数学・数理科学と共に拓く豊かな未来 数学・数理科学と諸科学・産業の恊働による研究を促進するための「議論の場」を提供
項目 内容
研究集会等の名称 産業界からの課題解決のためのスタディグループ
採択番号 2016S04
該当する重点テーマ 計測・予測・可視化の数理 、最適化と制御の数理
キーワード 結晶構造 、幾何構造 、逆問題 、数値アルゴリズム
主催機関
  • 東京大学 大学院 数理科学研究科
運営責任者
  • 山本 昌宏
  • 河野 俊丈
開催日時 2016/12/12 10:30 ~ 2016/12/16 18:00
開催場所 東京大学 大学院 数理科学研究科
最終プログラム

課題提供は花王、東和精機、武田薬品工業によってなされ、プログラムは以下である:
12月12日(月)10:30-12:10:参加企業からの課題の説明 
12月12日午後-12月16日(金)午前:各参加企業ごとにグループに分かれて解決に向けたワークを行った。ワークの主体は院生、若手のポスドクで、各グループごとに本研究科の特任助教らがコーディネーターとして議論のとりまとめなどや記録の管理などを行った。
12月16日14:00-16:00:得られた成果の報告会。課題を提示した企業からの成果の評価および共同研究も含めた今後の活動の討議を行った。

参加者数 数学・数理科学:29、 諸科学:2、 産業界:6、 その他:0
当日の論点

東和精機 「全自動歪取機の計測アルゴリズム及びプレス制御の改良」:

これまでのスタディグループにおいて検討した成果を実機に投入しある程度の成果を収めているが、いまだ万能とは言えず完全に歪を取りきれていない事例がある。そこで、計測アルゴリズムの確立とともにプレス制御方法を確立することを目的として、歪取の精度の向上を目指した。

武田薬品工業株式会社「熱拡散方程式予測モデルの適用拡大に伴う諸課題」:

熱拡散方程式による予測モデルは幅広く活用されており、適用場面拡大に伴い現行手法の問題点も明らかとなった。そこで、抜本的なアプローチを含めて改良を図り、新しいニーズにも的確に応えられる新手法の創出を目指した。

花王株式会社「重心動揺の解析」:

人の重心動揺を記録し、めまい等の疾病判定をする医療機器が重心動揺計である。近年は高齢者の転倒予測の面からも利用されているが、それは「ふらつきが大きいなら転倒し易い」と言う経験的推論で重心移動の振れ幅や総軌跡長以外は論じられない.前年度のスタディグループにおいて、この軌跡の数理モデル構築を議論し当初の予想と違う多くの発見が示唆された.今年度は転倒予防への応用の視点から、転倒に至るモデル構築やそれに基づいた転倒リスク値算出などを議論した。

研究の現状と課題(既にできていること、できていないことの切り分け)

東和精機:歪の計測アルゴリズムはある程度実機に即してできている。計測された歪量に応じて、最適のプレスで押す制御のリアルタイムでの設計が未完成であった。

武田薬品工業:熱拡散方程式を利用した予測モデルについては基本的な場合は完成している。しかし、製薬プロセスに特化したカスタマイズと改良が不十分であった。

花王:重心動揺計で記録された重心の移動の軌跡について、支配方程式として常微分方程式を想定して数理モデル構築についての議論を行い、一定のモデルは構築済みである。そこでのモデルは転倒までを完全に含んだモデルではなく転倒直前までの軌跡のモデルであった。そこで、転倒予防への応用の視点から、転倒に至るモデル構築やそれに基づいた転倒リスク値算出などがまだできていない。

新たに明らかになった課題、今後解決すべきこと

東和精機:プレスをリアルタイムで実行し、押しすぎ(オーバーシュート)を防止するための制御法が新たに提案された。今後の課題は実機での検証と断面形状が複雑な場合の歪計測の改善方法である。

武田薬品工業:製薬プロセスの具体例での熱拡散方程式による予測モデルの検証が今後の課題である。

花王:非線形常微分方程式の解の有限時刻での爆発現象により転倒を解釈すること。数値シミュレーションの実行や重心の軌跡からの転倒リスクの算出法が今後の課題として浮かび上がった。

 

今後の展開・フォローアップ

東和精機:引き続き、定期的に参加者と同社の工場での議論継続

武田薬品工業:当面、提案された手法を社内で検討する見込み

花王:フォローアップの研究会を予定している。