数学・数理科学と共に拓く豊かな未来 数学・数理科学と諸科学・産業の恊働による研究を促進するための「議論の場」を提供
項目 内容
研究集会等の名称 科学における発見、数学における発見
採択番号 2016C02
該当する重点テーマ ビッグデータ、複雑な現象やシステム等の構造の解明 、疎構造データからの大域構造の推論 、過去の経験的事実、人間の行動等の定式化 、計測・予測・可視化の数理 、最適化と制御の数理 、リスク管理の数理
キーワード 科学的発見 、数学的発見 、異文化交流
主催機関
  • 数学協働プログラム
  • 文部科学省
運営責任者
  • 丸山 直昌
開催日時 2016/11/05 13:15 ~ 2016/11/05 15:40
開催場所 産業技術総合研究所臨海副都心センター別館 11階会議室1
(東京都江東区青海2-4-7、新交通ゆりかもめ「テレコムセンター」駅下車徒歩3分)
最終プログラム
2016年11月5日(土) 13:15-15:40
(受付開始 13:00)

チラシ低解像度版(.pdf)  ポスター 低解像度版(.pdf)

当日配布資料

総合司会 砂田 利一(すなだ としかず、明治大学総合数理学部長)
13:15-13:20 挨拶 砂田 利一
13:20-14:00 講演1. 山崎 大(やまざき だい、海洋研究開発機構)
      「地球規模での河川流れのシミュレーションー数学による地球システムの記述と予測ー」
      聞き手: 三上 いすず(みかみ いすず、漫画家)
14:00-14:55 講演2. 古村 聖(こむら みづき、武蔵大学)
      「数式で描く家族の行動とコンフリクト」
      聞き手: 中川 真(なかがわ しん、漫画台本作家)
14:55-15:00 休憩
15:00-15:40 パネルディスカッション 砂田 利一、山崎 大、古村 聖、三上 いすず、中川 真

(当日会場風景)

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本企画の趣旨:

最先端の科学研究において、どのように数学・数理科学が絡んでくるのか。新しい事実の発見はどのように行われるのか。そこに至るまでに研究者が直面する困難や、発見したときの喜び、未来の科学に対する夢について研究者に思う存分語って頂きます。今回は地球上の川の流れと、家族の経済学の話題を取り上げ、それぞれの研究者に、数学が研究上どのように役立ったかという点を込めて研究の概要を講演して頂きます。漫画家と漫画台本作家が、数学の門外漢の視点で講演者に質問を適宜入れる形で進めます。

参加者数 数学・数理科学:5、 諸科学:13、 産業界:7、 その他:15
当日の論点

 (パネルディスカッションでの話題)

  • 再現できない現象のモデル化
  • おかしなモデル化
  • モデルの適切性、限界、検証
  • モデルの「正しい使い方」

(当日回収のアンケートから)

  • 数学を自然環境・社会現象で表現することに関心があり本日拝聴しました。とても参考になりました。
  • モデルの表現に数式が使われているが、数学を使ったという印象は持てません。
  • 古村さんの発表はわかりやすかったが、「出生率を男女比の変化で微分する」箇所をもうすこし詳しく聞きたいです。(なぜ微分なのか)
  • 山崎さんの発表で、河川内部の地形のばらつきを表現する際に、ぼうだいなデータ処理を行うようですが、一定のアルゴリズムがあるかを知りたい(一般化がなぜ難しいのかを聞きたいです)
  • モデル化は電子工学の場でも必須の事柄なのでこれからも研究をつづけてほしい。
  • モデルを立てるときに限界がある点は今自分の学んでいる工学の面でも当てはまると感じた。例えば気体の法則はたいてい理想気体のモデルを仮定しているが、実際の気体を取り扱った実験では値が近くなることがないことからも、理想と現実の一致に限界があると常に感じる。
  • 数学は難しいが、一度身につけばいろいろな現象を分析することが容易になると思いました。数式にしたほうが言葉で説明するより理解しやすい。
  • 色んな見方があるんだなと目からうろこが落ちました。
研究の現状と課題(既にできていること、できていないことの切り分け)

数学と諸科学の連携は実際には数多くあるが、その実態は必ずしも一般には理解されていない。数学は定義、定理、証明、というふうに厳格に論理を積み重ねてゆくものであって、一般には硬い、融通が利かない学問であるという見方をされがちである。そのような数学が、複雑・多様で変化に富んだ他分野でどのように役立つかを実感として理解して貰うことは、重要なことである。他分野で数学を使う場合に重要な手法は「数学的モデル化」である。これにより、「硬い」数学と他分野を結び付けることが可能となる。しかし、このようなモデル化によって数学が多くの分野で役に立っているということは、一般人にはあまり理解されていない。

新たに明らかになった課題、今後解決すべきこと

色々な学問分野において、現象に対する数学的なモデルを立てて議論を進めることは多い。モデルは通常数式で表されるが、単純な式である場合もあれば、極めて複雑なものである場合もある。今回は自然科学と社会科学それぞれの分野で再現実験が不可能な事象に対する数学的モデル化を研究対象としている講演があり、モデルの適切性、限界、検証、また社会的な信頼性といった事柄がパネルディスカッションで話題となった。これらは数学の有用性が一般から正しく理解されるために避けては通れない重要な観点である。適切でないモデル化が特定の意図をもって社会に紹介されて信頼を損ねた事例も過去には実際にあったことも考えると、適切なモデル化の事例を紹介することは、数学の有用性を理解して貰う上で極めて重要であり、関係者の一層の努力が必要であると考えられる。

今後の展開・フォローアップ

数学の有用性を実感して貰える例をさらに発掘し、一般向けの啓発活動を行うことは重要である。また中学・高校生などの若い人達に聞いて貰う機会を作り、将来数理科学の研究者や、数理科学の色々な分野への応用を手がける人材育成に繋げない。数学協働プログラムは最終年度となったが、終了後もこれらの活動を統計数理研究所の業務などを通じて行う機会を模索してゆく。