リスク解析戦略研究センター・セミナー / Risk Analysis Research Center Seminar

日時
2017年3月3日(金) 16:00-17:00

登録不要・参加無料

場所
統計数理研究所 3階 セミナー室5
演題
マルチレベルモデルのコンテクスト分析としての使用における諸問題
演者
宮崎 康夫 (バージニア工科大学)
Abstract
環境は個体の成長や発達に大なり小なり影響を及ぼす。教育評価・教育政策の分野において、生徒個人の環境要因は、個人(家庭)・学級・学校というレベルに分かれているが、似たような構造は様々なデータに見られる。
マルチレベルモデルを用いたコンテクスト分析モデルによる教育データの分析は、生徒の生来の素質や能力、過去の学業履歴等を考慮した上で、例えば、 生徒間の学業成績の違いを個人レベルと学級・学校レベルの集団レベルのばらつきに分離、 そして個人レベルの違いである生徒の家庭環境と集団レベルにある学級・学校環境要因等がどちらがどの程度の影響を生徒個人の学業成績に影響を及ぼしたかを検討するのに有効な統計分析手法であることが知られている。 しかしこの分析手法は、モデル自体や推定法が複雑であるため、その実行にはかなりの注意が必要である。本セミナーでは、まずマルチレベルコンテキスト効果モデルを紹介したあと、 モデル構成や結果解釈の際に誤りやすいいくつかの点を指摘し、その対処法と今後の課題について展望する。
環境は個々の生徒の知的・情緒的発達に多大なる影響を及ぼすと考えられ、また学校教育には多額の国民の税金からなる公的資金が投入されるため、その効果に対しては多くの国民の関心が持ち、マスコミの注目する所である。 また近年しばしばマスコミの話題となるいじめの問題等は、問題点が指摘され改善策が提出されるが、わが国では特に、ともすればそれらは経験や逸話、あるいは政治的な主張に基づき、 妥当で信頼できるデータの科学的に分析された結果に基づいたものではないのものになりがちであることも指摘されている。