数学・数理科学と共に拓く豊かな未来 数学・数理科学と諸科学・産業の恊働による研究を促進するための「議論の場」を提供
項目 内容
研究集会等の名称 数理科学的手法を駆使した生命現象の定量化への挑戦
採択番号 2015S05
該当する重点テーマ 計測・予測・可視化の数理 、リスク管理の数理 、最適化と制御の数理 、ビッグデータ、複雑な現象やシステム等の構造の解明
キーワード 数理生命科学提言課題(ダイナミクス、情報処理) 、数理モデル 、個体群動態 、データ解析 、遺伝子配列 、理論生態学
主催機関
  • 九州大学大学院理学研究院
  • 富山県立大学工学部生物工学科
運営責任者
  • 岩見 真吾
  • 立木 佑弥
  • 鎌倉 昌樹
開催日時 2016/03/27 00:00 ~ 2016/03/29 00:00
開催場所 富山県の黒部市宇奈月国際会館 会議室C
最終プログラム

マイクロサテライト配列の定量解析(山口)(pptx)

定量的形態計測入門(野下)

ベイズ入門(立木)(pptx)

ネットワーク解析入門(守田)(pptx)

生命現象の理論・実験の融合研究に携わる研究者のうち、主に、応用数学、生態学、進化学、分子生物学を背景にし、数理モデル、コンピュータシミュレーション、統計分析などの数理科学的な手法を利用して、古典的な“縦割り研究”の域を超えて新しい“分野横断的研究”に従事している、あるいは、興味がある若手研究者によってチームを形成して集中討論を開催する。各チームは2-3名の講師を含む3-4名の聴講者によって、全員が議論に参加をする形で構成する。会議の進行は運営責任者の岩見・立木が責任を持つが、特定の話題に関する討論の時は、専門講師を中心にファシリテータを立てる。はじめ、運営責任者の鎌倉が実験検証可能な複数の共同研究のシーズを提案し(具体的な課題の提示)、少なくとも1つの課題に関する原著論文を仕上げることを前提に、各講師が講義を通して専門とする数理科学的な手法の紹介を行う(チュートリアル)。また、研究事例紹介として理論・実験の融合研究を精力的に推進している新進気鋭の若手研究者に講義を依頼し、そのアプローチを学ぶ。そして、共同研究のシーズ発見をめざした深い議論を行うため、ファシリテータを立てた討論の時間を多く設け、チーム間で協同してオリジナル研究を生み出すことに注力する。講師は1時間の講演の中で数理科学的手法の応用例を取り上げ、2日目の午後の討論セッションにおける、共同研究で取り組む課題の実現可能性について触れながら,その解決手段について集中的に議論する。3日目には2泊3日の集中討論で進めてきた数理科学的な手法を用いた多角的な解析可能性を総括し、原著論文の執筆に向けた共同研究の具合的な分担を話し合う。本協同研究では、実験による検証を具体的に行う事が特筆すべき点の1つである。

「生命現象の数理モデリング」チーム(*が講師)
岩見真吾*(九州大学大学院理学研究院・数理科学)
小泉吉輝*(金沢大学医薬保健学域医学類・臨床/基礎医学)
池田裕宜(九州大学システム生命科学府・生物学)
柿添友輔(九州大学システム生命科学府・生物学)

「生命現象の定量的データ解析」チーム(*が講師)
Marko Jusup*(北海道大学電子科学研究所・物理学/数理科学)
野下浩司(東京大学大学院農学生命科学研究科・数理科学/情報学)
山口諒(九州大学システム生命科学府・進化生態学)
伊藤悠介(九州大学理学部生物学科・生物学)

「生命現象の計算機シミュレーション」チーム(*が講師)
守田智*(静岡大学大学院工学研究科・複雑系科学)
中岡慎治*(東京大学大学院医学系研究科・数理科学/免疫学)
立木佑弥*(九州大学大学院理学研究院・理論生態学)
布野孝明(九州大学理学部生物学科・生物学)

「生命現象の実験検証」チーム(*が講師)
鎌倉昌樹*(富山県立大学工学部・分子生物学)

プログラム
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1日目 座長・立木佑弥
[午後]
15:00--15:30 岩見真吾 (スタディグループの説明)
15:30--17:30 鎌倉昌樹 (課題抽出に向けての問題提起:寿命の制御に関して)
17:30--18:20 Marko Jusup(講義1:時系列データ解析について)
18:40--19:30 守田智(講義2:ネットワーク解析について)
※宇奈月周辺で懇親会

2日目 座長・岩見真吾
[午前]
10:00--10:50 立木佑弥(講義3:個体群動態のモデリングについて)
11:00--12:00 中岡慎治(講義4:個体ベースシミュレーションについて)
(休憩)
[午後]
14:00--14:50 討論1(ファシリテータ:鎌倉昌樹)
15:00--15:50 討論2(ファシリテータ:Marko Jusup)
(休憩)
16:00--16:50 野下浩司(研究事例紹介1:形態と測定について)
17:00--17:50 山口諒(研究事例紹介2:遺伝子配列と種分化について)
(休憩)
18:00--18:50 討論3(ファシリテータ:守田智)
19:00--19:50 討論4(ファシリテータ:立木佑弥)

3日目 座長・立木佑弥
[午前]
10:00--11:30 小泉吉輝(本スタディグループを通じた共同研究の方向性)
11:30--12:00 岩見真吾(フォローアップに関する議論)

参加者数 数学・数理科学:4、 諸科学:12、 産業界:0、 その他:0
当日の論点

女王蜂における寿命制御機構の解明(鎌倉)

寿命という、生命科学におけるの最大のテーマについて議論した。特に、ミツバチを例に取り、何故クィーンはワーカーの数十倍の寿命を持つのかに論点を当てた。発生段階の様々な段階で異なるメカニズムにより寿命がコントロールされている可能性が実験データから示唆され、どのように数理的に扱うかを論じた。

研究の現状と課題(既にできていること、できていないことの切り分け)

寿命に影響を与える可能性として「クィーンとワーカでは代謝が異なるのでは?」という仮説がある。遺伝子発現やクロマチンの状態が異なる事がこの仮説を検証するヒントになる。すでに得られている、クィーンとワーカーのBS-seq/RNA-seq/Chip-seqのビックデータを用いて、本研究を進めていく事になった。まずは、バイオインフォマティクスを用いた解析を進める事で重要な因子を特定する事が課題となった。

新たに明らかになった課題、今後解決すべきこと

重要な遺伝子が明らかになったとして、やはり、それらの発現がどのように代謝に影響し、また、寿命を制御する事につながっているのかは不明のままである。つまり、これらの遺伝子発現を記述するようなデータドリブンな数理モデルを構築し、寿命という現象の基本原理を説明する事が重要であると一致した。実験科学者と数理科学者が相互フィードバック型の研究を展開する事でこの様な難題に取り組んでいく。

今後の展開・フォローアップ

まずは、ミツバチ研究の第一人者である鎌倉がデータを整備し、また、新規データを取得する。それらのビックデータを中岡がバイオインフォマティクスを用いた解析を行い重要な因子を検出する。同時に、九州大学にてこの様な解析を滞りなく進められる様なプラットフォームを構築していく。そして、遺伝子発現やクロマチン状態の違いにより代謝を特徴づける数理モデルとシミュレーションを開発し、寿命の違いを説明していく。