数学・数理科学と共に拓く豊かな未来 数学・数理科学と諸科学・産業の恊働による研究を促進するための「議論の場」を提供
項目 内容
研究集会等の名称 政治・社会事象の数的分析に関するスタディグループ
採択番号 2016S05
該当する重点テーマ ビッグデータ、複雑な現象やシステム等の構造の解明 、過去の経験的事実、人間の行動等の定式化
キーワード 数理モデル 、偶発性 、データ分析 、確率過程論 、最適化 、キーワード抽出
主催機関
  • 明治大学政治制度研究センター
運営責任者
  • 小森 雄太
  • 西川 伸一
開催日時 2016/10/01 00:00 ~ 2016/12/31 00:00
開催場所 明治大学駿河台キャンパス(東京都千代田区神田駿河台1‐1)
2016年10月23日:アカデミーコモン9階309E教室※会場変更となりました
2016年12月23日:グローバルフロント3階4031教室
最終プログラム

1回会合(明治大学政治制度研究センター主催)

日時:20161023日(日)1000分~1700

会場:明治大学駿河台キャンパスアカデミーコモン9309E教室

当日スケジュール:

ワークショップ①(1000分~1200分)(公開)

1000分~1045分 開会挨拶・趣旨説明

小森雄太(明治大学政治制度研究センター)

1045分~1105分 課題提示①「数理政治学と計量政治学」

笹岡伸矢(広島修道大学法学部)

1105分~1125分 課題提示②「現在進めている研究について」

森本孝之(関西学院大学理工学部)

1125分~1145分 課題提示③「政策決定をめざした数理科学的アプローチ」

高田宗樹(福井大学大学院工学研究科)

1145分~1200分 課題取りまとめ

五條理保(明治大学政治制度研究センター)

 

ワークショップ②(1300分~1700分)(非公開)

1300分~1430分 論点整理

1445分~1615分 課題検討①・課題検討②

1630分~1700分 課題取りまとめ・閉会挨拶

小森雄太(明治大学政治制度研究センター)

 

2回会合(主催:明治大学政治制度研究センター、形の科学会)

日時:20161223日(金・祝)1430分~1800

会場:明治大学駿河台キャンパスグローバルフロント3階4031教室

当日スケジュール:

ワークショップ③(1430分~2000分)

1430分~1435分 開会挨拶

西川伸一(明治大学政治制度研究センター)

1435分~1505分 課題提示④「前カントールバーにおける電磁波の透過率とそのスケーリング則について」

海野啓明(元仙台高等専門学校)

佐藤亮太((株)日立アドバンストシステムズ)

園田 潤(仙台高等専門学校)

1505分~1515分 休憩

1515分~1610分 統計数理研究所数学協働プログラム「政治・社会事象の数的分析に関するスタディグループ」趣旨説明・成果報告

小森雄太(明治大学政治制度研究センター)

1610分~1620分 休憩

1620分~1640分 課題提示⑤「学術的知見の応用可能性に関する一考察―沿岸域総合管理を事例として―」

五條理保(明治大学政治制度研究センター)

1640分~1800分 統計数理研究所数学協働プログラム「政治・社会事象の数的分析に関するスタディグループ」研究総括

(進行)西川伸一(明治大学政治制度研究センター)

 

ワークショップ④(1800分~2000分)

1800分~2000分 実務会合(数学協働プログラム参加者のみ)

参加者数 数学・数理科学:10、 諸科学:5、 産業界:5、 その他:5
当日の論点

 ワークショップにおいては、後述の課題①②③④に関する検討を行うとともに、分析対象や分析手法の選定に注力していたこれまでの取り組みを踏まえ、これまでの調査研究において主たる分野であった政治学や歴史学の分野における知見を積極的に導入し、当該分野における批評に耐えうる知見の析出を目指すことを確認した。そのため、本研究においては、当該分野における気鋭の研究者を招聘した実施体制の構築を図るとともに、来年度以降は戦中期における金融政策の実体解明の一環として、1940年に中国大陸に設置された中央儲備銀行による金融政策の実体に数理科学の観点から接近することを確認した。

 また、これらの論点に基づく検討の成果を現代的な課題の解決に寄与させる重要性も指摘され、20世紀後半以降、世界各国で取り組まれている沿岸域総合管理における数理科学の可能性に関する検討も実施するとともに、これらの取り組みに貢献しうる技術の検討についても実施した。

研究の現状と課題(既にできていること、できていないことの切り分け)

 本研究の一環として実施したワークショップなどを通じて、下記の課題が明らかとなった。

課題①(政治・社会情勢(戦況なども含む)判断の解明):中央儲備銀行による当時の政治・社会情勢の判断の実態解明が本研究の最重要課題であることを踏まえ、ある程度実施されている先行研究に基づく歴史的な分析と併せて、資料解析により得られるデータを整理し、ベイズ確率などによる不確実性の定量化を図り、中央儲備銀行による当時の政治情勢がどのように判断されたのかを明らかにすることが課題として挙げられる。

課題②(金融政策決定(検討過程も含む)の解明):中央儲備銀行の設立背景として、汪兆銘政権による正統性誇示以外にも、当時日本が占領していた華北・蒙疆地域において経済上の統治が進んでいなかった状況を巻き返すための方策としての側面も有しており、高度な金融政策に基づく取り組みであったことは、先行研究においてある程度解明されている。そのため、先行研究で明らかになっている当時の資金動向を整理し、階層分析法やラプラス基準、ミニマックス・リグレット基準などによって策定された最善策と実際に行われた金融政策との比較分析を行い、金融政策がどのような観点から検討・確定されたのかを明らかにすることが課題として挙げられる。

課題③(金融政策によって生じた結果の分析):中央儲備銀行の成立から崩壊までの変遷において、日本の勢力縮小に伴う発行紙幣(儲備券)の信用低下やハイパーインフレといった現象が発生している一方、日本の勢力が拡大していた1942年頃まで、汪兆銘政権の中央銀行として金融政策を実施し、ある程度の成果を収めていた。そのため、中央儲備銀行による金融政策について、効用関数、一対比較法によるアプローチなどによって分析・評価を行い、金融政策が当時の政治・社会情勢にどのような影響を与えたのかを明らかにすることが課題として挙げられる。

新たに明らかになった課題、今後解決すべきこと

 上記【研究の現状と課題(既にできていること、できていないことの切り分け)】を踏まえ、今後は下記の課題に取り組むべきとの結論に至った。

課題④(仮説モデルの構築):本研究の実施を通じて、上記3つの課題に取り組むことの必要性を指摘することが可能となったが、これらの課題に取り組むことによって得られた知見をもとに、金融政策を分析するための仮説モデルを構築することが今後解決すべきことであるという結論に至った。そのため、今後の本研究においては、ランダム要因を含むシステムの時間的変動の様子を表すことができる確率過程モデル(マルコフ連鎖モデル、エントロピーモデル、チャップマン–コルモゴロフ方程式など)によるアプローチを行い、仮説モデル構築を図ることが望ましいと思料される。

 また、上記の課題に対応するために、第1回会合(ワークショップ①:1023日開催)以降の取り組みとして、ワークショップ②を開催し、ワークショップ①で提示された検討課題や分析手法を踏まえ、本研究において取り組むべき課題における論点の整理を行った。その結果としては、本研究において具体的に取り扱う分析対象と方法論を確定したことが挙げられる。

今後の展開・フォローアップ

①文部科学省科学研究費助成事業への応募:本研究の新規性や既存の関連諸分野(政治学や数理科学を含む)への波及性を踏まえ、本研究の研究成果をより発展させるため、平成28年度に新設された文部科学省科学研究費助成事業(学術研究助成基金助成金(挑戦的研究(開拓))に応募した(現在審査中)。

②形の科学会との共催企画の実施:本研究において取り組むべき課題の具体化や分析視角の多様化を図るため、形の科学会(日本学術会議協力学術研究団体)との共催企画(かたちシューレ2016)を開催した。