所長挨拶

 

2014年7月9日

統計数理研究所長 樋口知之

統計数理研究所は戦争終結間近の1944年に設立されました。今年はちょうど設立70周年になります。「確率に関する数理およびその応用の研究を掌り、並びに研究の連絡、統一および促進を図る」を設置目的として出発した研究所は、現実との接点を非常に意識した設立時からの研究における志向性をDNAとして脈々と受け継ぎ、統計数理の深化と展開に貢献して参りました。大学共同利用機関法人の第二期中期計画・中期目標期間も残すところあと2年となり、国立大学等をとりまく厳しい諸環境の中、本年は第三期に向けた準備を加速する年でもあります。

本年度は私の所長任期(第一期4年間)の最終年度になります。東日本大震災直後の混乱の中で、歴代最年少で所長を拝命し、研究所の2大事業であるNOE形成事業と統計思考力育成事業の本格的始動と安定的運営に微力ながら尽くして参りました。

今年度の運営方針の骨子として、①共同利用・共同研究機能の高度化 ②組織力の強化 ③および第三期中期計画の原案策定の三つを掲げました。

この年度の半年内に本研究所は、補正予算によるものも含めて、異なる機能を備えた三つのスーパーコンピュータシステムを導入しました。その一つは、日本の計算機インフラの基盤である革新的ハイパフォーマンス・コンピューティング・インフラ(通称HPCI)に大学共同利用機関として初めて参加します。また、ユーザの多様なスキルや利用目的に応じてこの三つを体系的に運用し、共同利用・共同研究を促進する効率的運用につとめます。さらに、海外の著名な研究者らを招聘する上で大きな効果のあったゲストハウスの拡充(部屋の増室)着工を予定しています。

組織力の強化策としては、文部科学省の研究大学強化促進事業の予算により、昨年11月に配置したリサーチ・アドミニストレーター(通称URA)組織 ― 統数研における研究強化支援チーム ― の安定的運営に注力します。これまで整備が不十分であった広報体制の抜本的見直しを行い、URAの人的資源とチーム力を生かした、より効果的で質の高い広報活動の実現をめざします。ビッグデータや統計学に一般からも大きな注目が寄せられる今、広報が果たす役割は非常に大きいと認識しております。難解だと敬遠されがちな「統計数理」ですが、私どもの研究が果たす大きな役割を、よりわかりやすく、皆様の身近に発信していくようつとめて参りますので、どうぞご期待ください。

この4月には研究所近接のこれまで空き地であった場所に大きな商業施設ができ、また1年半ほど先にはさらに大きな商業施設の開設が近隣に予定されているなど、研究所周辺は多摩地区では最も成長を続けているエリアです。多くのレストランもできることで外食のバラエティの問題が根本的に改善し、ゲストハウスに宿泊の方々が生活をスタートする上での不便も大きく解消されるはずです。統数研もそのアドバンテージを活かすことで大学共同利用機関の特性を強化し、地域ともに発展していきたいと考えています。

グローバルな競争が厳しい中、データ中心科学を中核的に担う研究所として、社会からの期待に職員力を合わせて応えていく所存でございますので、統計数理研究所の活動に対する皆様のご理解とご支援をよろしくお願い申し上げます。