【開催の趣旨】
近年注目を集めている微分方程式の構造保存解法は,エネルギー保存・粒子数保存など物理系の基本的法則を再現するシミュレーションを可能とすることから,量子デバイスなど大規模かつ非線形性の強い系について信頼性の高いシミュレーションを行うための新しい基盤になりうると考えられます。そこで,構造保存型解法の産業(ものづくり)分野への応用に向け,数値解析学,高性能計算,実科学の研究者が一堂に会して分野横断的に議論する機会として,本研究会を企画しました。ぜひ多くの方々にご参加いただければ幸いです。
【11月24日(火)】
・13:00 -13:15 山本有作(電気通信大学) 題目: 数理構造保存を接点とした数学・HPC・実科学のクロスオーバー 概要: 本研究会の趣旨説明。
・13:15-13:55 松尾宇泰(東京大学) 題目: 物理諸問題の数理構造を反映した数値シミュレーション 概要: 科学・工学の多くの問題は微分方程式の初期値問題に帰着するが,それを数値的に解く際は,問題の「意味」を記述する数理構造を尊重する方が有利であることが多い。本講演では,応用・数学の両面からこの考えについて解説する。
・14:10-14:40 谷口隆晴(神戸大学) 題目: Caldirola-Kanai型変分原理に基づく構造保存型数値解法と多層パーセプトロン学習法への応用について 概要: ある種の散逸型方程式のもつ変分構造であるCardirola-Kanai型変分原理に基づく数値解法の導出法とその性質,また,それを利用した多層パーセプトロンの学習法について紹介する。
・14:40-15:10 石川歩惟(神戸大学) 題目: ピアノシミュレーションに対する構造保存型数値解法 概要: 本発表ではハミルトン系になるようなピアノの数理モデルに対し,その構造を保った空間離散化を施し,エネルギー保存則を保った数値解法を提案する。また,数値実験によってその性能を評価する。
・15:25-15:55 星健夫,井町宏人,横山誠也,梶貴美(鳥取大学) 題目: 俯瞰的数理モデリング -数理・超並列計算からものづくりまで- 概要: 有機デバイス材料研究を例として,俯瞰的数理モデリングの必要性と現状を概観する。「俯瞰的数理モデリング」とは,現象→PDE→離散系→数値計算(スパコン上のシミュレーション)→データ解析→ものづくり,という一連の流れを俯瞰的に取り扱うことをさし,数理・HPC・実科学の共同研究が必須となる。将来的には,スパコン上にソフトとデータを一体化したクラウド型サービスを構築することで,産業利用へと昇華させたい。
・15:55-16:25 多田朋史(東京工業大学) 題目: 有機高分子ワイヤーの量子波束散乱シミュレーションの現状と今後について
・16:25-17:30 ディスカッションI 概要: これまでの講演を踏まえ,有機デバイス系のシミュレーションへの構造保存型数値解法の適用可能性とその課題について議論する。
・17:30-18:30 懇親会(電気通信大学 西4号館101号室)
【11月25日(水)】
・10:00-10:30 深谷猛(北海道大学) 題目: 線形計算アルゴリズムと通信回避 概要: 近年,通信回避と呼ばれる研究が高性能計算の分野で活発化している。本発表では,講演者がこれまでに携わった線形計算アルゴリズムの通信回避事例を紹介し,現在や今後の計算機における効果を議論する。
・10:40-11:40 小田中紳二(大阪大学) 題目: 半導体における電子輸送の数学モデルと計算モデル(招待講演) 概要: 電子輸送シミュレーションは科学技術の問題の一つであり,半導体産業において広く用いられている。そのシミュレーションを可能とする計算モデルの構成と性質について,数学モデルとの関連性から議論する。 また, データ通信を考慮した計算モデルとしての並列計算モデルの重要性について述べる。
・13:00-13:30 松本純一(産業技術総合研究所) 題目: 有限要素法による2次元浅水流れ3次元気液二相流れの連成解析 概要: 有限要素法を用いた2次元浅水流れとPhase-Field界面モデルによる3次元気液二相流れの連成解法について説明する。計算例として,ミルククラウンの一億自由度大規模並列計算,孤立波の計算などを紹介する。
・13:30-14:00 宮武勇登(名古屋大学) 題目: ハミルトン系に対する高精度・並列エネルギー保存解法 概要: ニュートン方程式やシュレディンガー方程式を含む微分方程式クラスであるハミルトン系に対して,並列計算を利用して、高精度かつ高速なエネルギー保存数値解法を提案する。
・14:15-14:45 曽我部知広(名古屋大学) 題目: ブロッククリロフ部分空間のシフト不変性を利用した解法について
・14:45-15:00 井町宏人,星健夫(鳥取大学) 題目: 超並列固有値計算のための複合化数理ソルバと電子状態計算におけるベンチ マーク
・15:00-15:20 工藤周平(電気通信大学) 題目: ポストペタスケールに向けた強スケーリング型の固有値計算手法(仮題) 概要: 電子状態計算における主要な計算である固有値計算について,問題サイズを固定してプロセッサ数を増やした場合の加速率に重点を置いた強スケーリング型の解法であるブロックヤコビ法を紹介する。
・15:20-15:40 中村聡(電気通信大学,専門分野: 数値解析学,特に線形計算) 題目: 不完全コレスキー分解前処理の並列化手法とその収束性 概要: 不完全コレスキー分解前処理を並列化するための手法として,Nested Dissection法とブロック化マルチカラー法の2つを紹介し,それぞれの並列化効率と収束性を実験的に比較する。
・15:40-16:30 ディスカッションII 概要: これまでの講演を踏まえ,有機デバイス系の大規模シミュレーションにおける数値計算上の課題と最新の線形計算技法・高性能計算技法の適用について議論する。
【連絡先】
workshop151124@gmail.com
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