数学・数理科学と共に拓く豊かな未来 数学・数理科学と諸科学・産業の恊働による研究を促進するための「議論の場」を提供
項目 内容
研究集会等の名称 数理科学の物質・材料科学への応用
採択番号 2014W02
該当する重点テーマ 疎構造データからの大域構造の推論 、計測・予測・可視化の数理 、最適化と制御の数理 、ビッグデータ、複雑な現象やシステム等の構造の解明
キーワード 物質の構造 、幾何学(微分幾何学、位相幾何学など) 、形状・構造最適化 、微分方程式 、その他、様々な数理科学のアプローチ
主催機関
  • 統計数理研究所
  • 日本応用数理学会
運営責任者
  • 松江 要
開催日時 2014/09/04 09:30 ~ 2014/09/04 12:30
開催場所 政策研究大学院大学「想海樓ホール」
http://www.grips.ac.jp/about/access/
最終プログラム

日本応用数理学会2014年度年会(9/3から9/5)の開催中、9/4の午前(9:30 - 12:20)に開催する。詳細は日本応用数理学会2014年度年会のサイト
http://jsiam2014.jsiam.org
にて公開される。

7/15現在、以下の講演者(敬称略)が確定した。講演は2つのテーマ
「幾何学を用いた物質の構造解析」
「材料への応用に向けた最適化・制御のための数理」
の少なくとも一方に基づく。

 

09:30 - 09:50 「結晶格子の標準実現と炭素結晶」

内藤 久資(名古屋大学大学院多元数理科学研究科)

09:50 - 10:10 「正二十面体準結晶におけるクラスタ充填問題への幾何学的アプローチ」

藤田 伸尚(東北大学多元物質科学研究所)

10:10 - 10:30 「無機ガラス材料の原子構造とその幾何学に関する一考察」

高田 章(旭硝子株式会社 中央研究所)

10:30 - 10:50 「3次元ユークリッド空間内の三重周期極小曲面の剛性・分岐・共連続構造への応用」

小磯 深幸(九州大学マス・フォア・インダストリ研究所)

11:00 - 11:20 「遅れフィードバック法を用いた確率過程の制御 -- ナノデバイスへの応用に向けて」

小林 幹(東北大学原子分子材料科学高等研究機構)

11:20 - 11:40 「位相的データ解析の材料科学への応用」

平岡 裕章(九州大学マス・フォア・インダストリ研究所)

11:40 - 12:00 「負のポアソン比をもつ周期的な骨組み構造物の最適設計法」

寒野 善博(東京大学大学院情報理工学系研究科)

12:00 - 12:20 「熱弾性場における形状最適化」

片峯 英次(岐阜工業高等専門学校)


講演時間は質疑応答込みで20分ずつ。これは日本応用数理学会年会の形式に則る。

現在、全国の数学教室にポスターおよび広告チラシを配布した。以下のページにてダウンロード可能である。

http://coop-math.ism.ac.jp/files/110/JSIAM2014_flier.pdf

 

参加費:無料

なお、このワークショップは数学協働プログラム「数理材料科学作業グループ」の活動の一環として開催される。

参加者数 数学・数理科学:38、 諸科学:14、 産業界:8、 その他:0
当日の論点

WS当日は講師の先生方に、自身の研究、とくに物質・材料科学と数学・数理科学の協働による研究課題に対する成果をご紹介いただいた。日本応用数理学会年会内に開催する事により、一同に会する産学双方の研究者の参加を促した。数学・材料科学双方の視点から質問が飛び交い、相互理解に繋がった。

研究の現状と課題(既にできていること、できていないことの切り分け)

数学的課題の中にも物質・材料科学の課題を意識したものが存在する事、また物質・材料科学の問題の中にも数理的課題が隠れている可能性が認知されていない部分がある。異分野融合は多くの研究者が必要に感じている部分ではあるが、個々の研究分野だけでなく、その外に広がる分野や取り組みを認知していなければ非常に難しい点である。異分野融合を意識したワークショップは様々な機関で開催されてはいるものの、開催の場所や認知が非常にローカライズされており、散漫になりがちである。また産あるいは学のコミュニティの中で閉じた取り組みとなる傾向もある。特に産学連携が重要と思われる物質・材料科学分野においては、異分野協働が声高に唱えられる中でのこのような事態は好ましいものではない。

様々なバックグラウンドを持つ研究者が集まり、異分野協働の取り組みに気軽に参加してもらえる機会を作る事は、異分野協働を意識する研究者が行動を起こすために重要なステップである。また、そのような取り組みが広く認知され、浸透する事も異分野協働の重要なステップである。

新たに明らかになった課題、今後解決すべきこと

本ワークショップの目的は物質・材料科学分野の中に潜む数理科学の問題や取り組み、および既存の数理科学の理論を物質・材料科学分野の問題に適用した例を紹介し、数理科学と物質・材料科学の融合研究を身近に感じてもらう事である。講演は数理科学、物質・材料科学どちらの分野においても非常に多岐にわたり、多くの聴講者から非常に刺激になった事、また普段触れない分野の研究の面白さを実感できた旨の意見をいただいた。これは今回のワークショップの狙いの一つでもあったので、大きな成果と考える。

一方で、今回の講演者は、企業との取り組みに縁のある研究者が半数を占めたが、現在進行形で企業に所属している方が非常に少なく、あるいは産業界への認知が不充分だったためか、産業界からの聴講者が非常に少なかった事が悔やまれる。これは運営責任者の情報収集・コミュニケーション能力不足によるものに他ならない。特に物質・材料科学は産学双方の知見が重要となる分野であると考えるので、数理科学と物質・材料科学の協働を目指すならば、アカデミックだけでなく産業のコミュニティにおいても広くコミュニケーションをはかる必要がある。

また、今回は学会プログラム公開に合わせて告知を行ったため、他のワークショップと比べて告知が非常に遅れた印象を受ける。本ワークショップのように非常に広範囲にわたる告知が必要なものに関しては、告知時期を長期確保して十分認知していただく必要があるだろう。

学会のスケジュールに合わせた事により、質疑応答の時間、後の議論や交流の時間が充分に取れなかった事も残念である。これは学会中に集会を設定した時点から想定されていた事で、仕方のない部分でもある。いずれ数理科学と材料科学の協働の流れが各地で確立されれば、本ワークショップのような異分野協働を意識した集会をより大きなセッションとして開催し、充分な時間を確保し、より深い異分野交流が出来るものと期待する。

今後の展開・フォローアップ

本ワークショップは、日本応用数理学会という産学双方の研究者が多数所属する学会の年会で開催し、産学の垣根を取り払って参加できる事を促した比較的珍しいものとなった。しかし、単発で終わると前述のように非常にローカライズされた取り組みと何も変わらないものとなってしまい、今後の異分野協働におけるメリットは非常に少ないものとなる。融合研究の取り組みおよびその成果を発表する場、多分野の研究者が一同に会し交流が出来る機会を継続的に作っていく。

また、本ワークショップのような取り組みの情報が一部のコミュニティの中でローカライズされてしまうと異分野協働の流れは浸透しない。様々な場所に散らばる情報を集約し、気軽に閲覧して情報を得られる仕組みをつくり、各々の取り組みを関連づけるための起爆剤とする。それにより、異分野交流におけるワークショップの開催は単発のイベント以上の意味を帯び、分野を越えたつながりが強固なものとなると期待される。