数学・数理科学と共に拓く豊かな未来 数学・数理科学と諸科学・産業の恊働による研究を促進するための「議論の場」を提供
項目 内容
研究集会等の名称 確率的グラフィカルモデルの産業界への応用
採択番号 2016W10
該当する重点テーマ ビッグデータ、複雑な現象やシステム等の構造の解明 、疎構造データからの大域構造の推論 、最適化と制御の数理
キーワード 因果推論 、ベイジアンネットワーク 、潜在クラスモデル
主催機関
  • 人工知能学会
  • 産業技術総合研究所人工知能研究センター
運営責任者
  • 鈴木 譲
開催日時 2016/11/10 00:00 ~ 2016/11/11 00:00
開催場所 数学協働プログラム
確率的グラフィカルモデルの産業界への応用
http://industry.bayesnet.org
2016年11月10日(木)-11日(金)
慶應義塾大学日吉キャンパス 2016年度 人工知能学会合同研究会
最終プログラム

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数学協働プログラム
確率的グラフィカルモデルの産業界への応用
2016年11月10日(木)-11日(金)
慶應義塾大学日吉キャンパス 2016年度 人工知能学会合同研究会
主催: (社)人工知能学会、(独)産業技術総合研究所 人工知能研究センター(AIRC)
協賛: 人工知能学会基本問題研究会
実行委員会: 鈴木譲(委員長、阪大)、植野真臣(電通大)、本村陽一(AIRC)、磯崎隆司(ソニーCSL)、河原吉伸(阪大)

11月10日(木) プログラム

9:15-9:20 鈴木譲(阪大) 開催趣旨・本日の予定
9:20-10:00 本村陽一(AIRC) 基調講演:「ビッグデータを活用した確率的潜在構造モデリングと次世代人工知能技術への応用」
Part 1: 人工知能の飛躍にむけて (司会: 磯崎隆司)
10:00-10:40 武田秀樹 (FRONTEO) 「機械学習をコアバリューとしたビジネスアプリケーション」
(10分休憩)
11:50-11:30 山川宏 (ドワンゴ) 「汎用性の創発を脳に学ぶ」
11:30-12:10 森永聡 (NEC) 「ビッグデータ分析事業の四つの波」
12:10-12:50 加藤典司 (富士ゼロックス) 「非構造化データを対象とする知的情報処理」
Part 2: 確率的グラフィカルモデルの実践 (司会: 本村陽一)
14:20-15:00 佐藤泰介 (AIRC) 「確率プログラミング言語へのいざない」
15:00-15:25 佐藤匡 (ビットフォレスト) 「ウェブアプリケーションファイアウォール(WAF)サービスにおけるベイジアンネットワーク実用事例」
15:25-15:45 野守耕爾(有限責任監査法人トーマツ) 「データマイニングにおける人工知能技術の応用とその設計の検討 ~確率的グラフィカルモデルでテキストデータはこんなに価値が出る~」
15:45-16:05 ◯安松健(オージス総研) 、坂本和夫(広島大学)、道田 奈々江(マツダ)、櫻井瑛一(AIRC)、本村陽一(AIRC) 「行動観察と確率的グラフィカルモデリングによる顧客理解技術~コトづくりのための実践~」
16:05-16:25 豊田俊文(東急エージェンシー) 「産総研人工知能技術コンソーシアム ~ AIツールの活用と実践のための共創アプローチ~ 」
(10分休憩)
Part 3: パネル討論: グラフィカルモデルは、データ分析の主役になりうるのか (司会: 鈴木譲)
16:45-17:45 鈴木(司会)、本村、森永、山川、加藤、佐藤泰介、佐藤匡

11月11日(金) プログラム

Part 4: R言語ハンズオン
9:10-10:30 鈴木譲 「R パッケージJ2BN 一 ベイジアンネットワークの構造学習 一」
(10分休憩)
11:50-11:30 廣瀬慧 (九大) 「Rパッケージ fanc --グラフィカルツールを用いた新たな因子分析--」
参加者数 数学・数理科学:50、 諸科学:50、 産業界:200、 その他:50
当日の論点

 確率的グラフィカルモデルは、ベイジアンネットワーク、マルコフネットワークといった 変数間の依存関係を表現するグラフとして定義される。通常の統計学や機械学習では、通常は1個または2個の変数の振る舞いを扱う。確率的グラフィカルモデルは、(巡回のない)有向または無向のグラフで、一般の複数の変数の振舞いを扱うので、自由度が大きくなり、より広い範囲に応用されるように思われがちだが、実際には、必ずしもそうなってはいない。

 今回の主要なテーマは、「確率的グラフィカルモデルを、いかにして大学の外に出していくか」ということにある。技術が大学の外に出れば、企業からのニーズが高まり、研究費やポストの数も増えていく。そういう方向にカジを切るにはどうすればよいかということになる。 



研究の現状と課題(既にできていること、できていないことの切り分け)

 まず、変数の個数が大きくなると、データから知識を学習するいわゆる学習(設計)段階、知識と 一部の変数の観測値からそれ以外の変数の分布を計算する推論(運用)段階のいずれのフェーズにおいても、変数の個数に対して指数的な計算量が要求される。極端な言い方をすると、 何らかの近似がないと、まともに動かないといっても、過言ではない。

 もう一つは、数学的に難しく、理解するのに敷居が高いということがある。たとえば、ベイジアンネットワークでも、人工知能の研究者で、理論を完全に理解している人は少なく、だましだまし応用している人が多い(挙動を理解していなくても、性能を実験的に評価するとか)。 人工知能全体からすれば、確率的グラフィカルモデルは 道具にすぎないという考えは、ある意味オーソドックスであるかもしれない。

 さらにあげると、ベイジアンネットワークを使おうにも、スクラッチでシステムを構築することは不可能に近く、研究者でない限り、 ひな形やツールのようなものがないと、断念せざるを得ないように思われる。



 

新たに明らかになった課題、今後解決すべきこと

  初日は、本村陽一氏(AIRC)の基調講演を皮切りに、「Part 1: 人工知能の飛躍にむけて」では一般の人工知能の各分野でご活躍の方々、「Part 2: 確率的グラフィカルモデルの実践」では確率的グラフィカルモデルでご活躍の方々からお話を伺った(いずれも、大学の研究者以外の方々、写真左は、佐藤泰介氏(東工大名誉教授、AIRC)の講演)。また、その後に行った講演者によるパネルディスカッション「Part 3: パネル討論: グラフィカルモデルは、データ分析の主役になりうるのか」は、非常に盛り上がった。ディープラーニングが学習の入出力をブラックボックスとしてとらえるのに対して、確率的グラフィカルモデル(probablistic graphical modesl, PGM)は、シンボリックな情報の流れ、すなわちホワイトボックスとしてとらえている。たとえば、学習に不具合が生じた場合に、その原因を特定したり、再調整しやすい。その意味で、PGMはまだ存在する意味が少なからずあるのではないか(パネルディスカッションでの議論)。

 2日目は、鈴木譲氏(大阪大学)、廣瀬慧氏(九州大学)による、確率的グラフィカルモデルのハンズオンを行った。学会の研究会でハンズオンというのは、あまり例がないように思われるが、熱心な方が多数参加されていた。

今後の展開・フォローアップ

1. 2015年3月に開催した数学協働プログラム「確率的グラフィカルモデル」の講義録が、2016年7月に共立出版から同じタイトルで発行された。同様の講義録を今回の「確率的グラフィカルモデルの産業界への応用」に関して、もしくは2日目のハンズオンに限定して出版する予定である(そのような交渉をしている)。

2. 今回は産業界の参加者が大半であったが、アカデミックの参加者を対象に、2017年9月20日から22日にかけて、AMBN-17(Advanced Methodologies for Bayesian Networks)という国際会議を京都で開催する。

3. 該当分野の、特に非研究者を対象としたハンズオンや事例紹介などのイベントを開催する予定である。