数学・数理科学と共に拓く豊かな未来 数学・数理科学と諸科学・産業の恊働による研究を促進するための「議論の場」を提供
項目 内容
研究集会等の名称 自動車業界におけるIT・数理科学技術の活用 ― 豊かな社会を創り出すイノベーションを目指して ―
採択番号 2015W09
該当する重点テーマ 過去の経験的事実、人間の行動等の定式化 、計測・予測・可視化の数理 、最適化と制御の数理 、疎構造データからの大域構造の推論
キーワード 自動車開発 、自動車エンジン制御 、クリーン&高効率モビリティ
主催機関
  • 九州大学マス・フォア・インダストリ研究所
運営責任者
  • 脇 隼人
  • 川邊 武俊
開催日時 2015/12/11 00:00 ~ 2015/12/11 00:00
開催場所 富士ソフト アキバプラザ セミナールーム6階 セミナールーム3
最終プログラム
    • 12:30~ : 開場
    • 12:50~13:00 : 挨拶・趣旨説明・連絡
    • 13:00~13:25 : 武田 一哉(名古屋大学COI拠点) [運転行動のデータ数理的理解]
    • 13:25~13:50 : 農沢 隆秀(広島大学COI拠点) [広島大学COI拠点及び自動車メーカーにおける計算解析技術のご紹介]
    • 13:50~14:15 : 是久 洋一 , 松尾 久人(九州大学COI拠点) [情報社会を結ぶ都市 OS]
    • 14:35~15:00 : 向井 正和(工学院大学) [混合整数計画法を用いた自動車の予測制御]
    • 15:00~15:25 : 松崎 覚(マツダ株式会社) [走る歓びを実現するモデルベース開発と数理的な課題]
    • 15:45~16:10 : 大貝 晴俊(早稲田大学大学院) [北九州における超小型電気自動車を用いた自動運転システムの実用化研究]
    • 16:10~16:35 : 安井 昌男(株式会社 豆蔵) [産学連携の勘どころ]
    • 16:45~17:10 : 藤澤 克樹(九州大学 マス・フォア・インダストリ研究所) [都市 OS 実現のための数理モデルと計算基盤]
    • 17:10~17:35 : 脇 隼人(九州大学 マス・フォア・インダストリ研究所) [境界モデリングの取り組みの紹介]
    • 17:35~18:00 : 議論 & クロージング
  • 詳細は, http://imi.kyushu-u.ac.jp/~waki/ws2015/をごらんください. 
  • ワークショップ風景1211_2
参加者数 数学・数理科学:10、 諸科学:0、 産業界:20、 その他:3
当日の論点

本ワークショップでは自動車業界との産学連携について, 現状と今後について議論した. 目立った発言としては, 産業界と学術側の時間軸のスケールの違いや, 立場・役割に対する認識の違いが産学連携の難しさを生んでいるようであった. COI事業のように, 大型予算・人員でうまくいく面もあれば, 学術側が推進する産学連携に対する個々人の認識の違いから誤解や軋轢が生じることもあり, うまくリードする難しさも議論された. 

 

研究の現状と課題(既にできていること、できていないことの切り分け)

自動車業界との産学連携という大きなくくりではCOI事業における事例だけでなく, 大学教員が個人で行っている産学連携も多くが存在するが, このワークショップではCOI事業における名古屋大学, 広島大学, 九州大学の事例紹介と, 学術側主導の産学連携, 産業界主導の産学連携について講演があった. 機械学習を利用した自動車運転の補助, 京コンピュータを利用した自動車開発, 都市OSの交通流解析機能, 自動運転のための制御技術など, それ単体ではすでに実用レベルに達している事例であったが, 「現実的な環境」における適応がまだできていない, あるいは「人間の能力」と比較した場合, まだそのレベルには達していない状況である. 幾つかの事例では機械学習を利用してこれらを実現していたが, それでもまだ不十分なようである. 

新たに明らかになった課題、今後解決すべきこと

講演の中であったのが「機械学習を利用して, 7~8割はうまく行くがそれ以上はなかなか難しい」という旨の発言である. さらに「機械にルールや文化をどう理解させるか」ということや「自動車開発に適する状況で数理科学技術を適用すると, 京レベルの計算能力が必要になる」といった発言もあった. このように, 明確な課題あるいはどのような数理技術が必要かはわからないが, 解決すべき課題が挙げられた. 

また産学連携を発展させるためには, 学術側の技術と産業界が欲する技術の適切なマッチングが実施できるコーディネータが必要であることも提案された. これは, 数学・数理科学という枠ではなく産業界, 学術界ひいては行政などのレベルで真剣に議論されるべき課題と考えている. 

今後の展開・フォローアップ

産業界からも「数学・数理科学を軸に自動車業界との産学連携」の必要性を強く訴える場面もあり, 今後もこのようなワークショップの開催を検討すべきだと考えている. 一方で, 学術側はあくまで研究・教育がメインでなければならない. そういう意味では, 現在の学術における産学連携の立ち位置は必ずしも産業界が望む体制を取れていない. 産業界, 学術界さらには行政を巻き込んだ真剣な議論が必要である.