数学・数理科学と共に拓く豊かな未来 数学・数理科学と諸科学・産業の恊働による研究を促進するための「議論の場」を提供
項目 内容
研究集会等の名称 自動車用オートマチックトランスミッションのギヤノイズばらつきの要因究明
採択番号 2014S01
該当する重点テーマ ビッグデータ、複雑な現象やシステム等の構造の解明 、過去の経験的事実、人間の行動等の定式化 、計測・予測・可視化の数理 、最適化と制御の数理
キーワード ものづくり 、振動・騒音解析 、データ解析
主催機関
  • 統計数理研究所
運営責任者
  • 藤澤 洋徳
開催日時 2014/07/01 00:00 ~ 2015/01/31 00:00
開催場所 統計数理研究所
最終プログラム

第1回目: 

1日目:12月15日 (セミナー室2(D304))

~オープンセッション~

10:30-11:30 アイシンAW株式会社より課題提起

11:30-12:00 ディスカッション

 ~クローズドセッション~

1日目:12月15日 (D222)

13:00-17:00 集中討議

2日目:12月16日 (D222)

10:00-17:00 集中討議

 

第2回目: 

  ~クローズドセッション~

 1日目:1月29日

 10:00-17:00 集中討議(D312B)

 2日目:1月30日

 10:00-15:00 集中討議(D312B)

 ~オープンセッション~

 15:00-16:00 成果報告会(D312B)

参加者数 数学・数理科学:6、 諸科学:0、 産業界:6、 その他:2
当日の論点

アイシンAWにおいてもある程度のデータ解析は行っていた.しかし,それでは,要因が究明できなかったため,数学協働プログラムのスタディ・グループに課題が持ち込まれた.データの様相を見て,どのようなデータ解析方法が向いていて,どうやって要因究明を行うか,というのが本スタディグループの論点であった.特に,本スタディグループでは,企業による課題提示,統計学者によるデータ解析手法の提示,それをすぐに実現して可視化する統計ソフトウェア会社,の三者による協働を目指した点も特色である.

 

研究の現状と課題(既にできていること、できていないことの切り分け)

まずは,アイシンAWが,取り組むべき課題およびデータの様相の説明を,詳細に行った.そのデータの説明において,様々な方向からの議論が次々と行なわれた.そして,要因究明のためには,主効果および,特に交互作用が重要であろうとの観点になった.交互作用の発見には幾つかの方法があるが,データが巨大であるため,まずはCARTを用いて交互作用の絞り込みを行った.そして,ある程度の要因が見えた後には,応答曲面や一般化加法モデルを当てはめて,精度を上げた予測モデルを構築し,それらに基づく最適化という解析ストーリーが考えられた.そして,探索的データ解析を次々と行なっているうちに,「幾つかのデータ構造に特に着目する」という考えが生まれ,その方向でデータ解析を行うことで,主要因をある程度まで絞ることに成功した.その解析結果は,アイシンAWの方が持っている技術的知見とある程度合致したものであった.

 

この議論では,統計ソフトウェアJMPからの参加者が,素早い可視化およびデータ解析を次々と行い,JMPによるデータ解析結果が様々な角度から提示されていたことが,議論を早く深化させたことは大きかったと考える.通常は,企業と統計学者が一緒に議論を行ってデータ解析を行う訳だが,その二者の議論によって浮かび上がったデータ解析方針の結果が,すぐに多方面から提示されたことが,議論を早く深化させたと考える.その効率の良さによって,「データ構造の何に注目すると結果が早く見えそうか」というコアな部分を早く発見できるに至ったとも考える.

 

加えて,チュートリアルが効果的であったことも記しておきたい.企業から,課題が提示され,幾つかのデータ解析の結果が提示された.その後に,数理側は,データ解析の更なる可能性を具体的に提示する前に,今回のデータ解析に有用であろう統計手法に関するチュートリアルを時間をかけて行った.これによって,お互いの距離が近くなり,お互いの理解がスムーズになった.

 

 

新たに明らかになった課題、今後解決すべきこと

ギヤノイズを測定するときに,別の幾つかのデータも取っていればさらに効率的にデータ解析ができて,要因究明がよりクリアにできそうであるとの感触が得られたため,そのようなデータも取ってはどうかという話になった.また,ギヤノイズの予測モデルは,まだまだ未成熟のため,より精度の高いモデルの構築が考えられる.

 

今回は,秘密保持契約が結ばれるまでは,数理側はデータの様相すら見ることができなかった.秘密保持契約を早く結ぶことは大切であると考えられる.また,秘密保持契約のため,結果を詳細に報告することはできない.しかし,今回のスタディ・グループの結果は,お互いが大いに満足できるものであったことは記しておきたい.

 

今後の展開・フォローアップ

新たに明らかになった課題について,さらに考える予定である.