修了生からの声

修了生からの声

基本情報

氏名: 小島将裕
学位所得時期: 2022年3月(後期3年課程)
博士論文タイトル: モデル補助デザインを適用したがん第Ⅰ相用量探索試験の早期完了に関する研究
所属: 協和キリン株式会社 研究開発本部 開発ユニット バイオメトリックス部 統計解析G

在籍時の研究活動

統計科学専攻に在籍していたときは、がんの第I相臨床試験を早期に終える方法の研究をしていました。がんの第I相臨床試験は低い用量から投与を開始し、増量や減量を繰り返し、許容される安全な最大用量を特定することが主な目的になります。用量の調整は慎重に行われるため、少ない症例の集団をコホートとして扱い、各コホートの安全性の評価後に次のコホートに投与する用量を決定します。例えば、サンプルサイズを30例、コホートサイズを3例(臨床試験への登録に1カ月)、安全性の観察期間を1カ月とした場合、臨床試験の期間は20カ月と長いように感じます。そこで、臨床試験を早期に完了させる方法は重要です。試験を早期に完了させる方法の開発に成功し、会社内での実際の臨床試験に適用することができました。 なお、入学当初はネットワークメタ解析においてサンプルサイズが小さい場合の補正法の開発に取り組んでおりました。本方法について論文にまとめた後は、統計数理研究所内外での交流を経て、上記のがんの第I相臨床試験の研究を行うことになりました。

修了後の活動

学位の取得後は引き続き会社で臨床試験の統計解析担当を続けています。また、外来研究員として統計数理研究所にも所属しています。 医薬品開発はリアルワールドデータの活用やModeling & Simulationの活用など、これまでにない方法を活用した効率的な開発が期待されています。統計解析担当として、専門性を活かして、今後も引き続き、効率的な医薬品開発を進めたいと考えています。また、統計数理研究所の外来研究員として研究活動を継続して行っています。統計数理研究所には、継続した研究の場を与えていただき非常に感謝しております。

統計科学専攻を選んだ理由

統計数理研究所の野間教授の「ネットワークメタアナリシスによるComparative Effectiveness Researchと高次漸近理論に基づく推測手法」を聴講しました。本発表では、bootstrapを用いたサンプルサイズが小さい場合に発生するバイアスの補正法が紹介されました。新しい疾患領域では臨床試験数(サンプルサイズ)が少ないこともあるため、このバイアス補正は非常に重要だと感じました。野間先生に指導いただくために統計科学専攻を選びました。 ネットワークメタ解析ではnuisance parameterの推定に数値解析を使う必要があり、bootstrapを行うことで計算時間がかかるため、補正するための式を記述的に書けないかと思いました。記述的な数式を開発し、論文にまとめて公表することを目的として博士課程への進学を決めました。

統計科学コースの志願者へメッセージ

統計数理研究所は多様な先生方が在籍し、毎週開催される統計数理セミナーでは研究所内の先生から最新の研究内容を紹介いただき非常に勉強になりました。また、研究所内では統計に関する論文を一通り読むことができるため、自身の論文作成を円滑に進めることができました。設備にも恵まれており、学生はスーパーコンピューター使えるところは魅力的だと思います。統計数理研究所という素晴らしい研究環境が整った環境で研究活動を行えたことは非常に満足しています。最高な環境の下で、楽しんで研究を進めていただければと思います。ご入学をお待ちしています!