数学・数理科学と共に拓く豊かな未来 数学・数理科学と諸科学・産業の恊働による研究を促進するための「議論の場」を提供
項目 内容
研究集会等の名称 科学における発見、数学における発見
採択番号 2015C02
該当する重点テーマ ビッグデータ、複雑な現象やシステム等の構造の解明 、疎構造データからの大域構造の推論 、過去の経験的事実、人間の行動等の定式化 、計測・予測・可視化の数理 、最適化と制御の数理
キーワード 科学的発見 、数学的発見 、異文化交流 、隕石衝突 、オスミウム 、生物絶滅 、タンパク質立体構造
主催機関
  • 数学協働プログラム
  • 文部科学省
  • 独立行政法人科学技術振興機構科学コミュニケーションセンター
運営責任者
  • 丸山 直昌
開催日時 2015/11/15 00:00 ~ 2015/11/15 00:00
開催場所 産業技術総合研究所臨海副都心センター別館 11階会議室1
新交通ゆりかもめ「テレコムセンター」駅下車徒歩3分
あるいは
東京臨海高速鉄道りんかい線「東京テレポート」駅下車徒歩15分
最終プログラム

11月15日(日) 10:15~12:15
産業技術総合研究所臨海副都心センター別館 11階会議室1
(アゴラ開催当日、アゴラ企画への参加者は入構手続きは不要です。)

 (受付開始 10:00)

広告チラシ(A4)  低解像度版,約1.4MB  高解像度版,約19MB
ポスター(A2)     低解像度版,約1.5MB  高解像度版,約18MB

当日配布資料
総合司会 砂田 利一(すなだ としかず、明治大学総合数理学部長)

10:15-10:20
挨拶 砂田 利一(明治大学総合数理学部長)

10:20-11:00
講演1. 佐藤 峰南(さとう ほなみ、海洋研究開発機構海底資源研究開発センター)
2億年前に衝突した隕石は超巨大だった?
ー地層記録と計算手法からわかる隕石衝突の実体ー
聞き手: 中川 真(なかがわ しん、「和算に恋した少女」著者)

11:05-11:45
講演2. 大上 雅史(おおうえ まさひと、東京工業大学情報理工学研究科)
数学と計算で探るタンパク質の出会いとネットワーク
聞き手: 中川 真(なかがわ しん、「和算に恋した少女」著者)

11:45-12:15
パネルディスカッション

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                     (左から)中川 真 氏、佐藤 峰南 氏、砂田 利一 氏、大上 雅史 氏 

本企画の趣旨:

最先端の科学研究において、どのように数学・数理科学が絡んでくるのか。新しい事実の発見はどのように行われるのか。そこに至るまでに研究者が直面する困難や、発見したときの喜び、未来の科学に対する夢について研究者に思う存分語って頂きます。今回は2億年前の隕石衝突と、タンパク質の話題を取り上げ、それぞれの研究者に、数学が研究上どのように役立ったかという点を込めて研究の概要を講演して頂きます。マンガ「和算に恋した少女」の著者が、聴衆の目線で聞き手を務めます。

 

参加者数 数学・数理科学:5、 諸科学:6、 産業界:6、 その他:27
当日の論点

(当日回収のアンケートから)

数式で、例えば歴史を分析するのも、ありだと感じた。

聞き手が途中で質問をはさむスタイル。これは真に必要なスタイルと感じた。科学と市民をつなぐには、この同時通訳者はとても重要だと理解した。

佐藤さんの講演では。測定可能な比と、測定不能な量を異なる色などで、ハッキリと表して頂くと、もっと早く状況を理解でき、ドキドキできたと思います。187と188を入れ替えても数学は成り立ちますが、入れ替えると地学的にはまずそう。これが理解できない。

私は高校で数学が苦手でしたが、大学以降の専門分野で使って初めて高校数学が理解できました。三角関数などディスカッションでも話題になりましたが、数学が他の分野にどう活用できるのか、高校までに伝えられると、数学への苦手意識が減らせるのではないかと思います。

数学はウソつかない。解決したときの嬉しさは大。

様々な分野で、今日のような会が開かれるとうれしい。

興味深い話が聞けてよかった。

自分が学んでいる数学が、隕石の衝突を推測したり、たんぱく質を数式で表したりと、実際に講演を聞いて、興味深く感じました。

アウトリーチ活動の参考にしたいと思い伺いましたが、専門外の話は私自身楽しませてもらいました。この形式をやってみたいですが、聞き手をどなたにするかによりますね。

「数学」が色々なことの解明にここまで役に立っていることに驚いた。また、大上先生のタンパク質のつながりの話で、スパコンの活躍ぶりを感じた。とても興味深かった。

 

研究の現状と課題(既にできていること、できていないことの切り分け)

数学と諸科学の連携は実際には数多くあるが、必ずしも一般大衆には理解されていない。中学校・高等学校でも、数学を単に上の学校に進むために必要な受験勉強、という視点で捉える傾向が多く見られ、数学の色々な分野での有用性を教えることが充分にできていない。今回の講演の中で佐藤氏の講演は、式は多少複雑ではあるが、中学1年で習う文字式の計算が実際に地質学で役に立っている例であり、数学が有用であることを極めて直接的にアピールする内容であった。回収したアンケートでも、そのことにかなり驚いた人がいたことがわかる。このような例を通して数学の有用性を理解して貰うことは重要であり、関係者の一層の努力が必要であると考えられる。

また、パネルディスカッションで中川氏が指摘したことであるが、数学者同士の議論では誤りを指摘することが相手に対する「人格攻撃」のように解釈されることは少なく、冷静に議論が進められる場面が多く見られるという。そのような数学における議論の態度も、他の分野でも見習うべきこととして教育の場で教えられるべきであろう。

 

新たに明らかになった課題、今後解決すべきこと

しかし現実にこれらのことが世間に広く普及するには、長い道のりが必要であると思われる。一般向けの数学の講演会というと、「数式は面倒だから省略します」となりがちであり、数学に対する夢や希望を印象付けることはできても、それはあくまでも「おとぎ話」であって、数学の有用性を一般の人に実感して貰うこととは違う。今回の講演会では、一方では夢を語りながらも、数学の有用性を実感できる題材を入れることができた。今後このような例を蓄積して行くことが必要だと考える。

開催時期が学生・生徒の学業学期の丁度中間期にあたり、この講演を一番聞いて欲しい年齢層の集客には具合が悪い。今後の改善点である。

 

今後の展開・フォローアップ

今回のように数学の有用性を実感して貰える例をさらに発掘し、中学・高校生などの若い人達に聞いて貰う機会を作り、将来数理科学の研究者や、数理科学の色々な分野への応用を手がける人材育成に繋げない。ターゲットとなる中学・高校生の参加を促進するため、開催時期の再検討を行いたい。また中学・高校の教育関係者との連携を模索してゆく。