数学・数理科学と共に拓く豊かな未来 数学・数理科学と諸科学・産業の恊働による研究を促進するための「議論の場」を提供
項目 内容
研究集会等の名称 ウェーブレット理論と工学への応用
採択番号 2015E05
該当する重点テーマ ビッグデータ、複雑な現象やシステム等の構造の解明
キーワード ウェーブレット解析 、音声・画像処理
主催機関
  • 大阪教育大学
運営責任者
  • 守本 晃
  • 芦野 隆一
開催日時 2015/11/11 00:00 ~ 2015/11/12 00:00
開催場所 大阪教育大学 天王寺キャンパス 西館 第 1 講義室
最終プログラム

ワークショップ「ウェーブレット理論と工学への応用」では,広い意味でウェーブレット解析によって解決できるかもしれないと期待できるトピックスに関して,講演者の方々に理論と工学的応用の現状,さらに解決すべき問題を解説していただき,その問題提起を端緒として参加者がディスカッションする形で,ウェーブレット解析が実際にどのように応用されているかをより深く理解することによって,新しい理論と応用への道が開かれることを目指します.

 

詳しいプログラムは,

http://www.osaka-kyoiku.ac.jp/~morimoto/TENWS/ws2015HP/

参照のこと

2015年11月11日(水) 13:30~18:00

1. 溝畑 潔 (同志社大学)

ビッグデータのウェーブレット解析

2.章 忠(豊橋技術科学大学)

方向性ウェーブレット変換及びその医用画像認識への応用

3.新井 康平(佐賀大学)

Waveletを用いる話者分離、画像分離

11月12日(木) 10:00~15:30

4.矢田部 浩平(早稲田大学)

音響信号の時空間周波数領域表現について

5.三村 和史(広島市立大学)

ブーリアン圧縮センシングの観測の性質

6.井川 信子(流通経済大学)

離散定常ウェーブレット解析を用いた聴性脳幹反応の加算波形観察方法について

参加者数 数学・数理科学:14、 諸科学:4、 産業界:、 その他:5
当日の論点

1.今回はニコニコ動画から得られたコメントのデータ(約300GB) の解析のために,Hadoop 完全分散システムを構築し, ビッグデータを処理してからウェーブレット解析を行った.Hadoop 完全分散システムの構築法,日本語特有の処理について,キーワードの選び方等を議論した.

 

2.方向性ウェーブレット変換を提案し,医用画像処理分野に応用した.腫瘤部位の特徴抽出としての提案方法の有効性を確認した.特徴抽出法について,腫瘍部位のでこぼこさに基づく指標(フラクタル次元)等の比較についての質問があった.

 

3.合同エントロピー最大規範に基づくブラインド信号源分離では,各信号源が独立で一般化ガウス分布に従うなら分離できる.音声信号は一般化ガウス分布に従わないが,音声信号を離散ウェーブレット変換した詳細係数は,一般化ガウス分布に従うことが知られている.そこで,詳細係数を用いて分離モデルを構築してから,元の混合音声を分離する方法を紹介した.また,混合画像の分離問題も取り扱った.

 

4.マイクロホンアレイを用いて,音を時間と空間に関する関数として測定できるようになった.音声信号を帯域制限信号だと仮定して,その信号を完全に再構成できるマイク配置やサンプリング時間などを決定したい.そこで,周波数領域において波動方程式の解が存在する錐を表現するために適切な音場の Trefftz 基底による音響信号の時空間周波数領域表現とその応用について議論した.Trefftz 基底が波動方程式の解を表すために,適当かどうか議論した.

 

5.疎行列と非線形関数を用いて定義される非線形符号の距離分布指数を評価した.ブーリアン圧縮センシングへ適用して,その擬最小距離を評価した.観測にノイズが入る場合は,情報源系列に1 が少なすぎても推定が困難になることを示した.より典型的な距離分布を与えると考えられる期待値の極限の評価などが今後の課題である.

 

6.離散定常ウェーブレット解析を用いた聴性脳幹反応の加算波形観察方法について議論した.高速化の方法について議論した.

 

研究の現状と課題(既にできていること、できていないことの切り分け)

1.できていること:Hadoop 完全分散システムの構築法,日本語特有の処理について(不十分),キーワードの選び方(不十分).

できていないこと:より良いキーワードを選び,そのキーワードを使った文章が肯定意見か否定的意見化の判定,ビッグデータの集め方など

 

2.できていること:方向に関する情報を解析できる方向性ウェーブレット変換を用いて,腫瘤部位の特徴抽出がある程度できる特徴記述子を開発した.

できていないこと:よりよい特徴記述子の開発(フラクタル次元などを組み込む?)および,方向性ウェーブレット変換を提案の他分野への応用を考察する.

 

3.できていること:レベル 2 の詳細係数を使うことにより,分離精度が向上する.

できていないこと:音声信号が時間シフトすると詳細係数が大きく変動することを抑制する対策.信号源の数の求め方.観測信号より信号源の数が多い場合の処理.

 

4.できていること:音を時間と空間を変数に持つ関数として,オーバーサンプリングできるマイクロフォンアレイなどの測定機器

できていないこと:Trefftz 基底が波動方程式の解を表すのに適切かどうかなどの理論的な考察

 

5.できていること:非線形符号の距離分布指数を提案し,ブーリアン圧縮センシングへ適用して,その擬最小距離を評価した

できていないこと:より良い最小距離の評価法

 

6.できていること:定常ウェーブレット変換で得られたレベル 5 の詳細係数から,少ない加算回数で速波成分の抽出が可能であり, V 波潜時を求めることができる.

できていないこと:多数の被験者による検証実験と脳波の概形を決定する低周波成分の加算による意味づけなど

新たに明らかになった課題、今後解決すべきこと

1.Hadoop 完全分散システムの構築法のマニュアル化,キーワードの選び方やキーワードを含む文が否定的な意味合いか肯定的な意味合いかを判別したい.

 

2.多くの症例に対して,提案手法を適用すること.腫瘤部位の特徴記述子の改善

 

3.信号源の数の求め方.観測信号より信号源の数が多い場合の処理.

 

4.Trefftz 基底が波動方程式の解を表すのに適切かどうかなどの理論的な考察や,帯域制限を持つ時間・空間変数の関数に対するサンプリング理論の構築

 

5.ブーリアン圧縮センシングに関するより良い距離分布指数を構築することにより,擬最小距離,擬最小距離の最大値,検出限界をより正確に評価したい.

 

6.脳波の概形を決定する低周波成分の加算による意味づけ

今後の展開・フォローアップ

1.カラー版予稿集のホームページ上への掲載.

 

2.ウェーブレットメーリングリストを用いた共同研究の提案.

 

3.応用数理学会のウェーブレット研究部会セミナーなどで講演をお願いして,より深く問題点を確認したり,解決方法を考える.

 

4.専用ホームページによるヴァーチャル研究室などの設置