所長挨拶

椿 広計所長

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2022年6月21日

統計数理研究所長 椿 広計

 統計数理研究所は、1944年6月5日に設立されて以降、現在まで80年近く「現象と行動の解明と設計を目的とした統計学の理論と応用」の研究を基幹として取り組んできました。これも統計科学・数理科学を支える産官学の多くの皆様方のご支援のおかげであり、厚く御礼申し上げます。所員一同、各々のつとめに邁進するとともに、新たな研究プロジェクトや人材育成事業に尽力してまいります。

 データ駆動型社会のあるべき姿を世界中が模索する中、“ データに基づいて問題解決や課題達成ができる人材の育成”が日本国内では強く求められています。昨年度、統数研は「統計エキスパート人材育成事業」を受託しました。これまで様々なレベルの人材育成を担ってきた統計思考院に加えて、新たな人材育成組織として、2022 年1月に大学統計教員育成センターを設置しました。新センターでは、大学統計教員の育成研修を実施し、この推進のために21機関からなるコンソーシアムを形成して、大学院修士レベルの統計教育システムの開発と実装を開始しました。大学統計教員育成センターで2年間の研修を受けた若手中堅研究者が中核となって、所属機関等に必要な統計教育と統計数理科学に基づく研究活動をリードできる体制の構築も目指し、プロジェクトを推進しています。

 2021年度には、さらに2つの文部科学省プロジェクトも受託しました。ものづくりデータ科学研究センターを中核とした「データ駆動型高分子材料研究を変革するデータ基盤創出」が「『富岳』成果創出加速プログラム」に、同じくリスク解析戦略研究センターを中核とした「長期から即時までの時空間予測とモニタリングの新展開」が「情報科学を活用した地震調査研究プロジェクト」に採択されたのです。長年注力してきたNOE(Network Of Excellence)形成事業によるデータサイエンスの基盤数理の深化やネットワークの構築と活性化の展開により、新しい方法論や応用の研究につながっていくことはまさに統計数理科学の神髄です。

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)については、2020年度から「新型コロナウイルス対応プロジェクト」を立ち上げ、感染症リスク抑止のエビデンスを探る統計数理科学的方法の確立に向け、引き続き注力しています。一方、未だ終息の兆しが見えないコロナ禍にあって統数研の海外交流や対面での共同研究事業に大きな影響が及んでいることも事実です。ネット上での研究集会等の運営ノウハウを蓄積しつつ、工夫を重ねていく所存です。

 2022年4月から第4期中期計画がスタートしました。社会のための学問としての統計数理科学、社会に役立つ統計数理科学の研究成果を生み出していくために、またそれを進化させるための基礎学術研究を推進あるいはしっかり利活用できる人材を育てるためにも、第4期も研究教育活動を展開してまいります。

 引き続き、統計数理研究所を何卒よろしくお願い申し上げます。

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