグデータ分析による統計計算宇宙物理学」として、平成26年10月1日より研究を開始します。

用語の説明
(注1)ダークコンテンツ:ダークマター(暗黒物質)、ダークエネルギー(暗黒エネルギー)といった未知なる宇宙の構成要素。
(注2)機械学習:最新の計算機資源を有効に用い、大量で多様なデータを処理するための方法を研究する学問分野の総称。
(注3)ベイズ統計:統計学の伝統的なひとつの考え方。理解のしやすさと計算機の発達に伴い、近年再び注目が集まっている。
(注4)天体カタログ:ある一定の種類や形態、起源、検出法、発見法に従ってまとめられた天体のリストまたは表。
(注5)WPIプログラム:平成19年度から文部科学省の事業として開始されたもので、システム改革の導入等の自主的な取組を促す支援により、第一線の研究者が是非そこで研究したいと世界から多数集まってくるような、優れた研究環境ときわめて高い研究水準を誇る「目に見える研究拠点」の形成を目指しています。(日本学術振興会 WPIプログラムのページ:http://www.jsps.go.jp/wpi/) 

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