【趣旨・目的】:計算機が発達した現在,工学における理論研究はモデリングとシミュレーションを用いた数理的方法が主体となっている.しかし,背後にある普遍的な法則や構造を摘出し,理論を精密化し,実用性を高めて現実により近づくという研究のループを完成するためには,記述法も含めた数学的な整理と,数理構造の明確化が必要不可欠である.現代の工学の進展は著しく,数学者の絶え間ない関与の必要性は,指数関数的に増大しているといえる.例えば有限要素法は土木工学,レベルセット法は材料科学において提案され使われてきたものであるが,その数理構造と数学基礎が解明されたことで普遍的な道具となり,数学研究の源泉ともなって,適用範囲が広がってきた.工学において様々な分野で用いられてきた数理的方法や理論を,現代数学の立場から見直すことが,科学技術を実用化するために重要である.このことは一方で,専門的な高等数学の研鑚を積んだ学生や,純粋数学研究に携わる研究者に広い視野を提供する場を与え,数学を豊かにし,人材を育成するという,数学イノベーションの趣旨に適合するものである.本ワークショップでは,構造解析,第1原理計算,揺らぎの3つに焦点を絞り,工学で展開されている数理的方法と,高度に抽象化された現代数学との接点を探っていく.
日程:
12月22日(火) 最適形状設計の大域解析学
9:20~10:20 [クラッシュコース1(鈴木貴)] 動的自由境界計算法と非線形関数解析学~Chernovの公式
10:30~12:00 田中正夫 (大阪大学) 骨の再構築シミュレーションと廃用性形態変化
13:00~14:30 畔上秀幸(名古屋大学) 最適形状設計問題における評価関数の2階形状微分と Newton 法
14:40~16:10 土屋卓也 (愛媛大学)「ラプラシアンのグリーン関数のHadamard変分について」
12月23日(水) 物質階層と第1原理計算
9:20~10:20 [クラッシュコース2(鈴木貴)] 数理モデルに現れる階層の循環~点渦と物質輸送について
10:30~12:00 尾方成信(大阪大学)「材料の強さと階層性」
13:00~14:30 吉田博 (大阪大学) 多階層量子シミュレーションによるナノマテリアルデザインと実証
14:40~16:10 中野雅由(大阪大学)「開殻性を持つ光機能性分子系の理論設計」
16:30~18:00 澤田謙 (気象大学校) 「点渦系緩和方程式とその周辺」
12月24日(木) 揺らぎの数理モデル
9:20~10:20 [クラッシュコース3(鈴木貴)] ハイブリッドシミュレーション~数理腫瘍学の基本ツール
10:30~12:00 松林伸幸(大阪大学)ソフト分子集合系における物質分配の溶液理論による解析
13:00~14:30 馬越大 (大阪大学)モデル生体膜によるバイオ分子の認識
講演は、解説(30分)研究報告(30分)質疑討論(30分)で構成します。
主催機関 :大阪大学数理・データ科学教育研究センター(MMDS) モデリング部門
運営責任者: 鈴木貴、牧野恭子(大阪大学基礎工学研究科)
連絡先 :大阪大学数理・データ科学教育研究センター モデリング部門 特任助教 宮西吉久
E-mail: miyanishi@sigmath.es.osaka-u.ac.jp
|