数学・数理科学と共に拓く豊かな未来 数学・数理科学と諸科学・産業の恊働による研究を促進するための「議論の場」を提供
項目 内容
研究集会等の名称 計算数学に基づく看護暗黙知特徴抽出の数理
採択番号 2015E01
該当する重点テーマ ビッグデータ、複雑な現象やシステム等の構造の解明
キーワード 看護暗黙知 、特徴抽出 、計算数学
主催機関
  • 静岡理工科大学
運営責任者
  • 松田 健
開催日時 2015/09/08 00:00 ~ 2015/09/08 00:00
開催場所 大阪府立大学 I-siteなんば
〒556-0012 大阪市浪速区敷津東2丁目1番41号 南海なんば第1ビル3階 R6, M2
Tel 06-7656-0441(代表)
最終プログラム

○開会あいさつ 13:30 松田 健(静岡理工科大学)

○第1部:基調講演(60分)13:30~14:30 司会:松田 健(静岡理工科大学)

 看護活動の暗黙性について
 講演者:真嶋 由貴恵(大阪府立大学)

○休憩 14:30~14:45
 
○第2部:テクニカルセッション(90分) 司会:大谷康介(合同会社binary lab)14:45~16:15

 (1)病院内データの収集と分析について
 講演者:水野信也(静岡理工科大学)

 (2)看護暗黙知の数理解析
 講演者:松田 健(静岡理工科大学)

○休憩 16:15~16:30


○第3部:招待講演(60分)16:30~17:30 司会:野口俊樹(静岡理工科大学)

 計算代数の理論と方法
 講演者:高橋 正(甲南大学)
 
○閉会あいさつ 17:30~17:35  真嶋 由貴恵(大阪府立大学)

参加者数 数学・数理科学:4、 諸科学:4、 産業界:3、 その他:7
当日の論点

基調講演・テクニカルセッションでの発表において以下の2点が論点となった

・看護技術実施時のデータから暗黙性を抽出できたとして、それをどのように活用するべきか

・手指運動データに含まれる暗黙性の抽出可能性について

研究の現状と課題(既にできていること、できていないことの切り分け)

研究の現状(既にできていること)

採血技術実施時の手指運動データを取得し、初学者と熟練者のを解析した結果、主観的であるが両者のデータに差異が見られることは確認済みである。

具体的には、採血技術には基本的な実施手順があるため、データ取得の際に撮影した技術実施時の動画データと手指運動データを照らし合わせながら、採血技術の各手順に特定の範囲を動いている手指運動データが確認できるかどうかを対応させる分割表(サイズは2×8)を生成して、熟練者と初学者の手指運動に差異が見られることを確認している。生成された分割表には0の要素が多く含まれる他、たくさんのサンプルデータを収集することも困難であるため、分割表の独立性検定を行う際には、漸近理論に基づく方法でなく、Fisherの正確検定を使用するのが妥当であると考えられる。

研究の課題(できていないこと)

熟練者の手指運動の特徴を抽出するために、採血技術の手順とその際の手指運動の特徴を対応させる分割表を生成したところ、熟練者と初学者の分割表には違いが見られることを報告した。

しかしながら、生成した分割表から、熟練の技術が特に必要となる作業部分が特定するには至っておらず、現在のデータ取得方法では、暗黙性を含むデータが取得されているか不明である。また、手指運動データは多変量時系列データであり、手指の物理運動と看護技術という人間の知的活動が混在するデータでもあるため、これらのデータを解析する有用な手法を考案する必要がある。そのため、計算数学の手法を応用したデータ解析についても今後の課題となっている。

新たに明らかになった課題、今後解決すべきこと

現状で取得済みのデータに含まれる特徴を分割表の独立性検定を用いて抽出する方法を検討しているが、観測されるデータの背後にあると考えられる潜在的な要因を分割表に組み込む方法を考える必要があると考えられる。これは例えば、熟練者同士の手指運動データであっても、ある程度共通している部分とそうでない部分があるためで、熟練者同士で技術実施時の動画を確認してもらうことで、丁寧に作業をしているかどうかによって手指データに差異が現れる可能性があるからである。

今回のワークショップを通じて、暗黙性を含む手指運動データの取得方法について再検討する必要があることが明らかとなった。今後解決すべきことは、取得済みデータから初学者と熟練者のデータの差異を発見する数学的手法を構成することである。

今後の展開・フォローアップ

ワークショップ当日には、医療機関からの参加者もあり、ワークショップで紹介したデータ以外の医療機関データについて議論することができた。暗黙性の解析とともに、その他の医療関連データの解析について、医療従事者・数理科学者と連携して研究を進めていくために、学会での研究成果発表のみならず、定期的に研究会や勉強会を開催していく。

特に、参加者から代数統計に関する勉強会の開催要望があっため、この辺りの勉強会の早期開催を目指したい。