数学・数理科学と共に拓く豊かな未来 数学・数理科学と諸科学・産業の恊働による研究を促進するための「議論の場」を提供
項目 内容
研究集会等の名称 数理・材料科学WG
該当する重点テーマ ビッグデータ、複雑な現象やシステム等の構造の解明 、疎構造データからの大域構造の推論 、計測・予測・可視化の数理 、最適化と制御の数理
キーワード 数理科学 、材料科学
主催機関
  • 統計数理研究所
運営責任者
  • 松江 要
  • 伊藤 聡
開催日時 2013/10/25 00:00 ~ 2014/03/31 00:00
開催場所 第1回会合:2013. 10/25@統計数理研究所 D304 セミナー室2
第2回会合:2014. 3/24 - 3/25@学術総合センター 一橋講堂会議室201
最終プログラム

★数理・材料科学WG 第1回会合 2013/10/25
10:00-10:15 数理・材料科学WG発足挨拶
 伊藤 聡、文科省数学イノベーションユニット
10:15-11:45 自己紹介を兼ねた研究紹介1
 松江 要、平田 秋彦、西山 悠、赤木 和人
13:00-14:30 自己紹介を兼ねた研究紹介2
 義永 那津人、小林 景、平岡 裕章、三宅 隆
14:00- 今後の方針 戦略会議(最長17:00まで)
 参加者全員によるディスカッション

★数理・材料科学WG 第2回会合 「マテリアルズ・インフォマティクス」 2014. 3/24 - 3/25
コーディネータ:赤木 和人、三宅 隆(サブ:松江 要)

本会合では赤木和人氏(東北大学WPI-AIMR)、三宅隆氏(産総研)を中心として「マテリアルズ・インフォマティクス」あるいは周辺の分野に関する話題提供とディスカッション、および数理・物質材料科学共通の課題となりうる話題の抽出を図る。

3/24 10:00 - 10:20
佐藤 浩司「自己紹介を兼ねた研究紹介」
3/24 10:20 - 12:00 
松江 要「数理ミニチュートリアル『微分トポロジー、関数解析』」
3/24 13:00 - 3/25 17:00「ディスカッション『マテリアルズ・インフォマティクス』」
(コーディネータ:赤木 和人、三宅 隆)
・「マテリアルズ・インフォマティクス」について
・物性物理と計算科学の関係について
・物質・材料科学における「構造決定」の現状と課題について 

上記の話題に関連する数理・材料側の研究者が集えるスタディーグループの開催・共同研究ができる様にするのが本会合の目的である。ここでの議論を基に、「数理材料科学ミニスタディーグループ:マテリアルズ・インフォマティクス」の開催を検討する。

参加者(総数、内訳) 16(数理科学4名、諸科学(物質材料科学)5名、その他7名)
当日の論点

(第1回)参加者による個々人の研究紹介および活動理念、活動方針を議論した。なおこれらは非公式に1月上旬にも行っている。

(第2回)新規参加のメンバーによる研究紹介、数理側のメンバーによる「ミニチュートリアル」を経て、予め選定したコーディネータ主導のもと、「マテリアルズ・インフォマティクス」周辺の分野紹介および未解決課題の抽出、解決可能性を議論した。課題抽出は、物理的視点に立ったものに加え、統計数理の視点に立った問題設定も積極的に議論された。

具体的には以下のトピックが中心的に議論された: 
●磁石の性能・超伝導の分布 
●第一原理計算における汎関数の「近似」 
●クラスター展開法 
●不純物添加による構造変化、その構造の決定

研究の現状と課題(既にできていること、できていないことの切り分け)

(第1回)数理科学と材料科学の研究者が協働して研究していく取り組みは、組織的に展開しているのは東北大学WPI-AIMRが有名である。このような取り組みを情報・統計科学の研究者、さらに産業界も交え、シームレスな活動を展開していくにはとにかく互いを知り、議論を重ねていく事が大前提である。また、材料科学に限らず、異分野協働による成功例があまり表に出てきていない、アピールが不充分である事も浮き彫りになった(何かありますかと問われ、殆ど浮かんでこないなど)。


(第2回)「マテリアルズ・インフォマティクス」という分野そのものは、JST研究開発戦略センター(CRDS)のワークショップが開催されるなど、産業界の研究者も交えた積極的な議論が展開されている(http://www.jst.go.jp/crds/pdf/2013/WR/CRDS-FY2013-WR-03.pdf)。しかしマテリアルズ・インフォマティクスという分野が目指すものに関して統一見解が得られているかを考えると、それは外部から非常に見えづらく、さらに統計的視点は入っていても数学の視点を交えた議論はほとんど成されてこなかった印象を受ける。

同時にマテリアルズ・インフォマティクスを分野として展開するための下地づくりがまだ不十分である印象も受けた。よってマテリアルズ・インフォマティクスという分野そのものに切り込むのでなく、その下地に対して物理・物質材料科学・統計だけでなく数学の考え方も取り入れ、多角的な視点を織り交ぜた議論をしていく事は、下地づくりだけでなく、マテリアルズ・インフォマティクスが目指すものを示す機会にもなると考える。

新たに明らかになった課題、今後解決すべきこと

第2回会合ではマテリアルズ・インフォマティクスの下地づくりと位置づけられ得る話題が紹介され、各々の可能性を見出した。

会合中紹介された話題に対して統計・数理も交えた非常に多角的な議論が展開され、各々に「数理の問題」として取り組めそうな問題設定の可能性を見出せた。内容をさらにブラッシュアップする事で、実際に研究課題として取り組めるまでに昇華させられると期待される。少なくとも今回、物質・材料の問題に潜む数理科学の可能性は垣間見えた。それは分野の垣根を越えた新たな研究活動の展開を予感させるものであったと思う。


一方で第1回会合で挙がったように、これまでの具体的な異分野協働の成功例が見えてこないなど、情報収集やその伝達方法を再考する必要がある。コミュニティに縛られないオープンな場、それを展開できるシステムづくりも1つの課題である。

今後の展開・フォローアップ

今後、会合にて抽出されたマテリアルズ・インフォマティクスに関連する課題の妥当性、解決可能性などを議論する「ミニスタディーグループ」を開催する。また別のトピックについても課題抽出を議論する「会合」、その妥当性と解決に向けた議論をする「ミニスタディーグループ」の2段構えで展開する。これにより様々なトピック、様々な背景を持つ研究者との交流・議論の和を広げていく。なおここに加わっていただく「研究者」とは、アカデミックな機関に所属している数理科学・物質材料科学の研究者だけでなく、企業などの産業界に属している研究者も含まれる。特に2014年度は積極的に産業界の方も交えて事業を展開したい。

また、「数学と材料科学の協働」に対する障壁をなくすための啓蒙活動として、日本応用数理学会にてミニワークショップセッションを企画するなど、クローズドな活動だけでなくオープンな活動も展開していく。


一時期、数理科学と材料科学の協働を目指すための情報を集約させた「ポータルサイト」の開発が立案された。しかしこれは非常に広範囲の同意を得なければ形だけで終わってしまうリスクが高い。よってまずは会合、スタディーグループ、ワークショップなどを通して活動を認知してもらう事に集中し、分野やコミュニティの障壁が少なくなってきた頃に本格的に進めていく。