数学・数理科学と共に拓く豊かな未来 数学・数理科学と諸科学・産業の恊働による研究を促進するための「議論の場」を提供
項目 内容
研究集会等の名称 数理腫瘍生物学の確立を目指して
採択番号 2014S02
該当する重点テーマ ビッグデータ、複雑な現象やシステム等の構造の解明
キーワード 数理医学 、細胞生物学 、データ科学
主催機関
  • 日本応用数理学会数理医学研究部会
運営責任者
  • 鈴木 貴
開催日時 2014/07/31 19:00 ~ 2014/08/02 10:00
開催場所 新大阪ブリックビル、ラフォーレ新大阪
最終プログラム

最終プログラム

7月31日(木)

1900-2100 ミーティング

自己紹介、司会:石渡通徳(阪大)

基調講演、鈴木貴(阪大) 数理腫瘍細胞生物学の新展開

8月1日(金)

オープニング、鈴木貴 0900-0930

伊藤昭夫(近畿大) 0930-1000 熱を利用した癌浸潤現象の数理的な視点からの制御方法

小林愛美(阪大) 1000-1030 ロトカ・ボルテラ多体問題の周期性

西本翔(阪大) 1030-1100 フィードバック頂点集合によって決定づけられるダイナミクス

熊谷悦生(阪大) 1100-1130 一般化線形混合モデルの階層ベイズモデル化における可能性について

綾野孝則(阪大) 1130-1200 情報理論におけるユニバーサルなベイズ測度の漸近的な性質と統計科学への応用

1200-1300 昼食会

鈴木譲(阪大) 1300-1330 連続データと離散データの間の因果関係の同定 (阪大清水昌平氏, 鷲尾隆氏との共同研究)

鈴木貴 1330-1400 基底膜分解酵素活性化数理モデルの完全可積分性

Dhisa Minerva(阪大) 1400-1430 Distributive model of MMP2 activation in the early stage of cancer cell invasion

柴山允瑠(阪大) 1430-1500 力学系理論の応用について

齋藤卓(愛媛大) 1500-1530 Live imaging and mathematical modeling approach to inferring cell cycle pattern in zebrafish embryonic development

齋藤杏里(東大) 1530-1600 FRAP Analysis of cell adhesion protein complex including CADM1

Vito Quaranta (Vanderbilt大) 1630-1710 System biology of oncogene addicted cancers

Carlos Lopez (Vanderbilt大) 1710-1750 Model-driven exploration of apotosis or necroptosis cell-death decisions

星野大輔(神奈川県立がんセンター臨床研究所) 1750-1820 Exosome secretion at membrane protrusions drive invasive behavior

クロージング、越川直彦(神奈川県立がんセンター臨床研究所) 1820-1840

1900-2100 懇親会、挨拶、狩野裕(阪大)

8月2日(土)

0800-1000 ミーティング

参加者数 数学・数理科学:21、 諸科学:4、 産業界:1、 その他:0
当日の論点

癌研究は社会的に重要であるばかりでなく、癌が悪性化する機序は様々なプロセスと生体階層が絡み合う学術的に興味深い現象である。細胞生物学では実験によりデータを分析し、仮説を立て、改めて実験をして検証しているがこのサイクルは純粋数学における定理の発見や証明に近いものがあり、両者が協働した研究ではいくつかの成果が得られている。スタディグループでは、数理科学と生命科学が融合した新しい研究領域である数理腫瘍学を確立する可能性と方策について、分泌性基底膜分解酵素活性化、細胞膜上のラフト内外の癌発現遺伝子制御に関わる標的分子の2面性など、具体例を取り上げて議論した。

研究の現状と課題(既にできていること、できていないことの切り分け)

癌が悪性化する過程は細胞膜が基点となっている。細胞外のリガンドにより細胞膜上に複合体が形成され、下流にシグナルが流れてフィードバックされる。この過程でクロストークが発生して標的分子は2面性を発揮するようになる。これまで細胞膜上複合体の動態については数理モデルを用いた細胞生物学研究が成果を収めているが、細胞生物学実験のみによって仮説を立てることは難しく、ビッグデータを分析して数理モデルに反映する方策を確立することが必要である。

新たに明らかになった課題、今後解決すべきこと

細胞生物学実験のデータ分析方法については、生物統計学の観点から問題があるものが少なくない。Nature, Cell, Scienceの3大誌をはじめ、細胞生物学研究において統計学研究者の参画が必須のものとして位置付けられ始めている。これに対して、とりわけ米国と比べると我が国の体制は遅れているので、人材育成を含めた前向きな対応が必要である。バイオインフォマティックスを踏まえた臨床応用研究についても同様の事情があり、先端技術が一部の研究で開発されているが、ツールとしてより広く使用していく必要がある。

今後の展開・フォローアップ

システム生物学、統計科学、数理モデルの数理科学3部門の役割分担、共同作業の方策については本スタディグループによってより明確になった。標的分子についての細胞生物学研究を踏まえ、新たな治療法、診断法や薬剤耐性制御、創薬までを視野に入れた個別のプロジェクト研究を進める段階にある。一方で細胞生物学を題材にした純粋数学研究では、我が国は一歩先んじた感があり、特に米国側から院生、若手研究者の交流を強く望んできた。そこで今後の人材の交流を視野に入れた部局間協定締結の準備を進めることになった。