所長挨拶

樋口知之

 統計数理研究所は戦中の昭和19年に設立され、今年で67年目を迎える歴史のある研究所です。その長期間の中でも最大となる大地震の発生により、研究環境が大きな変化を受けつつあるさなかに、平成23年4月1日付けで、北川前所長の後任として所長(第11代)に就任致しました。国の先行き不透明感が社会や学術に及ぼす影響も未知の状況で舵取りを託され、大学共同利用機関として果たすべき役割の大きさを考えますと、その重責に身の引き締まる思いです。

 本年は法人第二期の二年目にあたり、統計数理研究所は、中期目標・中期計画の下に、NOE(Network of Excellence)事業や統計思考力育成事業の着実な推進とともに、我が国唯一の統計数理の研究教育機関として先端的研究に取り組んでいます。NOE事業に関しましては、機械学習とサービス科学の研究推進の核となる新しい戦略的研究センターを立ち上げる予定です。また統計思考力育成事業につきましても、数理に関わる関連機関との連携を強化し、大規模データ時代に対応した人材育成によりいっそう貢献していくつもりです。

 統計数理は、データをもとに数理を道具として、合理的予測の実現を目的に、散在・偏在している様々な知識を適切に「つなぐ」方法を研究する学問です。従って、研究者の持つ自由で柔軟なアイデアを現実世界につなぐ役割は、統計数理が演じていると言っても過言ではありません。この統計数理の「つなぐ」特性を活かし、統計数理研究所は、異分野の研究者、広範囲の研究領域、あるいは大学と大学、産業と学術をつなぎ、そして学術と一般社会をつないでいます。

 自然環境の想定以上の変動ばかりか、金融経済危機や国際的なパワーバランスの激変など、人間社会の不確実性が著しく増大するグローバル化時代に、今、私たちは立たされています。社会からの期待をしっかりと受け止め、「つなぐ」機能を全開にすることで新しい研究領域を生み出すこととあわせて、人と人をつないで日本を元気にしていきたいと考えています。統計数理研究所の活動に対する皆様のご理解とご支援をよろしくお願い申し上げます。

2011年4月1日
統計数理研究所長
樋口知之

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