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複雑なシステムの制御 宇宙から地下へ 暮らしの中で 健康の維持
資源の保護と調査 学術文化の歩みとともに 日本人と国際社会 終わりに
暮らしの中で

統計や統計的な手法の利用は、日常の暮らしの中にもたくさん見られます。

経済の動向を示す失業率、消費者物価指数、卸売物価指数など日頃の新聞やテレビでしばしば見聞きする言葉です。

このように人々の生き方に密接に関係するデータの取り方や分析法についても、新しい展開が見られます。

§1 ARモデルを通して探る日本経済

アニメーションは、以下の6変数に多次元ARモデルを当てはめ、予測を行い、その中から特に機械受注と鉱工業生産指数(ともに前年同月比)を描いたものです。
これを見ると98年1月以降の隔月について、足下までのデータに基づいたモデルから長期予測をはじき出すと、機械受注にせよ鉱工業生産にせよ、その回復軌道(を予測したパス)が、月を追うに従って緩慢になっているのが分りますが、これは正に、この時期の日本経済の悪化を示していると言えましょう。

【使用した変数】:マネタリーベース、10年物国債のレート、卸売物価、鉱工業生産指数、機械受注、為替レート(1983年1月から1998年9月までの月次データ)

[機械受注]
アニメーション 図
黒:実績、赤:98年1月からの予測、黄緑:同3月、青:同5月、黄色:同7月、青緑:同9月

[鉱工業生産指数]
アニメーション 図
黒:実績、赤:98年1月からの予測、黄緑:同3月、青:同5月、黄色:同7月、青緑:同9月

§2 最短経路は?

立川移転前の統計数理研究所(東京都港区南麻布)から成田空港まで、どの交通機関を使えば最短時間でいけるでしょうか。

この問題は、図のように乗換駅を頂点とするネットワークにモデリングし、その最短路を求めるアルゴリズムを適用すれば、簡単に答えを求めることができます。

これは簡単な例ですが、より複雑な最適化問題のモデリングとアルゴリズムの開発を行っています。

図

§3 三すくみの分析

図

「三すくみ」の関係、つまりパーがグーに勝ち、グーはチョキに勝つが、しかしチョキはパーに勝ってしまうというジャンケンのような関係は、日常社会やスポーツの世界でときどきみかけることがあります。

統計モデルは、三すくみのような構造の定量的分析を可能にします。

図は、1995年度のプロ野球パ・リーグ全日程の勝敗数データに基づくものです。

時計まわりの方向にあるチーム(例えばオリックスから見たときのダイエー)は比較的苦手な相手、つまり、実際の勝ち数が期待勝ち数を下まわった相手であることを意味します。また、反時計まわりにあるチーム(例えばオリックスから見たときの西武)は比較的くみし易い相手だったことを意味します。

オリックス、ダイエー、ロッテ、西武が時計まわりに大きな四角形をなしています。

この年はこの4チームの間に、三すくみならぬ「四すくみ」の関係があったことが分かります。

§4 景気動向の抽出

統計的な方法は、景気を客観的に判断する方法としても注目されています。

統計数理研究所で開発した季節調整のプログラムにより、国内総生産(GDP)系列をトレンド、季節成分、循環変動成分、および偶然変動の各成分に分解すると、循環変動成分は、従来の「景気」の動きによく対応します。

この方法を改良し、景気を素早く判定するための方法を研究中です。

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§5 地理情報の分析と表現

天気予報から都市計画や防災対策など、行政から日常生活まで、地図情報は様々な場面で利用されています。

統計数理研究所でも、教員数や出身校別大学入学者数など、地理的属性をもった様々なデータを地図の上に表現して、データ間の相互依存性を分析する方法を開発しています。

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