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人々の健康の維持は、常に重要な社会的問題です。
人の個人差は大きく、人間から得られるデータは複雑ですが、統計数理に基づく方法を用いて有効な情報を取り出すことができます。
病気の予知・予防、診断精度の向上、大気汚染や食品添加物など有害物質の安全規準の設定、薬の有効性の検討、生活環境の評価など、健康に関連して多方面で統計数理が活用されています。
写真はヒトの運動中の心拍数、血圧、左室駆出時間、脈拍などの心機能を自動的に計測しているものです。
この自動計測法にも、また計測された特性を利用して行う心機能の評価法、疾患鑑別、薬剤効果などの計量的診断にも、時系列解析法、多変量解析法などが活用されています。
21世紀を迎えるに当り、医療・福祉を充実させることが必要です。日本は諸外国と比べて平均在院期間が長いとされています。国立医療・病院管理研究所の長谷川敏彦部長と共同で入院期間の分析を行いました。
解析の結果、93%の患者の平均在院期間は2.5週で、残りの7%の患者の平均在院期間は21.3週という結果を得ることができました。
このように入院患者に2つのタイプがあることを示すことができたのはこの研究が初めてであり、統計モデルの有用性を示していると言えます。
図は日本における在院期間の変化を示しています。データでは5週間で入院患者は100%から24.9%に減少しています。
今回の解析の結果、短期入院タイプが93%から19%へ、長期入院タイプが7%から5.8%に減少することにより、この減少が説明できることが分かりました。
20週目では短期入院タイプの患者はほとんど残っておらず、長期入院タイプだけになっていることが分かります。
写真は化学物質による培養細胞に見られた異常核分裂を示します。
薬などの安全性の評価には、疫学調査、動物実験あるいは変異原性試験が行われています。得られたデータには、個体差、調査・実験誤差によるバラツキがあり、統計処理が不可欠となっています。
歯科保健では「8020運動」が提唱されています。
80歳で20本の歯を持とう、という運動です。
加齢によって歯の本数が減ってしまうのはある程度しかたがありませんが、世代や年齢によってどう違っているのでしょうか。
全国規模の厚生省歯科疾患実態調査データを、本研究所で開発したベイズ型コウホートモデルを用いて分析することにより、年齢・時代・世代による現在歯(残っている歯)の変化が描き出され、過去の実態と将来の動向を探ることができます。
(日本大学松戸歯学部との共同研究。図は、下顎第1大臼歯現在歯率の分析結果)