疫学・公衆衛生統計

概要

疫学・公衆衛生における統計的な側面について学びます。大学や企業の生物統計家を中心とする医学系研究者を対象とした中級レベルのコースです。研究デザイン、人口学、年齢・時代・世代効果、病原性大腸菌O-157を追いつめる統計モデル、因果推論などの各テーマについて、魅力的な講師陣より学びます。4年目の人気のコースです。12月に開催予定です。

開催要項

日 程 2021年12月2日(木)13:10~16:45
2021年12月6日(月)13:30~15:00
2021年12月9日(木)13:00~16:30
2021年12月10日(金)13:00~16:30
2021年12月16日(木)13:00~14:30
*開催日により開始・終了時間が変わりますのでご注意ください。
会 場・定 員 Zoomを使ったオンライン開催
定員200名(予定)申込順で定員に達し次第締切
オーガナイザー 船渡川伊久子 准教授(統計数理研究所)
参加申込 お申込みについては こちら からお願いいたします。
(2021年10月25日(月)10:00頃より開始予定です)

『本講座の申込受付は、Peatix Japan(株)のシステム上で行います。下記リンクをクリックすると同社のサイトに移動します。お申込のためにはPeatix Japan(株)のシステムにアカウントの登録が必要です。
Peatixでの募集締切:2021年11月24日(水)23:59まで
※定員に達し次第、お申込を締め切らせていただきます。
※取得した情報は、当該講座への登録及び受講に関する連絡や、企業や個人を特定できない形で弊所講座・教材等の企画立案等のために利用することがあります。Peatix Japan(株)のシステムにアカウントを作成する際に入力する情報については同社のポリシーに従うものとします。』

コースの構成

  1. 「疫学・公衆衛生統計」
    日時:2021年12月2日(木)13:10~13:30
    講師:船渡川伊久子 准教授(統計数理研究所)

  2. 「疫学I 疫学とはなにか?」
  3. 「疫学II 代表的な疫学研究:コホート研究とケース・コントロール研究」
    日時:2021年12月2日(木)13:30~15:00・15:15~16:45
    講師:佐藤俊哉 教授(京都大学)
    概要:疫学とはどんな学問なのか、どのような問題の解決に貢献してきたのか、疫学Iでは疫学の歴史について解説します。疫学IIでは、疫学研究の代表的なデザインであるコホート研究とケース・コントロール研究について、大気汚染と呼吸器疾患との関連を調べた疫学研究である環境省「そらプロジェクト」を例に解説します。
    参考書:
    ・佐藤俊哉. 宇宙怪人しまりす 医療統計を学ぶ. 岩波科学ライブラリー114, 2005.
    ・佐藤俊哉. 17. 疫学研究. 丹後俊郎, 松井茂之編, 新版 医学統計学ハンドブック, 朝倉書店, pp. 498-511, 2018.

  4. 「人口学的アプローチ」
    日時:2021年12月6日(月)13:30~15:00
    講師:金子隆一 教授(明治大学)
    概要:現在わが国は歴史的転換過程にあり、今後21世紀を通して世界一二の人口減少と高齢化を経験して行く。疾病・死因構造やその課題は一変し、医療・介護などの社会保障制度や日本社会そのものの存立が揺らぐ。本講義では人口学的視点から今後の疫学・公衆衛生の課題に迫り、元となる人口変動(少子化、長寿化等)、分析法、対処について解説する。
    参考書:
    ・金子隆一・村木厚子・宮本太郎『新時代からの挑戦状-少親多死社会をどう生きるか-』厚生労働統計協会, 2018.
    ・国立社会保障人口問題研究所編『日本の人口動向とこれからの社会: 人口潮流が変える日本と世界』東京大学出版会, 2017.

  5. 「年齢・時代・世代効果I」
    日時:2021年12月9日(木)13:00~14:30
    講師:中村隆 教授(神戸女子大学/統計数理研究所名誉教授)
    概要:継続調査(反復横断調査)によって得られる年齢区分×調査時点形式の集計表データから年齢・時代・世代(コウホート)効果を分離するコウホート分析法(APC分析法)について、日本人の国民性調査、歯科疾患実態調査、鶴岡共通語化調査、人口動態統計等への適用例を示しながら、それがどのような分析法であるかを講義する。
    参考文献:
    ・中村 隆 (2005). コウホート分析における交互作用効果モデル再考. 統計数理, 53, 1, 103-132. (PDF)
    ・中村 隆 (2019). 標準コウホート表のコウホート分析モデルのデザイン行列について. 統計数理, 67, 2, 277-297. (PDF)

  6. 「因果推論I」
    日時:2021年12月9日(木)15:00~16:30
    講師:篠崎智大 講師(東京理科大学)
    概要:観察研究データから治療・曝露の「効果」を統計的に推測する方法論を扱う。 講義の初回では、疫学・医学分野の統計手法と親和性の高い因果モデルとして「潜在アウトカムモデル」(反事実モデル)を採用し、交絡、層別解析(標準化)、傾向スコア、回帰の正確な理解を目的とする。疫学と数理統計の専門知識は求めないが、確率変数や条件付き期待値等の素朴な理解と回帰モデルの解析経験があることが望ましい。
    参考書(まずは◎のDLを勧める。〇は疫学・統計学の背景知識なく読み始めることができる):
    ・佐藤・松山.疫学・臨床研究における因果推論.In:甘利他編『多変量解析の展開―隠れた構造と因果を推理する』岩波書店,2002.
    ・星野『調査観察データの統計科学』岩波書店, 2009.
    ◎佐藤・松山.交絡という不思議な現象と交絡を取りのぞく解析:標準化と周辺構造モデル.計量生物学32巻特集号,2011. (J-StageよりPDFをDL可)
    ◎ロスマン(矢野他訳)『ロスマンの疫学―科学的思考への誘い』篠原出版新社, 2013.
    ・黒木『構造的因果モデルの基礎』共立出版, 2017.
    ○Westreich "Epidemiology by Design: A Causal Approach to the Health Sciences" Oxford Univ Press, 2019.
    ○篠崎.傾向スコア解析の考え方.整形外科71巻6号,2020.
    ◎Hernán & Robins "Causal Inference" Chapman & Hall/CRC, 2020.(PDFをDL可
    ・田栗・篠崎.因果推論.In:丹後・松井編『臨床試験の事典』朝倉書店,2022(予定)
    その他講義内で適宜論文を紹介する

  7. 「年齢・時代・世代効果II」
    日時:2021年12月10日(金)13:00~14:30
    講師:中村隆 教授(神戸女子大学/統計数理研究所名誉教授)
    概要:年齢・時代・世代効果を分離しようとするコウホート分析法が抱える3効果が一意に分離できないという識別問題について解説し、その問題を克服するためのパラメータの漸進的変化の条件を事前分布として取り入れたベイズ型コウホートモデルの構築と赤池ベイズ型情報量規準ABICによる最適モデルの選択法について講義する。
    参考文献:
    ・中村 隆 (2005). コウホート分析における交互作用効果モデル再考. 統計数理, 53, 1, 103-132. (PDF)
    ・中村 隆 (2019). 標準コウホート表のコウホート分析モデルのデザイン行列について. 統計数理, 67, 2, 277-297. (PDF)

  8. 「因果推論II」
    日時:2021年12月10日(金)15:00~16:30
    講師:篠崎智大 講師(東京理科大学)
    概要:講義の2日目は、モデルを用いたより実用的な因果推論手法の理解を目的とする。特に、回帰モデル(「調整した推定値」として回帰係数を示すだけではない)と傾向スコアモデル(「個人ごとに定義される曝露確率」として傾向スコアを理解した気になってはいけない)の必要性と意義を説明し、これら2つのモデルを組み合わせた二重ロバスト推定など、発展的な学習への橋渡しとなる内容を扱う。
    参考書:「因果推論I」を参照

  9. 「病原性大腸菌O-157を追いつめる統計モデル」
    日時:2021年12月16日(木)13:00~14:30
    講師:丹後俊郎 センター長(医学統計学研究センター)
    概要:平成8年、大阪で勃発した病原性大腸菌O-157による食中毒のクラスターは食中毒の恐ろしさを再認識させるとともに、当時の菅厚生大臣の「カイワレ大根が感染源でないことが否定できない」旨の発言によるカイワレ・パニックは、食中毒の感染源特定の重要性とその困難性を浮き彫りにした。ここでは、その感染源を追いつめる統計モデルを紹介する。
    参考書:
    ・丹後俊郎. 病原性大腸菌O-157を追いつめる. 数学セミナー vol. 37 no. 9, 38-42, 1998.
    ・丹後俊郎. 新版 統計モデル入門、朝倉書店、2019.