気象学と位相幾何学に関し、基本的な知見をレクチャーによって共有し、十分な討議によって、両分野の融合の可能性を探った。
具体的には、まず荒井が計算トポロジー入門と題して、学部学生向けレベルの位相幾何学入門の話を行った。そこではオイラー数やベッチ数と基本的な幾何量から出発し、連続変形によって到達する図形はホモトピー同値とするトポロジーの概念を詳説した。ついで、気象学者からのリクエストで、ホモロジー群について、鎖群や境界作用素の定義から、初心者が陥りやすい剰余群の理解までを解説した。
ついで、稲津は気象学の分野の広大さと、数学との連携可能性について紹介した。時間が昼休みを跨いでの長丁場となったが、その中でとくに中高緯度の気象にとってきわめて重要な温帯低気圧の幾何学的追跡に関する最新の成果が発表された。また、数学との連携の成功例として確率論を導入した新たな長期予報可能性の診断法について紹介された。さらに、幾何学と気象学の例として雪の結晶形の話が紹介された。
また、平岡はこれらの話を受けて、幾何学と気象学を繋ぐ計算方法の1つとして、パーシステント・ホモロジーを紹介した。パーシステント・ホモロジーとは空間点列からパーシステント図を作り出す算法のことであり、画像解析、パターン認識、材料科学等の広範な応用をもっている。まず、その算法の核となる概念であるチェック複体を導入し、その球の半径を可変パラメタとしたとき、パーシステント図により、データに内在するロバストな幾何構造を認識できることが示された。
時間が押し迫り、中野の時系列データ解析の気象への応用は短く紹介されるのみであった。 |