統計数理研究所 中 村 隆
人々の意見や態度の変化を通して社会の変動を捉えようとするとき,その意見や態度の変化がどのような要因によって引き起こされているのかを見きわめることが大切である.時代につれ人々全体の意見がある方向に変わっていく時勢による要因,時代や世代に普遍的な人の加齢による要因,あるいは,生まれ育った時代環境の違う世代の相違による要因などが考えられる.これら要因のあり方によって,将来の社会の様相が大きく異なってくるからである.
昭和28年から5年ごとに実施されている国民性調査(統計数理研究所国民性調査委員会(1984))の中に次のような「くらし方」という質問がある.
[リスト] 人のくらし方には,いろいろあるでしょうが,つぎにあげるもののうらで,どれが1番,あなた自身の気持に近いものですか?
- ー生けんめい働き,金持ちになること
- まじめに勉強して,名をあげること
- 金や名誉を考えずに,自分の趣味にあったくらし方をすること
- その日その日を,のんきにクヨクヨしないでくらすこと
- 世の中の正しくないことを押しのけて,どこまでも清く正しくくらすこと
- 自分のー身のことを考えずに,社会のためにすべてを捧げてくらすこと
この質問の <のんきに> という 4番目の回答選択肢について,回答比率の時系列変化を男女別に示したものが図1である.図に現われたこのような国民全体の意識の変化はどのような変化要因を反映したものなのであろうか.
さらに詳しくデータを見てみよう.同じ回答選択肢について,女の年齢別回答分布を10年ごとに比較したのが図2である.1調査時点だけの年齢別回答分布から年齢による違いと世代による違いを区別することはできないが,この図からは両者の違いについてとのようなことが言えるのであろうか.
目次
1. はじめに
2. コウホート表
3. コウホート分析
4. 識別問題とパラメータの漸進的変化の条件
5. べイズ型モデルとABIC
6. 分析例
参考文献
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