数学・数理科学と共に拓く豊かな未来 数学・数理科学と諸科学・産業の恊働による研究を促進するための「議論の場」を提供
項目 内容
研究集会等の名称 産業・異分野における課題解決のためのスタデイグループ
採択番号 2014S09
該当する重点テーマ 計測・予測・可視化の数理 、リスク管理の数理 、最適化と制御の数理
キーワード 結晶構造 、最適化 、汚染物質の拡散モデル 、異常拡散
主催機関
  • 東京大学大学院数理科学研究科
運営責任者
  • 山本 昌宏
  • 坪井 俊
開催日時 2015/02/16 10:30 ~ 2015/02/20 15:00
開催場所 東京大学大学院数理科学研究科
最終プログラム

2月16日(月)10:30―12:00,数理科学研究科123号室

参加 2 社からの課題提起と説明

10:30 ―11:15 新日鐵住金株式会社

「材料の諸課題を数学で考える!」

11:15 ―12:00 花王株式会社

「大規模VAS(Visual Analogue Scale)調査データを活用した人の情動評価についての、数理的分析・モデルの検討」

2月16日午後―2月20日(金)午前:参加企業ごとに分かれて解決に向けたワーク。主体は院生、若手のポスドクで、各グループに経験のあるポスドクまたはファカルテイメンバーがコーディネーターとして議論のとりまとめなどを行った。

2月20日(金)13:00-15:00,123号室

得られた成果の報告会で課題を提示した企業からの成果の評価もなされた。

 

参加者数 数学・数理科学:20、 諸科学:5、 産業界:5、 その他:4
当日の論点

1.花王株式会社:被験者(約600人)から集められた、3時間ごとに30日間の自分の気分に関するデータがある。通常のアンケートである5段階や10段階などの決められた答えに対して選択をするプリ・コード型の回答とは異なり、VAS(Visual Analogue Scale)と呼ばれる方法で、線分10cmの両端に、たとえば、気分が良くない、気分が良いと書いてあり、被験者はその線分の中を指し示すことで、現在の気分や状況を回答している。本スタディ・グループでは、このような新しい被験者の回答方式のデータをどのように数理的に理解したらよいのかを議論した。
2.新日鐵住金株式会社:結晶とは、原子,分子が規則正しく配列している固体であり、厳密に言えば離散的な空間並進対称性をもつ理想的な物質のことである。そのような規則的な結晶格子に生じる乱れが材料の性質を決定する第1原理的な因子となっていると考えられている。これら個々の観察事実・理論の背後にある問題の本質を、一貫性のある論理で記述する数学的考え方について議論した。

研究の現状と課題(既にできていること、できていないことの切り分け)

1.花王株式会社:プリ・コード型のアンケート回答の解析手法は既にたくさんあるが、今回の方法であるVAS(Visual Analogue   Scale)に関しては、そのようなアンケート方式が広範囲に使用されるようになっているにも関わらず解析手法がほとんどなかった。
2.新日鐵住金株式会社:材料の力学的なマクロな性質を適切に設計することが製造過程では重要な課題である。そのために、規則的な結晶格子に生じる乱れが、材料の性質を決定する第一原理的な要因となっていることは認識されており、個々の事象について観察事実に基づく物理的理論がいくつか提案されてきた。しかしながら一貫性のある論理で記述する数学的考え方が乏しかった。

新たに明らかになった課題、今後解決すべきこと

花王株式会社:VASのデータの分布は、通常期待されるガウス分布と大きく異なることが多い。分布関数が複数の分布関数の重ね合わせとなっていることを仮定して、そのパラメータ推定による手法などを提案した。
2.新日鐵住金株式会社:規則的な結晶格子に生じる乱れを、弾塑性体における歪エネルギーや離散モデルによって解釈できる数理モデルを提案した。数理モデルについては、数値手法の提案もなされた。

今後の展開・フォローアップ

1.花王株式会社:VASのデータをさらに集めて、本スタデイグループで有効性が確認された手法を適用して、検証を進める。

2.新日鐵住金株式会社:提案されたモデルを総合した新たなモデルの構築や転移をマルチスケールモデルの観点で解釈していく。これは、難問であり長期的な視野で議論を継続していく。