第2回思考院セミナー(ハイブリッド開催)
- 【日時】
- 2025年7月17日(木)15:00〜
参加無料 - 【場所】
- 統計数理研究所 セミナー室 D313・D314
(zoomはこちらから) - 【講演者】
- 寺田 吉壱 (大阪大学)
- 【演題】
- 行列分解因子分析の正体
- 【概要】
因子分析における推定量の多くは, 標本共分散行列とモデル化した共分散行列の間の乖離度(不一致度)を最小化することによりパラメータを推定する, Minimum Discrepancy Function (MDF) 推定量として定式化される. 2000年代初頭に, 従来の因子分析とは根本的に異なるアプローチとして, データ行列の分解に基づく行列分解因子分析 (MDFA) が提案された. MDFAは, シンプルな反復アルゴリズムにより安定的に最適化でき, 複雑な正則化も容易に適用可能である. 一方で, MDFAは, 因子負荷行列と独自分散に加えて, 共通因子と独自因子のスコアをパラメータとして同時に推定するため, パラメータ数がサンプルサイズに依存する. このため, MDFAの統計的性質はこれまで十分に理解されておらず, 「因子分析として妥当な方法といえるのか」という根本的な疑問が残されていた.
発表者のこれまでの研究では, MDFAをセミパラメトリック最尤推定量として捉え, そのプロファイル尤度に基づき統計的性質を明らかにした. これにより, MDFAが因子分析として妥当な推定量を与えることを示したが, 導出したプロファイル尤度の表現は複雑であり, MDFAがどのような方法であるか明確ではなかった. 本発表では, MDFAの正体が, ある行列間の距離に基づく美しいMDF推定量であることを示す. これにより, MDFAの統計的性質はMDF推定量の理論に基づき, 容易に導出することが可能となる. また, これまで幾つかのMDFAの共分散構造分析 (SEM) への拡張が提案されてきたが, この事実からMDFAのSEMへ拡張は自明に導出される.