数学・数理科学と共に拓く豊かな未来 数学・数理科学と諸科学・産業の恊働による研究を促進するための「議論の場」を提供
項目 内容
研究集会等の名称 自然言語処理と最適化
採択番号 2014E02
該当する重点テーマ 最適化と制御の数理
キーワード 整数計画法 、劣モジュラ関数 、グラフ理論
主催機関
  • 個人
運営責任者
  • 神山 直之
  • 脇 隼人
  • 宮代 隆平
開催日時 2014/10/02 00:00 ~ 2014/10/03 00:00
開催場所 九州大学 伊都キャンパス 数理学研究教育棟 大講義室1
最終プログラム

10月2日 (木)
13:50 -- 14:00
開会挨拶及び趣旨説明
14:00 -- 14:50
宮代隆平(東京農工大学)
「使ってみよう整数計画法」
15:00 -- 15:50
 西川仁(日本電信電話株式会社)
「自然言語処理における最適化」
 16:10 -- 17:00
 高村大也(東京工業大学)
「自然言語処理における最適化」
 17:10 -- 18:00
 神山直之(九州大学)
「劣モジュラ被覆制約付き劣モジュラ関数最小化問題 」

 10月3日(金)
 10:00 -- 10:50
 前原貴憲(国立情報学研究所・JST ERATO)
 「SimRankの高速計算法と自然言語処理への応用」
 11:00 -- 11:50
 脇隼人(九州大学)
 「面的縮小法を用いた最適化問題の解析と計算」

http://imi.kyushu-u.ac.jp/~kamiyama/nlp.html

参加者数 数学・数理科学:23、 諸科学:5、 産業界:2、 その他:0
当日の論点

自然言語処理の研究においては機械学習が大きな役割を果たすことからもわかるように,
元来自然言語処理の研究と最適化技術は非常に相性が良いものであると思われる.だが
しかし,この二つの分野の交流の現状に関しては十分な交流・協働がなされれていると
は言いがたい.そこでこのワークショップでは,次の3点を大きな論点とした.
(1) 自然言語処理や最適化の学問的な哲学・考え方の共有.
(2) 自然言語処理における数理モデルとアルゴリズム,
(3) 現在の最適化理論とそれに基づくアルゴリズムで何ができるか.
これらに基づき, 6人の講演者に各自の研究をわかりやすく紹介していただいた. その発
表内容に関しては以下を参照.

研究の現状と課題(既にできていること、できていないことの切り分け)

まず,大局的な観点から現状を眺めると,自然言語処理と最適化の交流や共同研究の機会が
少なく,現状ではお互いの学問的な哲学・考え方を十分に理解しているとは言い難い. 実際,
自然言語処理において最適化が重要な役割を果たすことが多いことが知られているが,具体
的な事柄(数理モデルや適用しているアルゴリズム・ソフトウェア)を十分に理解している
わけではない.また,どのような最適化手法が研究・開発されているか認知されていないの
も交流が少ない原因の一つと考えられる.自然言語処理と最適化が直接交流できる場を多く
提供することが分野の壁を取り払う有効な手段と考えられる.
また,局所的な観点からの現状把握として講演者に以下のような個々の講演を行っていただ
き,具体的な課題の洗い出しを行った.
(1) 整数計画問題に対するソルバーに対する現状の確認
(2) 自然言語処理におけるナップサック問題等の組合せ最適化問題の応用の現状
(3) 自然言語処理における劣モジュラ関数等の抽象的概念の応用の現状
(4) 離散最適化分野における劣モジュラ最適化に対する理論的発展の現状
(5) 自然言語処理を見据えた最適化計算の高速化の現状
(6) 数値計算の観点からの, 非線形最適化問題における制約想定の重要性

新たに明らかになった課題、今後解決すべきこと

自然言語処理においては最適化が有効に働く研究課題として,自然言語解析と自然言語生成
の二つが紹介された.この中で最適化モデルとしてNP困難な最適化問題である, 最大被覆問
題や施設配置問題,ナップサック問題,巡回セールスパーソン問題を利用していた.これら
は主に整数計画問題に対するソフトウェアを適用することになるが,最適化モデル(目的関
数や制約式)の妥当性や最適化の視点によるアルゴリズム・ソフトウェアの選択・利用において
議論の余地があり効率的な計算の実現のためには今後十分に議論がなされるべである.また,自
然言語処理で利用されるデータは事前に前処理を施すことで最適化計算において妥当なデー
タ数・規模になり, 必ずしも最適化が難しくなるわけではないことが紹介された.これにより,
複数の最適化モデルの設計して前処理済みのデータを適用することで, 自然言語処理において
適切な最適化モデルの選択が可能になる.今後このような視点による研究も期待できる.

今後の展開・フォローアップ

人材的な観点に関しては,今回のワークショップを通じて,本ワークショップの最も重要な
目的である最適化と自然言語処理の研究者間の新たな繋がりを,構築することができたと思
われるため,今後も引き続きこのつながりを元に学会の年会やワークショップ・フィージブ
ルスタディなど通じた交流あるいは共同研究など展開・フォローアップが考えらえる.
また技術的な観点としては,上記は「今後解決すべきこと」でも記した,整数計画問題や劣モジュラ
関数に代表される最適化理論の自然言語処理に対する深い応用を実現することが挙げられ,新たな
展開が期待される.