数学・数理科学と共に拓く豊かな未来 数学・数理科学と諸科学・産業の恊働による研究を促進するための「議論の場」を提供
項目 内容
採択番号 2012W02
タイトル 「応用トポロジーとシステムバイオロジー:数理医学の新たな挑戦」
キーワード がん組織 、ホモロジー画像診断 、ボロノイ図 、土壌診断・合金組織分析 、パーシステントホモロジー群 、パラメータ・ネットワーク・磁場源同定スキーム 、疾患システムバイオロジー 、遺伝子ネットワーク 、ベイジアンネットワーク 、阻害剤・薬剤耐性モデリング
開催時期 2013/02/22 ~ 2013/02/23
開催場所 2013年2月22日(金)大阪大学豊中キャンパス待兼山会館 豊中市待兼山町1-15、2013年2月23日(土)ホテルラフォーレ新大阪 大阪市淀川区宮原1-2-70 (TEL) 06-6350-4441
プログラム 2月22日(金)大阪大学豊中キャンパス待兼山会館 会議室
http://www.osaka-u.ac.jp/ja/access/toyonaka.html

1040-1200 鈴木貴(大阪大学基礎工学研究科)
「数理細胞生物学の方法」
パスウェイネットワーク分析, トップダウン・ボトムアップ・メゾスケールモデリングとハイブリッドシミュレーション, ホモロジーを用いた画像診断の3つの項目について, これまで開発してきた数理細胞生物学の方法と応用例を紹介する.

1320-1400 平岡裕章(九州大学マスフォアインダストリ研究所)
「タンパク質構造とトポロジー」
本講演ではタンパク質の構造解析へパーシステントホモロジー群を応用する最近の試みについて報告する. タンパク質のファンデルワールス球体モデルは, 半径の増大列からフィルトレーションを誘導するが、そのパーシステントホモロジー群を調べることでロバストな空間構造を抽出することが可能となる. これにより, タンパク質のいくつかの物性値をトポロジカルに特徴づけることが可能となる. これらの話題をサーベイし, また時間が許せば, その他の応用についても紹介する予定である.

1420-1500下川航也(埼玉大学・理工学研究科)
「結び目理論の分子生物学への応用--部位特異的組み換えのタングル解析---」
Application of knot theory to molecular biology
--Tangle analysis of site-specific recombination---
この講演では、結び目理論を応用し分子生物学の問題を解析する. 結び目や絡み目の変形であるタングル手術の特徴付けを行い, その結果をDNAの部位特異的組み換え酵素のメカニズムの解明に応用する. 特に, Xer-dif-FtsKシステムによるDNA絡み目の解消経路の特徴付けを議論する.
In this talk we apply knot theory to solve problems of molecular biology. We give characterizations of tangle surgeries between some classes of knots and links. Using these results we characterize mechanisms of DNA unlinking by site-specific recombination system Xer-dif-FtsK.

1530-1600 short communications
Rouzimaimaiti Muhemuti (Osaka University)
「腫瘍細胞浸潤に関する数理モデリング」
癌は特に先進国において死因の上位であり, その治療や基礎研究が積極的に展開されている. 例えば血管内皮細胞因子(VEGF)を阻害し, 新しい血管の形成を抑制する研究が, 既に治療で応用されている. そこでは新しい血管の形成を抑制し, 血管からの酸素補給をカットすると癌細胞が一定の大きさ以上に成長することができなくなることが報告されている. 癌細胞の浸潤性を抑制する研究も主要なもののひとつである. 癌細胞の膜上には浸潤突起 (Invadopodia) と呼ばれる細くて長い突起があり, この浸潤突起が周囲の ECM (細胞外マトリックス) を分解することが浸潤を起こす引き金であることがわかっている. 本研究では癌細胞が浸潤能を獲得するメカニズムの解明を目的とした. 特にアクチン重合, ECM 分解および ECM リガンドによる MMP (マトリックスメタロプロテアーゼ) の活性化による, 細胞内外の分子の相互作用が浸潤突起の形成にどの程度影響を与えているのかについて数理モデルを用いて検討した. その結果, フィードバックの揺らぎによって浸潤突起の局所化が実現されること, 信号による MMP の活性化が浸潤突起の形成に重要な役割を果たしていることがわかった.
Minerva Dhisa (Osaka University)
「Pathway analysis of activating MMP2 by MT1-MMP」
Cancer is known as the worst death cause in the world. Every single person in the world has the probability of having cancer diseases in their body. The person who has cancer in his/her body must struggle from the disease by any medical treatment such as chemotherapy or any other therapy. Before trying to apply the treatment to the patients, it will be better to study the behavior and mechanism in cancer itself. Knowing the process of cancer can help us to prevent people from getting cancer disease and to pick the best treatment to cure cancer patients. MT1-MMP (membrane type 1 matrix metalloproteinase) is known as a substrate that exists in cancer cell which play an important role in cancer cell invasion. Invasion is one of the processes in metastasis, which gives the cancer cells the ability to travel to distant organ by entering blood circulation. MT1-MMP works with other two substrates exist in ECM (extracellular matrix), TIMP2 (metallopeptidase inhibitor 2) and proMMP2 (pro matrix metalloproteinase 2), to produce the complex that has the ability to degrade the ECM, the first step in the process of metastasis. This complex is then believed that causes the cancer. Hence the study of this complex will benefit researchers to help in preventing and curing patients from cancer. The mathematical model of this complex process is constructed in the Ichikawa Pathway Model by Prof. Ichikawa. The analysis and simulation of this model is now being studied by several researchers. Especially for the study of inhibition of the complex that causes cancer.
1610-1630 質疑応答

2月23日(土)ホテルラフォーレ新大阪 19F カンタベリー
http://www.laforethotels.com/shinosaka/access.html

0930-1030 田中博(東京医科歯科大学難治疾患研究所)
「システム分子医学の現状と将来」
疾病の基底を細胞内外の「分子ネットワーク/パスウェイの歪み」から理解するシステム分子医学の概念がゲノム/オミックス医療の根本を変えつつある. 講演では分子ネットワーク病態学の見地から、東北メディカルメガバンクなどのゲノムコホート研究における遺伝子・環境相互作用解析研究の現状、先制医療における発症リスク解析や疾患重症化抑制など, 最近のゲノム/オミックス医療の研究トピックスを論じる. 最後にがんの転移機序をEpigenetic landscapeでのアトラクター遷移として捉えるがん複雑系生物学について述べ、また創薬に関するシステム薬理学についても触れる.

1050-1130 篠原久明(理化学研究所免疫・アレルギー科学総合研究センター)
「B細胞の運命を決めるシグナルの‘スイッチ’機構」
B細胞の抗原受容体から誘導されるシグナルは, 機能・増殖・分化・生存を決定します. このシグナルに異常が生じると, 様々な疾患が誘発されることが分かっています. 最近, 私は定量的な実験によりB細胞の活性化を「スイッチ」のように制御するシグナルの機構を明らかにしました. また, この機構の反応速度論的モデルを構築することにより得られた結果について紹介したいと思います.

1150-1210 齋藤卓(大阪大学基礎工学研究科)
「膜微小ドメインへの局在化を介したシグナル伝達制御機構」
がん遺伝子Srcは, 単体で形質転換(増殖能の増加や浸潤・転移能の獲得などの細胞機能の変化)を起こす分子として特定されている重要な遺伝子である. Srcは, 膜直下に局在する非受容体型のチロシンキナーゼであり, がん化した細胞で過剰発現し, 様々な細胞内シグナル伝達に関わっている. また, Srcは, 脂質ラフトと呼ばれる細胞膜の特殊な微小領域への局在化を介して制御が行われることが最近わかってきた. 本研究では, この現象に対して数理モデルを用いて検証することを目的とし, 分子細胞生物学実験と数理モデルを組み合わせた定量的な解析を行う.

1320-1400 洪実(慶応義塾大学医学部)
「幹細胞の遺伝子ネットワーク」
細胞のアイデンティティは, 遺伝子のネットワークによって決定されていると考えられている. 従って, 再生医療で必要とされる多能性幹細胞を自由自在に分化させる技術の開発には, 遺伝子のネットワークの構造と動態の詳細な理解が必要である. そのために, 私達の研究室では, 多数の転写調節因子に1つずつ摂動を加え, それが全遺伝子の発現パターンにどのような影響を及ぼすかを, 時間軸を考慮しつつ網羅的に解析してきた. 本講演では, 実験科学的アプローチとともに, 情報数理科学的アプローチについても議論する.

1420-1500 下平英寿(大阪大学基礎工学研究科)
「ネットワーク構造の統計数理」
ネットワーク構造やその生成メカニズムに関する推定が様々な分野で行われている.そのランダムネスを評価する方法や可視化について議論したい.たとえば,遺伝子発現データから推定した制御ネットワークやクラスターがどの程度信頼できるかを評価したり,既知のソーシャルネットワークの構造を生成するような確率モデルの統計的推定を扱う.

1500-1530 コーヒーブレイク

1530-1630 パネル討論「応用トポロジーの可能性 ? 工学・農学から医学まで」
司会:鈴木貴
パネラー:四方義啓(名古屋大学名誉教授)平佐知典(鹿児島大学理工学研究科)後藤明輝(秋田大学医学系研究科)

主催:日本応用数理学会数理医学研究部会
責任者:鈴木貴(研究部会主査)
事務担当:井内裕子 iuchi@sigmath.es.osaka-u.ac.jp
     参加者はメールにて事前登録して下さい
(井内宛にお名前・所属・参加日をご連絡下さい)
運営責任者
  • 鈴木 貴
情報更新日 2013/04/22