観察研究における欠測データの統計解析とTARMOSガイドライン

概要

一般的な調査・実験研究において、欠測はほとんど避けられない問題であり、統計解析において、適切な処理を行わなくては、バイアス・推定精度の低下が起こり得る。医学分野においては、特に、臨床試験を中心として、近年までに欠測データの取り扱いに関するガイドラインの整備が進められているが、観察研究においては、最近まで、そのようなガイドラインは策定されていなかった。しかしながら、2021年、STRATOS Initiative (https://stratos-initiative.org/) から、観察研究における欠測データの取り扱いに関するガイドラインとして、TARMOS (Treatment and Reporting of Missing data in Observational Studies) frameworkが公表され、実践上の議論が急速に進められつつある。TARMOS frameworkでは、特に、観察研究を対象として、(1) どのように統計解析計画を策定するべきか、(2) 得られたデータに対して、解析計画に策定した方法の妥当性をどのように評価すればよいか、そして、(3) 研究の結果をどのように報告すればよいか(欠測データの集計・記述の方法、欠測データにおいて考慮され得る問題をどのように解決したか、解析結果とその解釈をどのように報告するべきか)、についての詳細な枠組みが与えられている。特に、従来の欠測データの統計解析では、多重代入法などを用いたMAR (missing at random) を前提とした解析方法が主として用いられてきたが、TARMOS frameworkでは、MARの仮定が成り立たないもとでの感度解析の必要性についてまで言及されている。近い将来、本ガイドラインに基づく統計解析の方法が、国際学術誌におけるスタンダードとして普及していく可能性も高く、その原理と方法についての理解は必須のものとなると考えられる。本講座では、まず、調査・実験研究において、欠測がどのような問題を引き起こすのか、また、どのような分析方法を用いることで、その問題を解決することができるのかについて、平易な解説を行う。そして、TARMOS frameworkにおいて示されている欠測データの取り扱いと研究論文上での報告のガイドラインについて、具体的な事例を交えつつ、詳細な解説を行う。

開催要項

日         時 2022年12月3日(土) 10:30~12:30 
開 催 場 所 国立がん研究センター 築地キャンパス 研究棟1F (〒104-0045 東京都中央区築地5丁目1-1)
※現地およびオンラインで開催予定
講師・演題 水澤 純基 (国立がん研究センター 研究支援センター 生物統計部 生物統計室 室長)
「欠測データの統計解析:原理と基本的な方法」

野間 久史 (統計数理研究所 データ科学研究系 准教授)
「TARMOSガイドラインと事例解析:観察研究におけるデータ解析と論文報告の新しい指針について」
 主         催 日本糖尿病・生活習慣病ヒューマンデータ学会
参 加 申 込 参加登録は、第7回日本糖尿病・生活習慣病ヒューマンデータ学会年次学術集会学会ホームページから の申込になります
参加登録期間は2022年11月30日(水)16:00 までとなります
参 加 費 公開講座のみの場合は 3,000円

文献

Lee, K. J., Tilling, K. M., Cornish, R. P., et al. (2021). Framework for the treatment and reporting of missing data in observational studies: The Treatment And Reporting of Missing data in Observational Studies framework. Journal of Clinical Epidemiology 134, 79-88.