リスク解析戦略研究センター
医療・健康科学プロジェクト
医療・健康科学1 食品の安全性をどう定量的に評価して開示していくか、あるいは医薬品のリスクとベネフィットをどうバランスさせていくか等の問題は、国民の高い関心事であると同時に現代社会の抱える喫緊の課題の一つです。当該分野の専門機関との連携を通じて、食品・医薬品など人が直接摂取する物質の健康影響について、計量的技法と適用を研究し、リスク研究の基本的枠組みを創設することを目指します。
主な研究テーマ

● 医薬品のベネフィットとリスクの統合評価に関わる統計的諸問題の検討
● レセプトデータベースに基づく医薬品のリスク評価
● 食中毒リスク低減を確実にし、経済合理性をも持つ計数抜取検査技術の検討
● 安全基準などの設定に必要な許容基準設定に関わる基本数理の確立
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医療・健康科学2 急増する自殺やその背後にあるメンタルヘルス上の問題をデータを通じて、その現状と問題点を統計的に明らかにします。このため時空間構造や経済・地勢情報などをリンケージした統計データベースを整備し、モデリングを行います。更に、メンタルヘルスに関わる専門家との共同研究や研究集会を通じて、効果的な健康保健政策の提唱につなげることを目指します。 主な研究テーマ

● 自殺死亡の地域統計のデータの(時)空間集積性の検出
● 年齢階級別自殺死亡のクラスター分析、(時)空間集積性の検出
● 自殺死亡の地域統計の地理空間相関分析
● 自殺死亡の地域統計と経済・地勢情報などリンケージおよび因果分析、共分散構造分析
● 自殺死亡の地域統計の可視化
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医療・健康科学2 治療後のアウトカムを事前に予測することで治療の個別化をめざす医療を、予測医療と呼びます。近年、予測医療の開発は、がん領域を中心に盛んに試みられており、今後10年、20年の間に臨床試験のやり方は大きく変わる可能性があります。つまり、臨床試験のパラダイムシフトが起きようとしています。本プロジェクトでは、効果予測マーカーの開発とマーカーを用いた治療効果の検証を行うための新しい臨床試験の枠組みとツールとしての統計的方法の開発を行います。仮説検定をベースとした従来型の臨床試験の方法論に予測解析の要素を取り入れ、融合した新しい生物統計学領域の創成をめざします。 主な研究テーマ

● 予測医療開発のための統計的枠組みの構築
● 高次元の分子データを用いたマーカー探索と予測解析
● 効果予測マーカーを用いた適応的臨床試験デザイン
● ランダム化臨床試験での効果予測マーカーの開発と検証
 
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■ 医薬品・医療のリスクに関わる実証研究支援

ケース・コントロール研究の積極的活用 ケース・コントロール研究の積極的活用

医薬品や医療に関わる有害事象、その組み合わせに基づく有害な相互作用の早期発見をデータから行うことは、社会的にも必要な課題です。このために、問題に応じた研究デザインを策定し、正確な情報収集を行い、適切な統計解析を実施して、定量的な評価を行うことが必要となります。当プロジェクトでは、医学・疫学研究者と共同して、ケース・コントロール研究などの適切な研究デザイン及び統計解析を必要とする医薬品等の有効性及び安全性に関する研究あるいはレセプトを用いた医薬品の不適切な利用法の検出など、随時、統計科学の専門グループとして取り組んでいます。

■食品の安全性評価に関する研究

50年毎の洪水数の統計(6 世紀から19世紀)微生物学的リスクマネジメントプロセス (国立医薬品食品衛生研究所 春日文子安全情報部長作成)

食品の安全性を保証するリスク・マネジメントプロセスには、幾つかの特徴をもった統計的問題があります。特に、食中毒に関わる微生物学的リスクマネジメントでは、微生物数をデータとして、その不確かさの評価、安全基準の設定、リスクを効果的に最小化する抜取検査方式の設計など、国際的にもどのように対処しようか議論を行っている問題もあります。これらの問題は、統計的にも単純なポアソン分布を想定するこれまでのカテゴリカルデータモデリングでは、十分な安心を保証できません。当プロジェクトは、食品安全分野の研究者との共同研究を通じてこれらの問題解決を支援しています。


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■ 自殺死亡の地域統計・視覚化

自殺者数の年次推移(上)と年齢(5歳階級)別の自殺者数(下) 自殺者数の年次推移(上)と
年齢(5歳階級)別の自殺者数(下)

日本は世界の各国の中で最も自殺率が高い国の一つです。この問題に対処すべく、我々はまず、国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所からの受託研究のもと「自殺対策のための自殺死亡の地域統計」を作成し、さらに統計グラフを用いて視覚化を行いました。
 

■自殺の時空間集積性の検出・要因分析

関東地方における自殺率と第一次産業割合のバブルチャート 関東地方における自殺率と第一次産業割合の
バブルチャート

地域統計を利用している利点を生かし、自殺者の空間集積性の検出から始め、時間的な変遷を考慮して時空間的な集積性、関東地方に着目しての解析、GISを利用した地域の大きさの変更、時間的な増減を考慮した集積性、希少地域の集積性などについても検出を試みています。

また、自殺の理由を探るべく、婚姻関係、職業、気象、地理、経済などのデータとリンケージし、因果分析、共分散構造分析について取り組んで行きます。


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■ 予測医療開発のための統計的枠組みの構築

治療法の臨床試験における効果予測マーカーの開発 治療法の臨床試験における効果予測マーカーの開発

予測医療の開発のための臨床試験の方法論を検討するにあたっては、予測医療の開発を統計学的にどう捉えるのか、そのための枠組みがまず必要になります。これがなければ、従来の臨床試験の枠組みとの対比のもと、新しい統計的方法論・方法を適切に位置づけ、評価することができません。本プロジェクトの基盤的研究としてこの課題に取り組んでいます。

■分子マーカーを用いた診断法の開発

50年毎の洪水数の統計(6 世紀から19世紀) 多発性骨髄腫細胞の遺伝子発現データの解析:
階層混合モデルによって推定された予後関連マーカー
の効果サイズの分布

近年の分子生物学の著しい進展は、高次元の分子データを用いたマーカー探索と診断システムの開発研究をますます加速させています。階層型混合モデル解析や統計的機械学習を駆使したマーカー探索、候補マーカーを用いた予測・診断システム開発、さらに、その分析的・臨床的妥当性の評価のための統計的方法の開発と整備に取り組んでいます。


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