修了生からの声

修了生からの声

基本情報

氏名: 中村理恵
学位所得時期: 2021年3月(後期3年課程)
博士論文タイトル: 中高年女性の将来のシワ状態を予測する統計モデルの開発と検証に関する研究
所属: 株式会社コーセー 研究所先端技術研究室 主任研究員

在籍時の研究活動

化粧品ユーザにとって老化予防は最大の関心事の一つです。老化を理解し、制御しようとしたときに大きな課題となるのが個人間差です。私は、この個人間差を適切に扱うことを研究テーマとしました。具体的には、医療統計で研究されているデータの異質性をモデリングするための手法開発や、疾患発症予測モデルの概念を用いて経時的に取得した観測データから個人ごとの老化プロファイルを予測する研究です。 最終的には、シワの進行を予測するためのデジタルツールとして市場にローンチするところまでを研究の中で実施することが出来ました。

修了後の活動

学位を取得後は、株式会社コーセーでデータ科学を扱う研究チームのリーダーをしています。モノづくり技術の革新や新たな市場価値創出のための研究プロジェクトの推進が主な仕事です。化粧品の研究領域は界面化学、生化学、感性工学、皮膚科学、心理学など非常に多分野に渡り、これらの研究領域を融合させていくことをデータ科学が担っています。学位取得の過程で修得した統計科学の研究力だけでなく、記述・表現する力は研究推進に非常に役に立っています。また、現在の仕事として、産学連携を促進する役割も担っており、在学時代に出会った先生たちには本当に助けられております。統計数理研究所で博士課程を修了できたことに感謝する日々です。

統計科学専攻を選んだ理由

私が統計科学専攻を選択した理由は三つあります。一つ目は、化粧品業界におけるデータ活用への期待感の高まり、二つ目は、社内に蓄積されたデータ資源活用に対する社内ニーズ、三つ目は、私自身の興味関心です。博士課程入学以前、私は「化粧品が真に効果があることを証明する方法は?」に対する答えが欲しくて、独学で統計科学に関する勉強を始めておりました。統計数理研究所の公開セミナーを受講したり、統計相談に伺ったりする中で、恩師である野間先生に出会い、野間先生の下で研究することを熱望するようになっていました。社会情勢と社内事情、そして自身の状況が偶然にも重なり、統計科学専攻への社会人博士としての入学の機会へと繋がりました。

統計科学コースの志願者へメッセージ

統計数理研究所は研究に専念するための素晴らしい環境です。私は、コロナ禍前は図書室の蔵書の多さや、先生たちとの対話がうれしくて足しげく通っていました。また、コロナ禍においても、リモートでの研究環境や学修環境がすぐに整えられ、仕事と研究の両立を支えていただきました。そして、最大の魅力は、国際的に活躍する先生たちがすぐ身近にいらっしゃること、そして親身に研究を支援して下さることです。特に、私自身は、先生たちのセミナーや授業、そして対話の中で、技術に関してはもちろんですが、先生たちが発話する言葉や表現にとても感銘を受け、研究者としてのあるべき姿や態度を学ばせていただきました。