数学・数理科学と共に拓く豊かな未来 数学・数理科学と諸科学・産業の恊働による研究を促進するための「議論の場」を提供
項目 内容
研究集会等の名称 社会システムデザインのための数理と社会実装へのアプローチ
採択番号 2014E07
該当する重点テーマ ビッグデータ、複雑な現象やシステム等の構造の解明 、計測・予測・可視化の数理 、最適化と制御の数理
キーワード 都市 、医療 、農業 、社会システムデザイン 、地理情報システム(GIS)
主催機関
  • 九州大学マス・フォア・インダストリ研究所
運営責任者
  • 吉良 知文
  • 神山 直之
開催日時 2015/02/11 12:55 ~ 2015/02/12 14:50
開催場所 九州大学マス・フォア・インダストリ研究所 大講義室1
最終プログラム

2月11日(水・祝)

12:55 ~ 13:10 開会挨拶および趣旨説明

 

【招待講演・3件】

13:10 ~ 14:00 石垣 司 氏(東北大学)

統計的モデリングとデータ活用による社会価値創出


14:10 ~ 15:00 瀧澤 重志 氏(大阪市立大学)

建築・都市関連分野での数理的アプローチの事例


15:20 ~ 16:10 蓮池 隆 氏(大阪大学)

環境負荷削減・農業経営安定を目指す作物流通管理システムと

数理モデル

 

【基調講演】
16:20 ~ 17:20 高橋 真吾 氏(早稲田大学)

社会的問題解決のためのSystemic InterventionとSoft Systems Approach―方法論的多元性と社会実装へのアプローチ―

 

2月12日(木)

 

【招待講演・4件】
10:00 ~ 10:50 高橋 里司 氏(電気通信大学)

横断的研究によるオークションシステムの実用化


11:00 ~ 11:50 竹中 毅 氏(産業技術総合研究所)

社会技術としてのサービス工学の研究戦略


13:00 ~ 13:50 伊藤 映 氏(富士通株式会社)

位置情報サービス、展開の現場から


14:00 ~ 14:50 稲川 敬介 氏(秋田県立大学)

救急自動車の最適配置問題と社会実装へのアプローチ

 

Website:

http://imi.kyushu-u.ac.jp/~kira/ws/social.html

参加者数 数学・数理科学:30、 諸科学:4、 産業界:9、 その他:1
当日の論点

各講演の要旨はリンク先を参照

・石垣 司 氏(東北大学):統計的モデリングとデータ活用による社会価値創出

・瀧澤 重志 氏(大阪市立大学):建築・都市関連分野での数理的アプローチの事例

・蓮池 隆 氏(大阪大学):環境負荷削減・農業経営安定を目指す作物流通管理システムと数理モデル

・高橋 真吾 氏(早稲田大学):社会的問題解決のためのSystemic InterventionとSoft Systems Approach―方法論的多元性と社会実装へのアプローチ―(調整中)

・高橋 里司 氏(電気通信大学):横断的研究によるオークションシステムの実用化

・竹中 毅 氏(産業技術総合研究所):社会技術としてのサービス工学の研究戦略

・伊藤 映 氏(富士通株式会社):位置情報サービス、展開の現場から

・稲川 敬介 氏(秋田県立大学):救急自動車の最適配置問題と社会実装へのアプローチ

 

各講演者の事例をもとに、以下のテーマについて重点的に議論を深めた:

 

【解決すべき長期的な課題】

(1)人の心理をモデル化し、複雑な社会システムを数学的に記述する「社会システムモデリング技術」

(2)公平で納得感のある施策や制度や施策を設計する「社会制度設計デザイン技術」

(3)設計した施策や制度や施策が社会に与える影響を可視化する「社会制度評価技術」

 

【社会実装に挑む研究者がいま共有すべきノウハウ】

(a)研究者がどのように社会の現場に入り込むか?

(b)現場の人との協働関係をどのように構築するか?

(c)フィールドワーク・課題発掘の方法論(フィールド介入技法)

(d)地理空間情報の利用方法,地理情報システムによる解析・可視化

(e)実用化を妨げる要因と解決方法

研究の現状と課題(既にできていること、できていないことの切り分け)

【既にできていること】

数学・数理科学分野の研究者は社会システムデザインに貢献し得る強力な武器を持っている。また、以下に挙げるように、解決すべき長期的な課題に対しても、解決の足掛かりとなる知識土台も既にいくつか存在する:

(1)「社会システムモデリング技術」のための知識土台:消費者行動論、マーケティング・サイエンス、サービス工学など

(2)「社会制度設計デザイン技術」のための知識土台:ゲーム理論、マッチング理論、最適化など

(3)「社会制度評価技術」のための知識土台:社会シミュレーション、実験経済学など

 

【できていないこと】

上述の解決すべき長期的な課題を解決し、社会システムデザインにおける基盤技術を構築・体系化させなければならない。このためには、社会的課題の現場と協働した事例研究を通じて、(1)社会システムのモデリング→(2)社会制度の設計→(3)社会制度の評価・可視化→(1)→・・・というループを繰り返し、数理技術と現場とのギャップを埋める必要がある。特に、(3)の技術開発はこれまであまり注目されてこなかったが、現場と対話し、(1)および(2)の研究へのフィードバックを得るためにも重要である。

新たに明らかになった課題、今後解決すべきこと

現場の人と組んでの社会問題解決型研究は、研究成果を実用化させるための近道であり、研究者にとっても魅力的である。また、理論と現場とのギャップを認識し、理論を発展させるためにも大切である。しかしながら、多くの講演者が研究者と現場との思惑が一致しないというジレンマを口にされていた:

・現場から求められている技術が最新技術とは限らず、労力の割に大学/学会からは「単なる応用」と低く評価されかねない
・時間の問題。特に自治体の仕事は短期で処理する必要があり、研究で想定するスパンよりだいぶ短い 

このジレンマを解消するためには、理論研究者自身が「応用が理論を鍛える」ということを認識し、応用研究や社会実装へ携わる研究者の価値を高めることも重要であると思われる。

 また、個々の研究者が、自らの研究成果を社会実装するために、現場に入り込むことは(数学・数理科学分野は特に)容易ではない。研究者と現場のマッチングを産・学・官で支援する仕組みも必要であると思われる。

今後の展開・フォローアップ

運営責任者らは、九州大学マス・フォア・インダストリ研究所において、社会システムデザインの具体的な事例研究に取り組んでいる。本ワークショップで得られた成果を自ら体現し精査しながら、ソリューションの創出に不可欠な数理的基盤技術に加えて、それらを社会実装へと結びつけるノウハウの体系化に取り組む予定である。また、このようなワークショップを継続的に開催する予定である。