リスク解析戦略研究センター
地震予測解析プロジェクト
  主な研究テーマ
● 統計モデルによる地震活動の計測
● 地震発生の確率予測とその評価法の研究
● 階層ベイズ型時空間モデルの展開  
● 統計モデルによる異常現象の定量的研究
● 点過程モデルの統計推論

■ 地震の確率予測と統計モデル


角度理論分布の例。すべて同じ分布を表す。 ETASモデルを用いた2011年3月11日M9.0
東北地方太平洋沖地震前後の地震活動遡及的予測

地殻内部の断層やストレス状況が直接的に見えないうえ、それらが複雑で地域的に多様であるため、地震予知は難しさが増しています。しかし、地震の発生は全く無秩序ではなく、経験則に基づいた確率的な予測は可能です。時空間ETASモデルは過去のデータを使って将来の地震発生率を予測する地震学界で良く知られた地震活動の標準的モデルです。日本のような地震国に於いて、地震災害を軽減するために地震活動の短期予測は重要な役割を果たします。我々の研究は、このETASモデルを基礎とする、地震発生のリアルタイム確率予測システムの実用化を目指しています。特に本震直後のリアルタイム確率余震予報の実用化は被災地の減災にとって喫緊の課題です。

■ 地震活動のモデリングの高度化

標準的なクラスタリングモデル(左)と日本の地震データから得たモデル(右)による前震確率の比較(横軸はクラスタ中最初の地震のマグニチュード、縦軸は誘発された地震の最大マグニチュード) 余震データから逆解析された断層の破壊度分布。赤色はより多くの余震が本震によって誘発されたことを表す。

地震確率予測の性能を改善し、地震活動を分析するためのより優れたモデルを開発するために、以下の要点でモデルの高度化に取り組んでいます: (a) 広域な地震活動をモデリングするための位置依存型時空間モデル; (b) 高解像度の3次元モデリング; (c)断層形状、震源メカニズム等、より詳細な地震情報を含め地震活動モデルの拡張; (d) 地球物理学的観測を併用して用いた地震活動モデルの開発。

■ 地震活動を用いた地殻内物理情報の推定

2011年東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)の余震活動(図中の白丸)をデータとして推定した、本震発生時の変位の空間分布。赤星印は気象庁による震源位置。 2011年東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)の余震活動(図中の白丸)をデータとして推定した、本震発生時の変位の空間分布。赤星印は気象庁による震源位置。

地震活動の確率予測向上の一策として、地殻内部の物理情報を予測モデルに取り入れることが考えられます。例えば、地殻内部の変位(動き)は地震活動予測に重要な情報です。しかし、地震計やGPSなどの観測機器は地表または地中の浅いところにあるため、地中深くの情報を推定するには、精度や分解能の面で限界があるのが現状です。その限界を補うための手段として、稠密な地震観測網から得られた地震活動データを用い、地殻内部の変位を推定する手法を開発しています。得られた結果は、地震活動以外のデータから推定されたものと合わせ、それを元に、予測モデルをよりよいものへと改良することを目指します。

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