修了生からの声

修了生からの声

基本情報

氏名: 安井雄一郎
学位所得時期: 2023年3月(後期3年課程)
博士論文タイトル: 科学技術文献における引用ネットワークに対する確率生成モデル
所属: 日本経済新聞社 日経イノベーションラボ 主任研究員/統計数理研究所 外来研究員

在籍時の研究活動

入学以前は大規模ネットワーク上で効率的に動作するグラフアルゴリズムや並列計算に関する研究に携わっており,アルゴリズムや実装の挙動に興味がありました.その後,ネットワーク構造が時間経過とともに成長する振る舞いへと関心が移り,総研大での研究テーマとして選びました.学術論文の書誌データベース上の引用構造から,文献や引用に対応させたノードやエッジからなる引用ネットワークを構築し,時間経過とともにどのようにノードやエッジが追加されていくのかを確率生成モデルとして構成しました.既存モデルと比較して,提案モデルは文献の発表時刻を明示的に扱うことができ,正統なシミュレーションとなることなどの利点があります.さらにモデルを拡張し,特許文献の引用構造に対して適合することも示しました.

修了後の活動

学位取得後も同じ勤務先で様々なデータを構造化し利活用を進めるための要素技術の研究開発に取り組んでいます.柔軟な構造化を行うためのセマンティクウェブ,テキストデータからの情報抽出や構造化を行うための自然言語処理,構造化されたデータを活用するための統計科学やデータ科学,機械学習など領域を横断する枠組みです.統計科学やデータ科学の知見や取り組み方はこれらの研究テーマに対しても非常に有効です.また博士論文の一部の内容を発展させて継続して研究を進めています.

統計科学専攻を選んだ理由

入学以前に取り組んでいた高性能計算に関する研究での連携が最初のきっかけだったと思います.当時,統計数理研究所には世界最大規模の共有メモリ型スーパーコンピュータが設置され,ベンチマーク計測を行うなど連携させて頂きました.また大学から企業へ移る際に求められるスキルの変化に応じて統計科学やデータ科学にのめり込む環境であることから,統計科学専攻を選択させて頂きました.

統計科学コースの志願者へメッセージ

統計数理研究所は素晴らしい環境です.社会人学生にとって勤務先での業務と総研大での研究を時間調整することは難しく,学位取得できたのはこの環境だったからです.統計数理研究所の皆様には多大な配慮を頂き,学位取得まで支えて頂きました.