今回は5つの地球科学的現象を中心に,データ解析の課題を専門家に解説していただき,研究の現状を俯瞰することを目的とした.成層圏突然昇温については現象の発現に関わる異常値の事後解析は行われているものの事前解析は困難であることが指摘された.台風解析では,データ解析と数値実験により,レインバンドが引き起こす2次循環による中層の雲の拡大が重要であることが指摘されたが,非軸対称レインバンドの軸対称的解析についての議論も行われた.雲力学については種々の雲の問題が指摘され,特に竜巻を引き起こす積乱雲とそのドップラーレーダー画像解析などが述べられた.また穏やかな雲(下層雲)の重要性が強調され,その疎構造とエアロゾル量の関係など未解明の点について議論が行われた.大雨については,極地統計の適合度とともに不確実性の問題が指摘され,気候学的にあり得るが極地統計による扱いの難しい異常値の問題が議論された.アイスコアによる古気候解析では,極域氷床による古大気解析の現状が述べられ,それらによる氷期・間氷期サイクルの解析や年代決定,古いイベントの検出問題が指摘された.理論の立場からは,流体力学方程式を対象とする相空間の構造解析が詳しく述べられ,edge state の不安定方向が一つである場合について,アトラクタ・サドル・ホモクリニック軌道による間欠性解析が議論された.スパース表現と圧縮センシングについては,サンプリング定理を導入として,スパース性,データ圧縮,L1誤差の最小化と線形計画法などが述べられた. |