統計数理研究所の理念と概要

 統計数理研究所は、学術研究会議における「統計数学を中心とする統計科学に関する研究所の設立について」の建議に基づき、昭和19年6月に、「確率に関する数理及びその応用の研究を掌り、並びにその研究の連絡、統一及び促進を図る」ことを目的とし、文部省直轄の研究所として設置されました。以来、わが国の統計数理研究の中心的な研究機関として、その発展のための先駆的役割を果たしてきました。

 昭和60年には、統計科学の中核の役割を担うべく共同研究・共同利用の体制を強化し、「統計に関する数理及びその応用の研究を行い、かつ、大学の教員その他の者でこれと同一の研究に従事するものに利用させること」を目的とした大学共同利用機関に改組転換しました。以来、極めて広い分野の研究者に開かれた研究所として、国内はもとより国際的にも多種多様な共同研究活動を飛躍的に発展させ、世界をリードする成果をあげてきました。

 平成16年には、「情報とシステムの観点から生命と地球、環境など人間社会に関わる諸問題の解決を目指し、幅広い融合研究を行うこと」を目的とした大学共同利用機関法人 情報・システム研究機構の一員となり、他の分野の研究機関と連携して分野の枠を超えた融合研究へも取り組んでいます。

 統計の研究は、もともとは社会集団の特性を記述することから始まりましたが、現在では科学的仮説の構築・検証や予測等、合理的な推論を実現するための、データの有効利用を研究する学問として、あらゆる学問分野にわたる基礎研究や応用研究において不可欠なものとなっています。特に近年は、多様・大規模な統計モデルの開発が推進され、超高速コンピュータを活用した新しい情報処理方法の確立等によって、ますますその重要性が認識され、学問の進展に大きく寄与しています。

 一方、国際貢献が基礎科学において強く求められている今日、統計学科を有する大学が多い欧米と異なり、統計学科を有する大学が皆無であり統計科学関係の研究機関も極めてわずかであるわが国においては、この分野における本研究所の存在意義は大きく、責務は極めて重いものがあります。

 現在、統計数理研究所の研究組織は、基幹的研究組織と戦略的研究組織で構成されています。さらに、研究支援組織である統計科学技術センターは統計コミュニティの研究活動を支援するために最新の計算基盤を提供し、併せて情報収集および発信を行っています。

 また、全国の大学・研究機関や民間研究所等と積極的に連携・協力し、総合研究大学院大学の基盤機関として、若手研究者の育成に取り組みながら、一般社会人等を対象とする統計科学の知識や技術の普及活動等にも努めています。さらには海外からの要請に応えるべく、国際的な研究協力・交流促進の機能を果たすよう積極的に努力しています。