数学・数理科学と共に拓く豊かな未来 数学・数理科学と諸科学・産業の恊働による研究を促進するための「議論の場」を提供
項目 内容
研究集会等の名称 細胞システムの理解と制御にむけた幾何学的方法の検討
採択番号 2015W03
該当する重点テーマ ビッグデータ、複雑な現象やシステム等の構造の解明
キーワード 形の科学 、細胞運動ダイナミクス 、時空間ダイナミクス
主催機関
  • 福井大学大学院工学研究科プロジェクト研究センター次世代プロジェクト「数理科学と生体医工学・産業との連携による数学イノベーションの推進エンタプライズ」
  • 福井大学大学院工学研究科プロジェクト研究センター次世代プロジェクト「神経ネットワーク研究プロジェクト」
運営責任者
  • 小西 慶幸
開催日時 2015/12/22 00:00 ~ 2015/12/22 00:00
開催場所 福井大学文京キャンパス アカデミーホール
最終プログラム

 9:40-10:00 (運営委員会)

 予稿集

午前の部                                      

10:00-10:10 開式の辞

 

10:10-10:30 小西慶幸 福井大学・工      

分岐神経軸索の形態制御システム

 

10:30-10:50 堤弘次 北里大学・理

がん細胞の運動制御システムの数理学的理解に向けて

 

10:50-11:10 藤田聡 福井大学・工

微細ファイバーを用いた細胞遊走挙動の解析と制御

 

11:10-11:25 (休憩)  

                                  

11:25-12:05 御橋広真 名古屋大学・名誉教授

細胞内の運動の分子レベルのベクトル法則/細胞形態変化(幾何学)

 

12:05-12:25 <ポスタービューイング>     

                                    

12:25-13:25 (休憩:昼食)

 

午後の部                                    

13:25-13:45 松浦執 東京学芸大学

糸状菌コロニーのパターン選択則のモデル化の研究

 

13:45-14:05 高木隆司 東京農工大学・名誉教授

乱雑信号から秩序構造をどのように抽出するか

 

 

 

 14:05-16:20  [ 協働開催] 「ウェアラブル機器によって得られた医療ビッグデータを利活用するための数理モデルの開発」  ワークショップ  

                                              

16:20-16:35 (休憩)  

                                     

16:35-17:10  [ 協働開催] COC事業「高大連携数理教育」講演会    

            

17:10-17:20  閉式の辞   

 

                                 

17:20-17:50 <フリーディスカッション>

 

 

[連絡先]小西慶幸・福井大学大学院工学研究科・mail:ykonishi(at)u-fukui.ac.jp

参加者数 数学・数理科学:35、 諸科学:30、 産業界:5、 その他:
当日の論点

数理的アプローチにより形の科学を対象とする研究者と細胞生物分野の研究者の討論を介して、未解決の問題に対する数理生命科学のアプローチの検討を試みた。具体的には次の項目が中心的に議論された。

1)      アクチンや微小管の細胞骨格の制御

2)      上記の細胞内空間に依存した多様性

3)      細胞の構造・運動の評価する手法

4)      仮説に基づく細胞形態の数理モデル

細胞生物分野の研究者からは特に細胞の形態や運動制御に関しての解析から得られた細胞システムのモデルが提示され、階層化したシステムに対する数理モデル構築の可能性や問題点が議論された。

研究の現状と課題(既にできていること、できていないことの切り分け)

数理的アプローチからの研究については、反応拡散方程式によるや離散型シミュレーションにより、活性因子や不活性因子の空間的分布に依存した細胞形態の決定を効果的に模倣可能であることが示された。一方、実際の形態の差異も生じ、これが何に起因するのかを特定するのが課題である。

細胞形態や伸長を制御する細胞内システムについては、アクチン・微小管の動態の計測により細胞内の空間に依存した差異や、その制御因子が明らかとなった。また、細胞の足場など外的な要因を制御することにより、細胞の力学的特性の差異を効率よく検出することが可能になった。しかし、階層化した細胞システムの動的な形態の変化に対して数理的モデルを構築するには至っていない。

 

新たに明らかになった課題、今後解決すべきこと

階層化した細胞システムを扱うため複数の数理科学的アプローチを組み合わせる必要があるが、次のような課題があることが明らかになった。

細胞内の個々の領域での構造の制御はそれぞれ解決可能なアプローチがあるが、細胞システムを扱うためにはそれぞれの構造を連結するフィードバックループの形成や消滅の仕組みについての理解を深める必要がある。

外的要因による制限下で細胞システムの計測を行うことが、今回示された以外の状況においても有用か検討する必要がある。

2次元的にモデル化された形状についても3次元的に展開する最には全く新しい要素が関わる可能性があり、細胞システムの数理モデル構築においても留意する必要がある。

これらの課題の解決のために重複する領域の研究者を巻き込み、継続して議論を深めていく必要がある。

今後の展開・フォローアップ

上記の課題を解決するため、細胞システムを構成する各要素についてのモデル化を継続すると共に、研究者間の共同研究を進める。既に今回の演者の間で少なくとも2件は具体的に進行中であるが、さらに関連分野の他の研究者を巻き含め、情報交換を行っていく予定である。このため、主催機関である福井⼤大学⼤大学院⼯工学研究科プロジェクト研究センターの「数理理科学と生体医工学・産業との連携による数学イノベーションの推進エンタプライズ」および「神経ネットワーク研究プロジェクト」を次年度以降も継続し、この支援のもとに集会を行う。また、本会議の講演内容について、その要旨を数学協働プログラムのサイトで閲覧可能とすると共に、本研究会の講演者を中心に国際誌Forma特集号を組むことを計画している。