まずは,アイシンAWが,取り組むべき課題およびデータの様相の説明を,詳細に行った.そのデータの説明において,様々な方向からの議論が次々と行なわれた.そして,要因究明のためには,主効果および,特に交互作用が重要であろうとの観点になった.交互作用の発見には幾つかの方法があるが,データが巨大であるため,まずはCARTを用いて交互作用の絞り込みを行った.そして,ある程度の要因が見えた後には,応答曲面や一般化加法モデルを当てはめて,精度を上げた予測モデルを構築し,それらに基づく最適化という解析ストーリーが考えられた.そして,探索的データ解析を次々と行なっているうちに,「幾つかのデータ構造に特に着目する」という考えが生まれ,その方向でデータ解析を行うことで,主要因をある程度まで絞ることに成功した.その解析結果は,アイシンAWの方が持っている技術的知見とある程度合致したものであった.
この議論では,統計ソフトウェアJMPからの参加者が,素早い可視化およびデータ解析を次々と行い,JMPによるデータ解析結果が様々な角度から提示されていたことが,議論を早く深化させたことは大きかったと考える.通常は,企業と統計学者が一緒に議論を行ってデータ解析を行う訳だが,その二者の議論によって浮かび上がったデータ解析方針の結果が,すぐに多方面から提示されたことが,議論を早く深化させたと考える.その効率の良さによって,「データ構造の何に注目すると結果が早く見えそうか」というコアな部分を早く発見できるに至ったとも考える.
加えて,チュートリアルが効果的であったことも記しておきたい.企業から,課題が提示され,幾つかのデータ解析の結果が提示された.その後に,数理側は,データ解析の更なる可能性を具体的に提示する前に,今回のデータ解析に有用であろう統計手法に関するチュートリアルを時間をかけて行った.これによって,お互いの距離が近くなり,お互いの理解がスムーズになった.
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