統計数理研究所 中 村 隆
コウホート分析の指針ははっきりしたが,年齢・時代・コウホートの3効果を分離するのは思うほど簡単なことではない.われわれが年齢の違いと世代の違いを混同しやすいのと同じ問題が存在するからである.このことをコウホート分析の識別問題と呼んでいる.3効果が1次従属の関係にあって,分解の仕方を一義に決められないのである.
分解の仕方を一義に決定するためには,何らかの制約条件を必要とする.しかし,この制約条件の与え方によって結果が大きく異なってしまう.どのような制約条件がよいのか分からないのである.制約条件としては,広範な制約を表現できること,その良さが評価できることが必要である.そこで,節約原理を表現する柔軟な制約条件の1つであるパラメータの漸進的変化の条件を考える.より具体的にいえば,各効果の隣り合うパラメータの値がなるべく近くなるようにするという条件である.
目次
1. はじめに
2. コウホート表
3. コウホート分析
4. 識別問題とパラメータの漸進的変化の条件
5. べイズ型モデルとABIC
6. 分析例
参考文献
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