数学・数理科学と共に拓く豊かな未来 数学・数理科学と諸科学・産業の恊働による研究を促進するための「議論の場」を提供
項目 内容
研究集会等の名称 日本生体磁気学会大会 数学セッションプログラム
採択番号 2016W01
該当する重点テーマ ビッグデータ、複雑な現象やシステム等の構造の解明
キーワード 生体磁気 、数理モデリング 、定量化
主催機関
  • 日本応用数理学会数理医学研究部会
運営責任者
  • 鈴木 貴
開催日時 2016/06/10 12:55 ~ 2016/06/10 14:35
開催場所 金沢市文化ホール(〒920-0864 石川県金沢市高岡町15番1号)
最終プログラム

開催時期:2016年 6月 10日

開催場所:金沢市文化ホール(〒920-0864 石川県金沢市高岡町15番1号)

プログラム:

第31回日本生体磁気学会大会シンポジウム3「生体磁気分析の数理」

座長 鈴木貴(大阪大学)

講演者

山岸弘幸 (都立産業技術高専)「脳磁図解析のためのノイズを含む多チャンネルデータからのノイズ共分散行列の直接推定法」山岸弘幸

奈良高明 (東京大学)「MRに基づく導電率・誘電率分布の推定 – 一般化コーシーの積分公式に基づく直接再構成 -」

関原謙介 (東京医科歯科大学)「Biomagnetic imaging: A Baysian perspective」

樋口正法 (金沢工業大学)「脳神経活動信号を用いた聴覚機能支援装置の開発」樋口正法

高橋哲 (福井大学)「The emerging field of MEG analyses on neural network – complexity and connectivity」

参加者数 数学・数理科学:5、 諸科学:40、 産業界:10、 その他:
当日の論点

生体磁場データを用いた医療診断技術の開拓で必要とされている数学的な基盤とその応用について数理と臨床の双方の立場から最新の研究を報告し、実用化への道筋を探索した。数理側からはノイズ除去とパラメータ同定、臨床側からはMEGデータからの脳高次機能同定とモデリングについて問題提起があり、フロアーからの発言も含めて詳細を検討した。

研究の現状と課題(既にできていること、できていないことの切り分け)

生体磁気データ分析では加算平均を取ることでノイズを除去するという方法が標準的で、臨床への適用が制約されるひとつの原因になっている。これに対して多チャンネルのMEGデータからノイズ共分散行列を推定法する方法として、カラードノイズに対処できる統計的スキームが提案され、MIR画像に基づいた精密な数値実験によってノイズに対処できる強力な方法であることが示されている。またMSGへの適用を視野に入れたスパーズベイズ推定とベイズ因子分析を用いた理論研究も進んでいる。一方、パラメータ同定では幾何学的な仮定の下で導電率や誘電率分布についての生体の物理特性を厳密に求める解析的な公式が得られている。今回発表された以上の3つの数理的方法はいずれも斬新なもので、臨床との協働によって優位性をもつ状況を明確にすることが期待される。臨床データ分析の立場からは、連続な聴覚誘発反応分析におけるコヒーレンス関数とASD分析におけるグラフ上の複雑系理論が、MEGを用いた高度脳機能分析において適用されている。いずれも新しい試みで、臨床データ分析で有効な数理的方法として確立するために、臨床データ分析を重ねていくことが計画されている。

新たに明らかになった課題、今後解決すべきこと

多チャンネルデータからのノイズ共分散行列の直接推定法のシミュレーションでは、従来法に比較して高い解像度が表示されている。臨床において加算平均が取れないようなMEGデータ分析におけるノイズ除去法として、今後の実用化が期待される。従って、アルゴリズムをより簡略化し計算コストを下げることと、臨床データの分析を通じて優位に適用できる状況を明確にすることが必要である。再生核を用いて生体の電磁的な物理特性を解析的に表示する方法は、数学的にも新しく興味深いものである。必要としている幾何学的な仮定は現実には厳密な意味で成り立つことは難しいが、適用範囲を理論的に広め、他の方法との併用を考えて応用研究を展開する必要がある。

今後の展開・フォローアップ

臨床研究や、デバイス開発と協働した研究が継続できるために、日本応用数理学会や日本生体磁気学会において数理的な研究発表の場を設定する。