数学・数理科学と共に拓く豊かな未来 数学・数理科学と諸科学・産業の恊働による研究を促進するための「議論の場」を提供
項目 内容
研究集会等の名称 生命科学・数学・情報科学による新たな理論生命科学へのアプローチ
採択番号 2014W04
該当する重点テーマ ビッグデータ、複雑な現象やシステム等の構造の解明 、疎構造データからの大域構造の推論
キーワード 生物ノイズ 、遺伝子発現 、分化・発生 、力学系 、確率論 、複雑系 、ネットワーク理論
主催機関
  • 東北大学
運営責任者
  • 飯田 渓太
  • 水野 聖士
  • 北谷 和之
  • 三浦 佳二
  • 髙橋 史朗
  • 尾畑 伸明
開催日時 2014/09/20 00:00 ~ 2014/09/21 00:00
開催場所 〒989-0916 宮城県刈田郡蔵王町遠刈田温泉七日原2-1 ラフォーレ蔵王
最終プログラム

9月20日
14:00    開会宣言
14:10-14:50  Kumar Selvarajoo(慶應大学)

                      Microscopic and Macroscopic Insights of Dynamic Cell Behavior
14:50-15:10  林 謙太郎(慶應大学)

                      A Dynamical Computational Model Reveals the Key Target to Suppress

                      TNF-Induced Proinflammatory Response
15:10-15:30  Vincent Piras(慶應大学)

                      Investigating Large Scale Gene Expression Variability in Single Cells

                      during Embryogenesis
15:40-16:20  森下善弘(理研)

                      Mathematical Approaches to Developmental Biology:

                      Tissue Deformation Dynamics and Spatial Patterning in Developing Tissues
16:20-16:40  話題提供(組織委員)
16:40-18:30  ディスカッション
18:30-    夕食,懇親会

9月21日
09:00-09:40  杉山友規(東京大学)

                      Thermodynamic Structure in Population Dynamics
09:40-10:20  成相直樹(東北大学)

                      Genome-Wide Analysis of Gene Expression with Next Generation Sequencers
10:40-11:20  寺前順之介(大阪大学)

                      Introduction to Stochastic Differential Equations and its Applications
11:20-12:00  木村芳孝(東北大学)

                      Can We Change Medical Science with Mathematics?
12:00-12:30  オーガナイザーズコメント   (組織委員)
12:30-     閉会宣言

 

参加者数 数学・数理科学:2、 諸科学:14、 産業界:1、 その他:0
当日の論点

Bayes推論を用いた網羅的発現解析,線型擾乱近似によるTNF(Tumor Necrosis Factor)の細胞内シグナリングネットワークモデル,シグナリングパスウェイにおける新規因果パスのシミュレーション予測,1細胞計測技術を基盤とする生物ノイズ,発生過程の数理モデル,大偏差原理によるノイズの構造推定,確率微分方程式論,伊藤型積分・Stratonovich型積分,確率共鳴,遺伝子発現ネットワークにおけるスイッチング遺伝子の推定

研究の現状と課題(既にできていること、できていないことの切り分け)

既に,1細胞1遺伝子レベルでの遺伝子発現解析が行われており,ホールゲノムに対する「発現ノイズ」の大きさが解明されつつある。一方,時間・空間的なゆらぎが生み出す遺伝子発現パターンの確率論的な数理構造については殆ど分かっていない

慶應大学で開発されている細胞内のシグナリングパスウェイモデルについては,擾乱が線型近似出来るほど小さい場合,非常に上手く機能し,新規パスウェイの発見などにも貢献している。一方で,細胞分化などの非線型現象については,カオスや確率共鳴などを起こす確率論的モデルの新規構築が必要である。

理研で開発されている位置情報をもとにした発生モデルは、複雑な器官形成過程のマクロ構造を数理的に解釈することに大きな成果を挙げている一方、遺伝子発現や細胞分裂などの非線形かつノイズを含んだ現象とマクロ構造との対応関係は現在では明らかになっていない。

 

新たに明らかになった課題、今後解決すべきこと

・1細胞ではノイズを多くもつ遺伝子発現が系として一定の調節を受けていることについての数理的説明

- 短い時間での調節系=1細胞での転写因子を含むパスウェイにおける遺伝子発現の調節

- 長い時間での調節系=多細胞間の遺伝子発現の制御を要する個体の発生過程の調節

・確率微分方程式におけるノイズ項について,Gaussianノイズ以外の場合では積分計算が可能かどうか

・ノイズ項の入ったトグルスイッチでは,分岐点近傍で確率共鳴が起こるかどうか

・情報学,統計学,複雑ネットワークなど,さらに広い領域の研究者を巻き込み研究を進める方法を模索することが必要である。

今後の展開・フォローアップ

・年一度のカンファレンスの開催

・研究集会のホームページのメンテナンスと宣伝

・論文抄読会の開催

・共同研究の紹介