第6回「赤池メモリアルレクチャー賞」受賞者及び記念講演が決定
ISM2026-05
2026年7月2日
【概要】
「赤池メモリアルレクチャー賞」は,2026年5月に創設されました。「赤池情報量規準(Akaike Information Criterion: AIC)」を提唱,予測の視点に基づいて従来の統計理論とは異なる新しい統計モデリングのパラダイムを確立し,広範な研究分野に大きな影響を及ぼした故赤池弘次博士の功績を記念したものです。現在は,統計数理研究所と統計関連学会連合の共同事業として,2年に1度,受賞者を選出し,統計関連学会連合大会における受賞記念講演を実施しています。
同賞の第6回受賞者は,ベイズ統計学およびベイズ計算の分野で世界的に著名なフランスの統計学者であるクリスチャン・P・ロベール(Christian P. Robert)教授(パリ・ドーフィン-PSL大学,ウォーリック大学)に決定しました。
授賞式とロベール教授による受賞記念講演(赤池メモリアルレクチャー)は,横浜市立大学金沢八景キャンパスにおいてハイブリッド形式で開催される2026年度統計関連学会連合大会の期間中,9月7日(月)に開かれるプレナリーセッションとして実施されます。ロベール教授は来日して会場で講演を行う予定です。
【受賞理由】
クリスチャン・P・ロベール教授は,現代ベイズ統計学およびベイズ計算への卓越した貢献により高く評価されています。同教授の研究の中心的なテーマは,厳密な計算がしばしば不可能となる複雑なモデルにおいて,ベイズ推論をいかに実行可能なものにするかを示すことでした。マルコフ連鎖モンテカルロ法,Approximate Bayesian Computationなどのシミュレーションに基づく方法論を通じて,同教授はベイズ解析を,現代統計科学における実践的な枠組みへと発展させることに貢献しました。
また,著書『The Bayesian Choice』および,ジョージ・カセーラとの共著『Monte Carlo Statistical Methods』は,世代を超えて統計学者を育てるとともに,ベイズ的な考え方と計算を実践の中で理解するための主要な文献であり続けています。これらの貢献と国際的な統計コミュニティへの奉仕を通じて,ロベール教授はベイズ理論と現代統計解析の実践との結びつきを強めてきました。
統計数理研究所のAnnals of the Institute of Statistical Mathematics (AISM)のAssociate Editorを2003年から2005年3月まで務める等の関わりもあり,ロベール教授のこのような統計科学界における顕著な貢献は,赤池メモリアルレクチャー賞にふさわしいものであるとして,選考委員会はロベール教授に第6回赤池メモリアルレクチャー賞を授与することを決定しました。
第6回受賞者 クリスチャン・P・ロベール教授について
【研究業績】
クリスチャン・P・ロベール教授は,現代ベイズ統計学およびベイズ計算への卓越した貢献により高く評価されています。同教授の研究の中心的なテーマは,厳密な計算がしばしば不可能となる複雑なモデルにおいて,ベイズ推論をいかに実行可能なものにするかを示すことでした。マルコフ連鎖モンテカルロ法や Approximate Bayesian Computationなどのシミュレーションに基づく方法論を通じて,同教授はベイズ解析を,現代統計科学における実践的な枠組みへと発展させることに貢献しました。同教授の研究は,計算が単なる実装のための道具ではなく,ベイズモデリング,推論,科学的応用に不可欠な構成要素であることを明らかにしました。
ロベール教授の影響は,ベイズ統計学の教育と理解のあり方にも大きく及んでいます。『The Bayesian Choice』は,ベイズ推論を意思決定論の視点から提示し,基礎的原理から実践的な実装に至るまでを体系的に論じたものであり,ISBAデグルート賞を受賞しました。また,ジョージ・カセーラとの共著『Monte Carlo Statistical Methods』は,統計学におけるモンテカルロ法の標準的文献となり,世界中の研究者や大学院生の教育に大きな影響を与えてきました。これらの著書は,ベイズ的な考え方と計算実践に対する現代の統計学者の理解を形づくるうえで重要な役割を果たしました。
ロベール教授はまた,国際ベイズ分析学会(International Society for Bayesian Analysis)会長,『Journal of the Royal Statistical Society: Series B』編集長,『Biometrika』副編集長などを歴任し,リーダーシップと編集活動を通じて,この分野の国際的発展にも貢献してきました。同教授の業績は,統計学の原理を,モデリング,計算,科学的推論のための方法へと具体化するものであり,赤池メモリアルレクチャー賞にふさわしいものです。ベイズ的思考を厳密であると同時に実用的なものとすることにより,同教授は現代統計科学の実践的可能性を大きく広げてきました。
クリスチャン・P・ロベール(Christian P. Robert)教授 プロフィール
【現在】
フランス パリ・ドーフィン-PSL大学 CEREMADE 教授
イギリス ウォーリック大学 統計学部 教授
【略歴】
誕生年:1961年
学歴
1987年 ルーアン大学 博士号(数学)取得
1991年 パリ第6大学 研究指導資格取得
主な職歴
| 1989-1992年 | パリ第6大学 助教 |
| 1992年- | 経済統計研究センター(CREST) メンバー |
| 1994-1998年,2002-2010年 | CREST 統計研究部門 部門長 |
| 1992-2000年 | ルーアン大学 教授 |
| 1992-2005年 | パリ・エコール・ポリテクニーク パレゾー校 特命教授 |
| 2000年- | パリ・ドーフィン大学 教授 *現職 |
| 2010-2015年,2016-2021年 | フランス大学学院(IUF) シニアメンバー |
| 2013年- | イギリス ウォーリック大学 教授 *現職 |
| 2019年- | パリAI研究所(PR[AI]RIE) 研究チェア教授 |
第6回赤池メモリアルレクチャーの実施について
第6回赤池メモリアルレクチャーは,統計数理研究所と統計関連学会連合が共同で,2026年度統計関連学会連合大会プレナリーセッションとして開催する予定です。
【セッション名】
統計関連学会連合大会プレナリーセッション
赤池メモリアルレクチャー
【講演者】
クリスチャン・P・ロベール
(パリ・ドーフィン-PSL大学 教授,ウォーリック大学 教授)
【題目】
Bayesian Adversarial Privacy
【オーガナイザー】
鎌谷 研吾(統計数理研究所 教授)
【司会】
青嶋 誠(統計関連学会連合 理事長)
【座長】
山下 智志(統計数理研究所 所長)
【討論者】
矢野 恵佑(統計数理研究所 准教授)
菅澤 翔之助(慶応義塾大学 教授)
※セッションはすべて英語で行われます。
【日時】
2026年9月7日(月)10:00~12:00
【会場】
横浜市立大学 金沢八景キャンパス
〒236-0027 横浜市金沢区瀬戸22-2
(https://www.yokohama-cu.ac.jp/access/hakkei_campusmap.html
)
※現地とオンラインのハイブリッド形式で行われ,ロベール教授は現地で登壇,講演します
詳細情報は
統計数理研究所
2026年度統計関連学会連合大会
の各ウェブサイトにおいて発信していきます。
赤池メモリアルレクチャー賞の趣旨
赤池メモリアルレクチャー賞は,統計数理研究所と日本統計学会の共同事業の提案として2014年から企画が温められてきたものです。統計科学の分野において,多大な功績を残し, その発展に大きな影響を及ぼした故赤池弘次博士※にちなんだ賞を創設し,その受賞者による記念講演(以下,「赤池メモリアルレクチャー」)を実施することで,国内外の統計科学研究者の交流の機会を設け,若手の人材育成を促進すると同時に,統計科学分野のさらなる発展に寄与していきます。2023年10月以降,本賞は統計数理研究所と統計関連学会連合の共同事業として運営されています。
受賞者は,統計科学(制御,最適化など数理科学・数理工学分野も含む)及びその応用分野において,故赤池博士のように時代を先取り,広範囲の研究分野に影響を与え国際的に活躍された研究者の中から,2年に一度,一名が選出されます。なお,受賞者には賞金30万円と記念の盾及び旅費が授与されます。
赤池メモリアルレクチャーでは,人材育成の観点から,若手研究者の数名を討論者として指名し,講演後に,講演者との質疑応答の機会を設けることにしています。そして,講演内容は,討論付きの招待論文として,『Annals of the Institute of Statistical Mathematics (AISM) 』に掲載されることになっています。
※故赤池弘次博士
1927年11月5日静岡県で誕生し,海軍兵学校,第一高等学校,東京大学理学部数学科を卒業後,1952年に統計数理研究所に入所。
1960年代にスペクトル解析法,多変量時系列モデル,統計的制御法,時系列解析ソフトウェア TIMSAC などの研究・開発を行って時系列解析の分野で世界を先導しました。1970年代には情報量規準AICを提唱,予測の視点に基づいて従来の統計理論とは異なる新しい統計モデリングのパラダイムを確立し,広範な研究分野に多大の影響を及ぼし,1980年代には,ベイズモデリングの実用化を推進し,大規模情報時代に即した新しい情報処理の方法の発展に先駆的な役割を果しました。故博士の研究論文は統計科学界において永くに渡って引用され,その研究成果は非常に高い評価を受けた証として,故博士は紫綬褒章,勲二等瑞宝章,京都賞等数多くの栄誉を受勲,受賞しました。
1986年からは統計数理研究所長を務め,研究所の運営及び総合研究大学院大学統計科学専攻の発足に伴う大学院教育にも従事した後,1994年に任期満了退官,同年に統計数理研究所名誉教授,総合研究大学院大学名誉教授となった後も,ベイズモデル,ゴルフスイングの解析に取り組む等,過去の業績に満足することなく,飽くなき情熱を持って最期まで研究を継続しました。また,1989年1月~1990年12月の間,第19代日本統計学会会長を務めました。
2009年8月4日茨城県で永眠(享年81)。
なお,2017年11月5日には,世界16の国と地域で Google 検索画面に「赤池弘次生誕 90周年」として,記念ロゴが掲載されました。
(参考:https://www.google.com/doodles/hirotugu-akaikes-90th-birthday
)
*故赤池弘次先生記念ウェブサイト 赤池記念館* https://www.ism.ac.jp/akaikememorial/index.html
| 本件に関するお問い合わせ先 |
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大学共同利用機関法人 情報・システム研究機構 統計数理研究所 運営企画本部企画室 URAステーション 〒190-8562 東京都立川市緑町10-3 TEL: 050-5533-8580 E-mail: ask-ura@ism.ac.jp |
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