数学・数理科学と共に拓く豊かな未来 数学・数理科学と諸科学・産業の恊働による研究を促進するための「議論の場」を提供
項目 内容
研究集会等の名称 量子系の数理と物質制御への展開:量子ウォークを架け橋に
採択番号 2014E01
該当する重点テーマ 最適化と制御の数理
キーワード 量子ウォーク、量子レーザー制御工学、トポロジカル絶縁体、散乱理論
主催機関
  • 東北大学SMARTプロジェクト
運営責任者
  • 瀬川 悦生
  • 松岡 雷士
  • 尾畑 伸明
開催日時 2014/09/17 00:00 ~ 2014/09/18 00:00
開催場所 東北大学 情報科学研究科棟 大講義室
最終プログラム

9/17(水)

12:55 尾畑 伸明 (東北大学) オープニング

13:00-13:50 今野 紀雄 (横浜国立大学)
「量子ウォークの定常性,周期性」

14:00-14:50 川上 則雄 (京都大学)
「量子ウォークとトポロジカル量子現象」

15:00-15:50 横山 啓一 (日本原子力研究開発機構)
「放射性廃棄物の無害化技術と量子ウォーク」

16:00-16:50 小栗栖 修 (金沢大学)
「離散シュレーディンガー方程式の共鳴散乱と位相について」

17:00-17:30 森岡 悠 (芝浦工業大学)
「Spectral properties of Schr\"{o}dinger operators on perturbed lattices」

17:40-18:10 和田 達明 (茨城大学)
「異常拡散を示す離散時間量子ウォークモデルとその拡張」

 

9/18(木)

9:00-9:30 市原 晃 (日本原子力研究開発機構)
「光による二原子分子の同位体選択的回転励起の理論計算」

9:40-10:30 大槻 幸義 (東北大学)
「非線形相互作用下での量子最適化シミュレーション:アルゴリズム開発と分子レーザー制御への応用」

10:40-11:10 小布施 秀明 (北海道大学)
「量子ウォークにおけるトポロジカルな局在状態の制御」

11:20-11:50 鹿野 豊 (岡崎分子科学研究所)
「量子ウォークによる量子シミュレーション」

 

ショートコミュニケーション
11:55-12:10
清水 翔之(大阪市立大学)
「平均場シュレーディンガー作用素のスペクトル解析」

12:10-12:25
樋口 雄介(昭和大学)
「On the spectrum of a drifted random walk on one dimensional lattice with some impurities」

 

昼食

ポスターセッション 13:00-14:00

 蓑輪 祐人,吉田 聖弥 (横浜国立大学)
 「サイクル上のアダマールウォークの定常測度」

 松岡 雷士(広島大学)
 「周期的光パルス列中での分子回転ダイナミクスの理論研究」

 安食 徹,新井健太,大槻幸義,河野裕彦 (東北大院理)
 「量子デコヒーレンス抑制の最適制御シミュレーションと純粋度を用いたトラジェクトリ解析」

 新井 健太,大槻幸義,河野裕彦(東北大学)
 「光格子中の冷却KCs分子を用いるスケーラブルな量子計算に関する実装シミュレーション」

 吉田 将隆,大槻幸義,河野裕彦(東北大学)
 「最適なTHzパルスとフェムト秒レーザーパルスを組み合わせたCO分子の配向制御」

 小松 尭 (東北大学)
 「2次元正方格子上の離散時間量子ウォークの極限分布」

  森田大地(筑波大学)
  「光格子における格子変調分光と量子ウォーク」

 

14:00-14:50 楯 辰哉 (東北大学)
「ユニタリ推移作用素の固有値と局在化についての一考察」 

 15:00-15:30 松江 要 (統計数理研究所)
「単体複体上の量子ウォークの構築に向けて」

15:40-16:10 佐藤 巌 (小山高等専門学校)
「量子グラフから得られる量子ウォーク」

 

 

参加者数 数学・数理科学:25、 諸科学:13、 産業界:2、 その他:0
当日の論点

この研究会では, 大きく分けて(1)レーザー制御工学 (2)物性物理 (3)散乱・スペクトル理論の3つの視点から量子ウォークという1つのテーマについて論じた。(1)では重分子同位体分離におけるテラヘルツレーザー投射の技術と誘起双極子相互作用を通した分子回転制御について議論した。(2)ではトポロジカル絶縁体におけるエッジ状態を与える為のハミルトニアンの対称性について論じた. (3)では量子ウォークの定常測度・局在化や、シュレディンガー方程式の散乱・スペクトルについて考察し, 固有値や埋蔵固有値の存在する条件などについて討論した. またその他にも単体複体上の量子ウォークの構成などの様々な話題も提供された.

研究の現状と課題(既にできていること、できていないことの切り分け)

本研究会は大きく分けて(1)レーザー制御工学 (2)物性物理 (3)スペクトル理論的な立場で論じられた. 本研究会を通じて, (1)(2)(3)それぞれの分野で独立に量子ウォークとの関連が見出されていることが分かった. そのため専門用語が異なっているものの, いくつか共通点を見出すこともできた. しかしまだこの3つの分野の繋がりの架け橋にQWがなりきれていない部分もあり, より一層の交流が必要と感じた.

新たに明らかになった課題、今後解決すべきこと

1. 量子レーザー制御による重分子同位体分離におけるより効率の良いパラメータ設計。
2. さらに量子レーザー制御による重分子同位体分離設計において, 連続モデルから単位円周上の直交多項式と関係する離散時間QWモデルが現れるメカニズムの詳細な解明
3. 物性物理のエッジ状態と単位円周上のスペクトル測度との関係性。この二つは一次元格子においては量子ウォークの局在化と呼ばれる現象によって特徴づけられている。
4. シュレディンガー作用素の散乱・スペクトルと物性物理のトポロジカル絶縁体との関係性。量子ウォークを仲介する変わった見方によっておもしろい繋がりが見えると期待している。
5. 1~4を包括的に解決できるような手法の開拓

 

今後の展開・フォローアップ

今回は,量子ウォークに様々な研究の立場の方々から色々なものの見方を紹介して頂き、それらのいわゆるお見合い的な場を提供することが主な目的であった.今後は,このような取り組みを続けることで相互の理解を強くし,レーザー同位体分離の技術をはじめとするより産業界への応用色を強くしたワークショップを新たに立ち上げることを検討していきたい.