数学・数理科学と共に拓く豊かな未来 数学・数理科学と諸科学・産業の恊働による研究を促進するための「議論の場」を提供
項目 内容
研究集会等の名称 数学イノベーションと社会の協調
採択番号 2016S02
該当する重点テーマ ビッグデータ、複雑な現象やシステム等の構造の解明 、過去の経験的事実、人間の行動等の定式化 、リスク管理の数理
キーワード 保険数理 、データ分析 、オープンイノベーション
主催機関
  • 大阪大学 数理・データ科学教育研究センター
運営責任者
  • 鈴木 貴
  • 宮西 吉久
開催日時 2016/09/20 13:00 ~ 2016/09/24 16:00
開催場所 大阪大学豊中キャンパス I棟 I204

会場へのアクセスは
http://www-mmds.sigmath.es.osaka-u.ac.jp/structure/helpdesk/access.php
最終プログラム

【参加団体】

(株)DENSO

課題:脈波センサを使った体動時脈拍数の検出(と脈波形状の復元)

概要:リストバンド型脈波センサを使った脈波数を、体動(特に腕の動き)情報を活用し正確に検出する為の分析を行う。更に体動によって崩れた脈波を体動成分が含まれない元の形状の復元を試みる。

 

 大阪大学 産学連携本部 イノベーション部

課題:若手研究者のアカデミア就職に関連するパラメータの同定

概要:大学院修了生や教職員のデータをもとに、アカデミア就職に関連するパラメータの同定をおこなうことにより、アカデミア就職に必要となるファクターを分析する。

 

【プログラム】

9月20日(火)13:00~14:00 I棟204号室(一般公開)

      センター長(鈴木貴 教授) 挨拶, 趣旨説明

      参加団体(DENSO, 大阪大学 産学連携本部 イノベーション部)より課題提示・説明

      ワーキンググループ(清野健 准教授グループ、田中冬彦 准教授グループ)結成

 

9月20日(火)14:00 ~ 9月24日(土)午前 I棟204号室、J棟714号室   

      各ワーキンググループが、課題解決に向け議論

 

9月24日(土)14:00~16:00(一般公開)   

      各グループ代表者が、議論内容や結果を発表

      センター長(鈴木貴 教授)が全体を総括、基礎工学研究科産学連携室室長(和田成生 教授)による講評

       (24日終了後、1時間程度の交流会)

参加者数 数学・数理科学:31、 諸科学:9、 産業界:4、 その他:1
当日の論点

課題:若手研究者のアカデミア就職に関連するパラメータの同定

大学院修了生や教職員のデータは膨大にあり、これらのすべてを分析することは時間的に困難と判断。そこで、経済指標のように博士課程修了者の幸福度指標を算出して検討することを提案。各研究科ごとに正規雇用・非正規雇用の比率と博士課程修了までの平均年数(平均超過年数)を集計。研究科や年度による違いがあるかどうか分散分析を行うこととした。

 

課題:脈波センサを使った体動時脈拍数の検出(と脈波形状の復元)

1. 脈波ピークの検出アルゴリズムについて リストバンド型脈波センサにより計測された信号時系列から脈波ピークを検出するためにどのようなアルゴリズムが有効かを検討する.さらに,脈波信号のみの分析により脈波ピークの検出精度を向上させる方法についても検討する必要がある.

2. 体動による脈波信号の変形について 体動により脈波信号がどのように変化するのかを明らかにする必要がある.

3. 加速度センサからの体動情報を脈波分析に役立てる方法について 体動情報を利用して脈波ピークの検出精度を改善する方法を検討する.運転時の脈波形状についても分析可能かどうかを検討する.

研究の現状と課題(既にできていること、できていないことの切り分け)

課題:若手研究者のアカデミア就職に関連するパラメータの同定

1.平均超過年数  研究科・年度による統計的に有意な違いはみとめられなかった。

2.正規雇用率  理工系研究科や、医歯薬系研究科ごとに特徴があるものの、全体として緩やかに減少していることが明確にみてとれた。 ※ただし、アンケートの回収率が年度によって大きく違う。また、文系の研究科は母数が少ない。 今回利用可能なデータは2009年~2012年までであり時系列分析ができていない。また、修士修了者や教職員のデータでの分析や、2について、アカデミア職に限定した幸福度指標の詳細な定義なども今後の課題である。

 

課題:脈波センサを使った体動時脈拍数の検出(と脈波形状の復元)

1. 脈波ピークの検出アルゴリズムの開発 時間領域での脈波ピーク検出のため,Savitzky-Golayフィルタを用いた平滑化と数値微分を用いたアルゴリズムを開発した.この方法は,安静時の脈波ピークを高精度に検出できたが,体動がある運転模擬時には検出精度が低下した.また,短時間フーリエ変換を用いた周波数領域での脈波ピーク間隔(瞬時心拍数)の推定アルゴリズムも開発した.このアルゴリズムでは高調波成分を主に検出することで脈波ピーク間隔を推定した.この方法では,時間解像度は時間領域の方法に劣るものの,体動がある運転模擬時でも高精度に脈波ピーク間隔が推定できた.  時間領域での脈波ピーク検出アルゴリズムにおいて,加速度に依存した周波数可変フィルタを検討したが,完成には至らなかった.今後,効果的な周波数可変フィルタを設計する必要がある.

2. 体動と脈波信号の関係  体動発生時には脈波形状が大きく乱れ,心拍動とは無関係な擬似ピークが生じることがわかった.さらに,クロススペクトルに基づくコヒーレンス分析により,加速度と脈波信号の関係を調べた結果,加速度信号にも脈動成分が存在することが分かった. 脈波の異常波形の検出法についても検討した.脈波ピークでの高次微分係数の利用,さらには,脈波のパターンマッチングにより,異常波形を検出できた.また,加速度の情報も異常波形の検出に有効であった.今後,被験者実験を重ね,これらの方法の有効性を評価する必要がある.

3. 脈波形状の分析 脈波の同期加算波形を求めるプログラムを作成した.このプログラムでは,脈波の異常形状を除外する条件を組み込んだ.その結果,体動がある条件でも異常波形を除外し,もっともらしい脈波形状を算出できた.えられた脈波形状をより詳しく理解するために,指尖容積脈波とリストバンド位置での脈波波形の関係を明らかにする必要がある.

新たに明らかになった課題、今後解決すべきこと

課題:若手研究者のアカデミア就職に関連するパラメータの同定

データの分析以前に、分析目的に沿ったデータの収集が重要であることが明確になった。 ・アンケート項目を固定して継続的に収集(現状は、年度ごとに差異があり年数も少ない) ・欠損、未回答に関する情報も提示(現状は、未回答の件数が不明)

 

課題:脈波センサを使った体動時脈拍数の検出(と脈波形状の復元)

脈波ピークの検出に用いるパラメータ値は,実験条件や被験者に依存して調整する必要がある.そのため,パラメータを効率的に最適化するアルゴリズムを開発する必要がある.今後,多くの被験者を対象に様々な環境条件で実験を行い,今回開発したアルゴリズムの有効性を検証する必要がある.

今後の展開・フォローアップ

課題:若手研究者のアカデミア就職に関連するパラメータの同定

今回の分析の結果、本課題の目的達成のためには、データの収集や提示方法などを見直す必要があることがわかった。必要に応じて(個人情報を削除するなどして)研究目的で利用できるようにするといった、データ分析のための利用環境を整備することが不可欠である。

 

課題:脈波センサを使った体動時脈拍数の検出(と脈波形状の復元)

実用上,リアルタイムでの心拍数検出が必要である.そのため,計算アルゴリズムの高速化についても検討する必要がある.さらに,脈波情報を健康管理に活かすため,生体情報の解析法についても開発する必要がある.