数学・数理科学と共に拓く豊かな未来 数学・数理科学と諸科学・産業の恊働による研究を促進するための「議論の場」を提供
項目 内容
研究集会等の名称 第6回数学・数理科学のためのキャリアパスセミナー
採択番号 2016C03
該当する重点テーマ ビッグデータ、複雑な現象やシステム等の構造の解明 、過去の経験的事実、人間の行動等の定式化 、計測・予測・可視化の数理 、リスク管理の数理 、最適化と制御の数理
キーワード 人材育成 、産学協働
主催機関
  • 日本数学会社会連携協議会
運営責任者
  • 前田 吉昭
開催日時 2017/03/24 14:00 ~ 2017/03/24 15:30
開催場所 首都大学東京12号館105号室(日本数学会2017年度年会会場)
最終プログラム

14:00-14:05開会挨拶
  日本数学会理事長
  東北大学大学院理学研究科 教授 小谷元子
14:05-14:35  講演1
  題目:現象数理学が拓く数学・数理科学者の新しい活躍の場
  講師:明治大学先端数理科学インスティテュート 特任教授
     杉原厚吉氏
14:35-15:20 講演2
  題目:「純粋数学が築く最先端心臓シミュレータの実用化への挑戦」
  講師:富士通株式会社 ヘルスケアシステム事業本部 
     エグゼクティブリサーチャー
     熊本大学名誉フェロー
     門岡 良昌氏
15:20-15:25 報告
   数学・数理科学専攻若手研究者のための異分野・異業種研究交流会2016
 報告者:日本数学会社会連携協議会 幹事
     東北大学知の創出センター 副センター長
     前田 吉昭
閉会挨拶
    社会連携協議会 副会長
    東京大学大学院数理科学研究科 教授 坪井俊

参加者数 数学・数理科学:50、 諸科学:2、 産業界:1、 その他:1
当日の論点

1. セミナー開催の趣旨

数学・数理科学を活用した異分野融合研究は高度化社会において大きな期待をされている。それに応えるために、数学・数理科学の若手研究者の社会への輩出を目指して、人材育成教育や企業での実際の数学・数理科学を活用した研究開発を紹介することを目的にしている。

2.講演の概要

【講演1】 現象数理学が拓く数学・数理科学者の新しい活躍の場

 明治大学先端数理インスティテュート特任教授 杉原厚吉氏

この講演では、数学・数理科学を活用した異分野融合研究の一つが紹介された。異分野融合を達成するためには、現実の世界での問題を数理モデルとして、定式化を行い、それを数学の問題として解析する。それを現実の問題へとフィードバックすることにより、汎用性の高い応用手法が得られる。これを一つのサイクルとして、次に新しいサイクルへと発展させていく。このようなポジティブなスパイラル的手法が現象数理学の意図することである。現実の問題では、数学として扱えるかどうか分からない問題も多い。自然現象の問題では、支配法則の下で支配方程式を見出せる可能性が高いといえるが、社会問題等では必ずしも支配法則が確立されているというわけではない。しかしながら、そのような問題でも、数学・数理科学を活用するという信念を持ち続ける必要があるということを、ご自身が行っている錯視の研究を例にとり、ここには説明をするのは困難であるが、とてもきれいなビデオを使ってご説明いただいた。

【講演2】純粋数学が築く最先端心臓シュミレータの実用化への挑戦

-数学・数理科学人材への期待-

 富士通株式会社 ヘルスケアシステム事業本部 エクゼクティブリサーチャー

 熊本大学名誉フェロー

 門岡 良昌 氏

 

この講演では、富士通で開発されたスーパーコンピューターの社会へ貢献するアプリケーションとして、どこでもやっていない医学への応用を進めることを選び、心臓シミュレータの開発に携わったことについて、今までから将来へむけた研究についてお話しいただいた。門岡氏は、大学では、多変数関数論に魅せられ、高校教員を希望しており、企業で研究をするなどとは全く考えていなかったこと、そののち、企業へ就職されたことから企業での仕事を通じて、純粋数学の基礎を学んだことが大きな力になっていたことなど、数学から社会へ出ていく若手研究者にとってはとても参考になるお話しであった。同氏は、富士通での入社試験面接のときに、ここでどのようなことをやりたいのかという豊富を聞かれたときに、「富士通のためならなんでもやります」と答えられたことで採用されたという逸話についてもご披露してくださったことは大変印象的であった。

【報告】数学・数理科学専攻若手研究者のための異分野・異業種研究交流会2016

 日本数学会社会連携協議会幹事

 東北大学知の創出センター副センター長

 前田 吉昭氏

 2016年11月に明治大学中野キャンパスで行われた研究交流会(数学協働プログラムが共催となっている)についての報告を行い、数学・数理科学の融合研究や若手人材の企業とのマッチングについて説明を行った。

 

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研究の現状と課題(既にできていること、できていないことの切り分け)

1.現状

 数学研究者の育成を重要な事業の1つとして掲げている日本数学会は、博士後期課程修了者の産業界を含む多様な分野への進路拡大等の戦略的キャリア構築支援事業を積極的に実施している。その一環として、数学・数理科学分野での博士後期課程修了者の進路調査、「数学・数理科学のためのキャリアパスセミナー」や「数学・数理科学専攻若手研究者のための異分野・異業種研究交流会」のようなイベントを実施している。

2.課題

「数学・数理科学のためのキャリアパスセミナー」は、効果的に人材育成を推進するためには、人材育成の当事者である教職員への啓発が重要な課題であった。そこで、昨年に引き続き、教職員に数学の融合研究による人材育成や実際に数学科から企業へ進んだ経験を理解してもらうことを目的とした。

新たに明らかになった課題、今後解決すべきこと

会場では、若手人材の育成の必要性、数学教育プログラム等に

ついての意見があった。数学のキャリアパスを高校生へももっと知らせる必要があるという意見も多く得た。また、企業参加者から、数学会のこのような活動を広めるべきであるという意見もあった。

今後の展開・フォローアップ

1.日本数学会「数学通信」等へ本セミナーの報告を含む人材育成活動の広報

2.前述の課題解決に向けた計画立案

3.数学協働プログラム以降の発展計画立案