数学・数理科学と共に拓く豊かな未来 数学・数理科学と諸科学・産業の恊働による研究を促進するための「議論の場」を提供
項目 内容
研究集会等の名称 確率的グラフィカルモデル
採択番号 2014W13
該当する重点テーマ ビッグデータ、複雑な現象やシステム等の構造の解明 、疎構造データからの大域構造の推論 、過去の経験的事実、人間の行動等の定式化 、計測・予測・可視化の数理 、最適化と制御の数理
キーワード ベイジアンネットワーク 、マルコフネットワーク 、因果推論 、統計的学習 (構造学習、パラメータ推定)
主催機関
  • 大阪大学
運営責任者
  • 鈴木 譲
開催日時 2015/03/19 00:00 ~ 2015/03/20 00:00
開催場所 電気通信大学大学院情報システム学研究科
最終プログラム

http://coop-math.bayesnet.org/index.php/services

会場: 電気通信大学 情報システム学研究科棟(IS棟、西10号館)

3月19日(木)

10:00-10:10 鈴木譲(大阪大学) オープニング

10:10-12:30 確率的グラフィカルモデルと離散構造

石畠正和 (NTT) 「離散分布と離散構造」

湊 真一 (北海道大学) 「離散構造処理の技法と確率モデル」

12:30-13:50 昼食・ポスター発表

13:50-16:10 統計力学と確率的グラフィカルモデル

樺島祥介 (東工大) 「ランダム線形観測からの信号復元 ~密グラフ上の推論への統計力学的アプローチ~」

田中和之(東北大学) 「マルコフ確率場による確率的画像処理計算モデリング」

16:20-17:30 ゲノム解析への応用

玉田嘉紀(東京大学)「ベイジアンネットワークとスーパーコンピュータを用いた遺伝子ネットワーク解析」

18:00- 懇親会

3月20日(金)

10:00-12:20 確率的グラフィカルモデルにおける構造学習

鈴木譲 (大阪大学) 「確率的グラフィカルモデルにおける構造学習」

植野真臣 (電気通信大学) 「Empirical Bayes optimization for learning Bayesian networks」

12:20-13:40 昼食・ポスター発表

13:40-16:00 因果推論と確率的グラフィカルモデル

黒木学 (統計数理研究所)・今井徹(ALBERT) 「因果関係は確率的グラフィカルモデルで描けるか?」

清水昌平 (大阪大学) 「構造方程式モデルによる因果探索と非ガウス性」

16:10-17:20 サービス工学への応用

本村陽一 (産業技術総合研究所)「確率的潜在意味解析とベイジアンネットを統合した確率的潜在意味構造モデリング」

17:20-17:30 クロージング

参加者数 数学・数理科学:40、 諸科学:15、 産業界:60、 その他:
当日の論点

離散構造、構造学習、因果推論、統計力学、応用という5分野から10個の講演(各55分)と、その質疑(各15分)を行った。産業界からの参加者が多いということが、事前申し込みの段階でわかったので、研究結果のテクニカルな議論ではなく、初心者でもわかるような講演をしていただき、現状と課題について、全員が議論に参加できるような雰囲気が出てくるよう心がけた。

研究の現状と課題(既にできていること、できていないことの切り分け)

統計力学からは、2000年代後半に、確率的信念伝搬と自由エネルギー最小の概念を画像処理に応用され、統計力学的アプローチを日本に根付かせた田中和之氏(東北大学)、レプリカ法、確率伝搬、最近では圧縮センシングで世界的に活躍されている樺島祥介氏(東工大)に、現状のお話をしていただいた。

 

因果推論からは、清水昌平氏(大阪大学)、黒木学氏(統数研)・今井徹氏(ALBERT)が話題を提供した。清水氏からは、線形な2変数の間の雑音が正規分布ではない限り、因果の方向が同定できるというお話をしていただいた。また、黒木・今井両氏には、因果関係の記述の可能性と、ビジネスへの応用についてお話いただいた。

 

離散構造からは、湊真一氏(北海道大学)、石畠正和氏(NTT CS研)にお話を伺った。湊氏は、論理や集合といったデータ構造を圧縮して、索引するBDDもしくはZDDとよばれる表現形式と、BNの確率構造計算などへの応用を手がけてきた。この3月までの5年間、JST ERATO離散構造プロジェクトの代表者として活躍された。石畠氏は、文脈依存独立性や部分交換依存性といった、一般的な条件付き独立性について定義と特徴を述べていただいた。

 

構造学習からは、植野真臣氏(電気通信大学)と鈴木譲(大阪大学)が話をした。植野氏は、ベイズのスコアを計算するときのパラメータの事前確率の設定の仕方について取り組んでいる。また、鈴木譲からは、連続データと離散データが混在する場合の構造推定に関して話をした。ガウス分布や、線形性を仮定せず、事後確率最大、一致性(サンプル数が増えると正しい構造を選択する)を示した。

 

応用からは、サービス工学の本村陽一氏(産業総合技術研究所)、ゲノム解析の玉田嘉紀氏にお話を伺った。本村氏は、顧客と商品の間に潜在変数を設けて、EMアルゴリズムを用いてパラメータを推定するモデル化について説明された。玉田氏は、発現データから遺伝子ネットワークの推定を行うという問題に関して説明をされた。ヒトでも遺伝子の個数が数万もあるので、事前知識を活用して、スーパーコンピュータで解を導くということだった。

新たに明らかになった課題、今後解決すべきこと

構造学習では、サンプル数が有限の場合に、パラメータの事前確率の置き方の最適性に関してはまだ議論の余地があることがわかった。

 

BNの事後確率最大の構造を見出す問題は、ノード数に対して指数的になるので困難である。しかし、今回の議論の結果、マルコフ同値なものを同一視したり、同じ条件付き独立性の検定を繰り返さないなど、無駄な探索を削減すれば、現状のノード数40という限界を超すことは、不可能ではないように思えてきた。

今後の展開・フォローアップ

11月16日(月)-18(水)に国際会議 Advanced Methodologies for Bayesian Networks (AMBN-2015, 慶應義塾大学日吉)を開催する。
http://ambn2015.bayesnet.org