数学・数理科学と共に拓く豊かな未来 数学・数理科学と諸科学・産業の恊働による研究を促進するための「議論の場」を提供
項目 内容
研究集会等の名称 次世代産業の数理
採択番号 2016S03
該当する重点テーマ 疎構造データからの大域構造の推論 、最適化と制御の数理
キーワード 流体力学 、制御理論 、最適化 、キーワード抽出
主催機関
  • 名古屋大学大学院多元数理科学研究科
運営責任者
  • 大平 徹
  • 木村 芳文
開催日時 2016/11/30 13:00 ~ 2016/12/09 17:30
開催場所 名古屋大学大学院多元数理科学研究科
最終プログラム


スタディグループ:
一日目 (11月30日水曜日)
○課題提言講演 13:00-16:00
1 次世代民間航空機の数理 (三菱重工業株式会社)


2 情報コンテンツ評価と提供の数理 

(a) 「ウェブマーケティングの現状と顧客ニーズ」(アイスタイル株式会社)

(b)「被リンクによるウェブページスコアリング」(アリッツ株式会社)

(c) 「機械学習によるコンテンツスコアリングの試み」(株式会社ぺあのしすてむ)


○検討討議:16:00 – 17:00(モデレーター:参加企業との協議の上、スタディグループ経験者および有識者から選考する。)  
1. 数学的問題の掘り起こしと整理
2. グルーピング(ヘッドの選定)と到達目標の設定と作業工程表の作成
3. 数学としての問題の提案、目標と工程表の発表 


二日目 (12月8日木曜日:学生・教員・関係者のみ参加可能)
企業人よりのアドバイスを受けての参加者による具体的課題のチーム討議と作業シミュレーション
13:00-14:00 目標の確認と作業工程実施
14:00-17:00 数学的問題の妥当性の検討、目標までの進行状況の確認

三日目(12月9日金曜日:学生・教員・関係者のみ参加可能)
13:00 - 16:15 作業工程実施、成果発表に向けてのコーディネイト

成果発表会(関係者以外は11月30日までに事前のコンタクト必要)

12月9日
16:30 - 17:30 グループ毎の成果発表、成果の確認と全体での議論、残された問題の整理と今後の展望の議論

参加者数 数学・数理科学:35、 諸科学:2、 産業界:10、 その他:2
当日の論点

11月30日の課題提言講演では(1)三菱重工業による航空機開発に関する数理的な課題、及び(2)アイスタイル、アリッツ、ぺあのしすてむ、の3社による、発信力のあるWeb コンテンツ作成に関わる数理的な課題、の2つの提言がなされた。前者においては航空機開発でも特に空力と関連しての流体力学からの課題が出された。主翼のデザインなどによる空気の流れをナビエ・ストークス方程式を解くことで行うが、これを効率よく計算することが具体的な課題である。これには方程式自身を時間・空間方向に並列計算可能な形に分割する点、そして、その分割計算を効率良くおこなう並列計算機場での負荷分散の点の両方が必要となることが明らかにされた。後者においては、発信力のあるウエッブページの作成を顧客より依頼された時に、望ましい方向を検索エンジンで関連するキーワードが入力された時になるべく上位にくることを目指すために必要な数理的な課題である。グーグルなどの検索エンジンのランクづけのアルゴリズムは公開されていないので、これを推定する数理的な手法が課題となる。ここでは学習アルゴリズムを用いて、サンプルのデータによる学習が、一般のサイトに汎化能力を持つかどうかが具体的に議論がされた。目的としては、ある程度高速でかつ、ウェッブサイトに含まれる関連単語から上位にランクされる要素を抽出し、作成デザインに生かすことと議論された。

研究の現状と課題(既にできていること、できていないことの切り分け)

講演会後の討議と12月8日、9日の両日において、上記の2つの課題について部屋を分かれて探究した。前者(1)においては特に並列化された後の不可分散を非均一な処理能力をもつCPUからなる並列計算機で行う場合の数理的な課題についての議論が行われた。ここにおいては一般的な非均一性を扱うことは限られた時間では困難だあるために、2次元正方行使で中心部分から周囲に向けて対象に処理能力が落ちるようなシステムに置いて、具体的な負荷分散アルゴリズムを構築するに至った。後者(2)においては、ニューラルネットなどを用いた学習アルゴリズムを複数用いて、与えられたウエブサイトの文言から、そのサイトが上位、もしくは下位のどちらに分類がされるかという実際の結果を予測するという探究を、実際にアルゴリズムを組んで、数値実験を行なった。いくつかのアルゴリズムにおいては効率良く学習が行えることが確認できた。一方では、与えたキーワードに類似する単語の距離を測るような、システムの紹介も行われた。この二つを組み合わせて、効率的なウェブサイトデザインシステム構築への道筋がある可能性が議論された。

新たに明らかになった課題、今後解決すべきこと

上記の2つのテーマについて、今回の会合で得られた結果は部分的であり、下記のような課題が明らかとなった。(1)においては、より一般的な非均一性を持つ並列計算資源に対する負荷分散のアルゴリズムの提案が大きな課題として残っている。これは計算機科学などでも探求されている問題でもあり、困難はあるが、今回議論の結果生まれたアルゴリズムなどを土台にしたアプローチが発展できないかを考えるのは有為である。(2)については学習のアルゴリズムの評価を行うことが出来た。しかし、学習の課程で使われなかった一般のウエッブサイトの内容においては、必ずしも明確な良否の判定ができない可能性も示唆された。これについては学習アルゴリズムにかける前に、事前の処理をするフィルターを作る必要などが考えられる。具体的なウェブサイトデザイン・サービスにつなげられる可能性も示されたが、これを具体化するのが課題である。

今後の展開・フォローアップ

両テーマとも、今後も会社訪問や人的な交流ができるような方向を探りたい。特に後者のテーマについては、実際のサービスに結び付けられるかなどの展開について適宜意見交換なども勧めていきたい。