数学・数理科学と共に拓く豊かな未来 数学・数理科学と諸科学・産業の恊働による研究を促進するための「議論の場」を提供
項目 内容
研究集会等の名称 第5回数学・数理科学のためのキャリアパスセミナー :多様なキャリアの構築に向けた特色ある数学教育
採択番号 2015C04
該当する重点テーマ ビッグデータ、複雑な現象やシステム等の構造の解明 、リスク管理の数理 、疎構造データからの大域構造の推論 、過去の経験的事実、人間の行動等の定式化 、計測・予測・可視化の数理 、最適化と制御の数理
キーワード 人材育成、産学協働
主催機関
  • 日本数学会
運営責任者
  • 小谷 元子
開催日時 2016/03/16 14:00 ~ 2016/03/16 15:30
開催場所 筑波大学1C210教室(日本数学会2016年度年会会場)
最終プログラム

14:00~14:05 開会挨拶
  日本数学会理事長
  東北大学大学院理学研究科 教授 小谷 元子
14:05~14:25 講演1
  題目:グルーバルな視点をもつ数理科学博士の養成
   ―数物フロンティア・リーディング大学院の取り組み―
  講師:東京大学大学院数理科学研究科 教授 河野 俊丈 氏
14:25~14:45 講演2
  題目:金融業務における数理スキル
  講師:明治大学 教授・株式会社三菱東京UFJ銀行 青沼 君明 氏
14:45~15:05 講演3
  題目:データサイエンス教育と数学
  講師:大阪大学数理・データ科学教育研究センター/基礎工学研究科 教授 狩野 裕 氏
15:05~15:25 講演4
  題目:日本数学会におけるキャリア構築支援活動報告
  講師:東京大学数理キャリア支援室 キャリアアドバイザー
     早稲田大学理工学術院研究院 客員教授 池川 隆司 氏
15:25~15:30 閉会挨拶
  日本数学会社会連携協議会 会長
  株式会社ハーモニック・ドライブ・システムズ 取締役 中村 雅信

 

【概要集】

seminor_abstract

参加者数 数学・数理科学:43、 諸科学:1、 産業界:7、 その他:
当日の論点

1.セミナー開催の趣旨

 情報通信技術の飛躍的進展のように社会が大きく変化するなか、数学をコアとする専門職種は大きな拡がりを見せている。これを受け、いくつかの教育研究機関では、社会のニーズに適合した数学専門職を養成する教育プログラムを実践している。本セミナーでは、東京大学、明治大学、大阪大学が取り組んでいる革新的な数学教育プログラムを中心に紹介する。

 

2.講演の概要

【講演1】グルーバルな視点をもつ数理科学博士の養成

  ― 数物フロンティア・リーディング大学院の取り組み ―

  東京大学大学院数理科学研究科 教授 カブリ数物連携宇宙研究機構 主任研究員 河野 俊丈 氏

 

 文部科学省「博士課程教育リーディングプログラム」事業の一つとして2012年に採択された数物フロンティア・リーディング大学院(FMSP)の取り組みが紹介された。FMSPは東京大学大学院数理科学研究科、理学系研究科物理学専攻および地球惑星科学専攻が連携し、カブリ数物連携宇宙研究機構をブリッジとして遂行しているプログラムである。現在、約160名の学生が参画している。本プログラムでは、先端数学の諸科学への展開を見据え横断的な視点をもった人材の育成に向けて様々な工夫がなされている。その例としてコースワーク「数物先端科学」「社会数理先端科学」、産業界等からの課題解決のためのスタディ・グループワークショップ、企業等への長期インターンシップが紹介された。

 

【講演2】金融業務における数理スキル

  明治大学/三菱東京UFJ銀行 教授 青沼 君明 氏

 

 金融業界においては、デリバティブのような不確実なリスクに対処できる商品の開発が必要とされる。この商品開発にあたっては、確率論を利用して将来の不確実性の分布を表現し、そのパラメータを推定するという数学的アプローチを必要とする。本講演では、大学の教育プログラムで取り上げている事例をもとに、金融業務を遂行するにあたって必要とされる数理スキルが紹介された。

 

【講演3】データサイエンス教育と数学

  大阪大学大学院基礎工学研究科 教授 狩野 裕 氏

 

 大阪大学は、大学院レベルの学生が幅広い領域の素養や複眼的視野を得ると共に新しい分野について高度な専門性を獲得するために、学際融合的な「副プログラム」を数多く提供している。本講演では、その中の一つの副プログラムである「データ科学(データサイエンス)」が紹介された。本プログラムは、クオンツ、アクチュアリー、生物統計家のような統計学を主要スキルとする数理専門職に加え、データサイエンティストと呼ばれる高度な統計的手法を使って意思決定に携わる数理専門職の育成を目的に設置された。統計数理コースやビッグデータ&データサイエンスコースなどの特色あるコースが紹介された。

 

【講演4】日本数学会におけるキャリア構築支援活動

  東京大学数理キャリア支援室 キャリアアドバイザー 早稲田大学理工学術院 研究院客員教授 池川 隆司 氏

 

 数学・数理科学分野での博士後期課程修了者の進路調査状況や2015年11月に東京大学にて開催された「数学・数理科学専攻若手研究者のための異分野・異業種研究交流会2016」の模様を中心に、日本数学会において実践されているキャリア構築支援活動について報告された。研究交流会2016のアンケートの分析結果から得られた数学人材の弱み等の課題や、それを克服する支援活動方針について紹介された。

 

 R

講演模様(講師: 青沼 君明氏)

研究の現状と課題(既にできていること、できていないことの切り分け)

1.現状

 数学研究者の育成を重要な事業の1つとして掲げている日本数学会は、博士後期課程修了者の産業界を含む多様な分野への進路拡大等の戦略的キャリア構築支援事業を積極的に実施している。その一環として、数学・数理科学分野での博士後期課程修了者の進路調査や「数学・数理科学のためのキャリアパスセミナー」や「数学・数理科学専攻若手研究者のための異分野・異業種研究交流会」のようなイベントを開催している。

 

2.課題

 今まで開催してきた「数学・数理科学のためのキャリアパスセミナー(セミナー)」は、若手数学研究者を対象としていた。効果的に人材育成を推進するためには、人材育成の当事者である教職員への啓発が重要な課題であった。そこで、今回のセミナーでは、教職員に特色ある数学教育プログラムを把握してもらうことを目的に企画した。

新たに明らかになった課題、今後解決すべきこと

アンケート結果の分析を通して

・産業界での数学者のニーズや高等教育機関での魅力的な数学教育プログラムの中高生やその関係者(教員や保護者等)への広報活動

・研究大学のみならず地域貢献型大学を含む多種多様な大学での支援活動

の必要性が明らかとなった。

今後の展開・フォローアップ

1.日本数学会「数学通信」等を使った本セミナーを含む人材育成活動の広報 

2.前述の課題解決に向けた取組みの計画立案とPDCAサイクルの実践